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13-1

 湯煙がたつ視界の中に入ってきた色とりどりの植物が咲き乱れる庭園。季節感など関係無いとでも言いたげな光景が目の前に広がる中でも、特に桜と紅葉が一緒に咲いている光景には驚きしかなかった。

 しかし、そんな違和感しかないような光景の中でも、こうして広々とした露天風呂に入っていると気持ちよさしか感じなくなってしまう。

 さすがは大地の神が作りし楽園といったところか……ここが本当の極楽なんじゃないかと錯覚してしまいそうだ。


 さて、何故俺がこんな広々とした露天風呂で寛いでいるのかと言うと、それは一時間ほど前にさかのぼる。


 ◆ ◆ ◆


「では私達はこれで村に帰りますね」

 短い時ではあったが色々と話すことを話してハルマハラはその言葉を告げた。

 マーカスとライアンも名残惜しそうな表情をしていたが、その言葉に誰も反対することはなかった。

 理由は優真にもわかっていたから強く引き留めようとはしなかった。


 彼らは別の土地に行って新しい村を開拓する。

 今いる村を離れ、もう少しスティルマ大森林の奥に行き、少しずつ開拓していくという話になっていると聞いた。

 昨日の今日でまだ計画段階だが、住めるようになったら完全に移住するのだそうだ。今日は葬儀をするという理由でここに来ているが、一刻も早く村を移動させたいとのこと。

 当然といえば当然だろう。

 カルナ村は俺と同じ立場……要するにいつ滅ぼされてもおかしくない状態なんだ。しかも、質が悪いことに、俺と違っていつでも滅ぼせる状態にある。このままあの位置にいれば、近いうちに村人は皆殺しにされるだろう。

 そんな状況になっても村人達は誰も俺を責めなかったと聞いた。

『村でいつも汗水たらして働き、村の窮地を救った男が初めて我が儘を言ったんだ! それに応えるのが大人の役目だろ!』

 ガルバスさんがそう言ったため、他の村人もすぐに賛同してくれたそうだ。

 今までやったことが無駄じゃなかったんだと改めて思えたし、ガルバスさんには感謝しかない。


 3人が来た時に使った紋章の刻まれた石板に触れると彼らは目の前からいなくなってしまった。

 彼らが消えてしまった後「俺達も帰ろう」とシルヴィに言った瞬間、ハナさんがもう少しいて欲しいと駄々をこねてきたのだ。

「いやさすがにこれ以上いると、帰るのが遅くなるしなぁ」

「じゃあ泊まっていきなよ!」

 あっさりとそんなことを言い始めるハナさんに頭が痛くなる。

「……それはさすがに悪いよ……」

「私の方は問題ないからさ~! ねぇぇぇぇ泊まってよ~」

「……どうするシルヴィ?」

「私は構いませんよ? 久しぶりに彼女とたくさんお話ができるのは楽しみですから!」

 そんなシルヴィの言葉に反対の声をあげることが俺にできる訳もなく、結局ご相伴に預かることとなった。

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