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風呂からあがったら、日本にいた頃の名残でコーヒー牛乳が飲みたくなったが、ここには中に何も入っていない自販機だけが置いてあった。
電気も通っていないようで明かりもついていない。
そんな絶望にうちひしがれていると、シェスカが子ども用の浴衣が着れないと泣きついてきた。
まぁ……なんとなくこんな感じかなぁとか思いつつ、最終的に結んでればいっかという考えに至り、簡単に結んだが……まぁ……はだけなければ問題ないよな……。
シェスカを着替えさせた後は、シェスカを連れて部屋の方に行く。
場所は最初に聞いていたため、なんとかわかったが、シェスカは最初に来ていたらしく、特に迷うことなく近くの部屋に入っていった。
部屋に入ってみると、そこは旅館でよく見る和室になっていた。脚の低いテーブルと座布団、扉は襖になっており、床は完全な畳という、和の雰囲気全開の部屋だった。
温泉があると聞いていたため、先に温泉へと向かっていた俺は久しぶりの畳に興奮が収まりきれなかった。
テーブルを隅の方にどかしてから、畳の上で大の字になって寝転がる。
(やっぱり畳の上で寝ると妙に落ち着くんだよな~。……もういっそのこと、夕飯ができるまで寝てようかな……)
そんなことを優真が考えていると、いきなり和室の襖が開かれた。
了承も問わずに部屋へと入る存在なんて優真には一人しか思い浮かばなかった。
そして、その思い浮かんだ通りの人物がそこに立っていた。
「失礼しま~す!」
子ども用の浴衣をきちんと着直していた幼い少女は普段使わないような言葉を使用しながら部屋に入ってきた。
(さては女将の格好をした天使に影響されたな?)
そんなことを寝転がった状態のまま思っていると、シェスカは俺の方に駆けてきて、そのまま腹部に遠慮無しにダイブしてきた。
シェスカのフライングボディアタックを受け、小さく呻き声をあげると、シェスカは「あはは」と無邪気な笑顔で笑った。
「お兄ちゃん遊んで~」
「わかったわかった……とりあえずそこを退いてくれるか? そこから退かないと遊べないぞ?」
そんないつも通りの要求に優真は嫌な顔一つせずに了解する。
(どうせ夕飯の準備が終わるまでやることもなかったんだし、その間シェスカと遊んでおけば時間もあっという間にすぎるだろ)
結局優真は、部屋から出ることなく、夕飯の時間になるまでシェスカと遊んでいた。
今日はもう1話投稿しますが、電波の無いところに行くので少し遅れる可能性があります。




