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「と、まぁこんな感じで熊みたいなモンスターに追いかけられて、たまたま見つけた川に飛び込んで命からがら逃げるのに成功したんですよ。ただ、今持っているこの服以外に、荷物は手紙だけ。それでお腹が空いて倒れていた訳です」
二人は俺の話に最後まで聞き入っていた。
「ふむ。そのタッチパネルというのはわからんが、そのモンスターはタイラントグリズリーじゃな。お前さん運がいいのう。大抵の人間は見つかっただけで、食われるというのに」
「あ……やっぱり……人食うんだ」
その事実を改めて突きつけられると、背筋に変な汗が出てくる。
今度会ったら、あの牛女ぜってぇ許さねぇ!
何だって俺があんな目に合わなきゃならないんだ。生き返って数十秒後には死の危険が目の前にあるなんてどんな鬼畜所業だよ!
「ということは、今行くところがないんですか?」
白髪の老婆の横にいた少女、とはいっても、俺とあんまり変わらない年だと予測した。
栗色の髪をツインテールにしている明るそうな見た目の少女。彼女が俺を助けてくれたんだったな。
「そうですね。行くところどころかここがどこかもよくわかっていませんね」
「では私たちの村に来ませんか?」
「いいんですか? ……しかし、俺は金を一円だってないですし、正直、返せるのはこの身一つしかないんですよ」
「ガキが遠慮してるんじゃないよ! お前さん、ここにおったらすぐに食われるぞっ! ここは、あんな怪物がうようよおるんじゃぞっ!」
老婆の言葉に、タイラントグリズリーって名のさっきの熊を思い出して、顔を青くしてしまう。
「……すいませんが、お願いしてもいいですか?」
優真が頭を下げてお願いすると、老婆は満足そうな笑みを向けた。
「もう……おばあちゃんったら。そんなに畏まらなくても大丈夫ですよ。そうだ! まだ自己紹介をしていませんでしたね。私はシルヴィです。よろしくお願いします……えーと」
「優真です。雨宮優真」
「これからよろしくお願いしますねユーマさん」
「こちらこそ、よろしくお願いしますシルヴィさん」
こうして俺の、新たな生活が始まろうとしていた。




