12-9
「ねぇねぇお兄ちゃん……お姉ちゃんはなんでそこでうずくまってるの?」
3人と話していると、シェスカが服の裾を引っ張って聞いてきた。
シェスカの指が示す先には木の枝で楽しそうにつついている桃色の髪の少女とつつかれたまま土下座し続ける少女がいた。
「……あれ? ……もしかしてまだやってたの?」
てっきりもう土下座の体勢はとっくに解いていると思っていたのだが、……まさかまだやっていたとは……。
「当然です。私なんかがあなた様の御尊顔を拝む訳にはいきません!」
「え~……そういえばさっきハルマハラさんが掟がどうのこうの言ってましたね?」
「ええ……そもそも眷族とは神様の次に偉い存在です。神様にとって家族のようなもののことを指しますからね。信仰する者達からすれば神と同義の存在とも言われているのですよ。そのため、そんな存在と信仰者が目を合わせて話すなんておこがましいと言われているんです」
「結構めんどくさいんですね」
「ユウマ君やハナ殿のように気にしないという方は少数派なのですよ」
「……そうなんですね。ありがとうございます」
優真は教えてくれたハルマハラにお礼を告げ、シルヴィの元に歩み寄る。ハナは空気を読んでその場から離れると、他の者を連れて先にシルベスタの墓へと向かった。そのため、優真はシルヴィと二人っきりになった。
「……ほら、シルヴィも立って! 俺はシルヴィにそんなことをしてほしいがために眷族だって教えた訳じゃないぞ? だからそんなに気にすんな」
シルヴィの傍に屈むと、優真は彼女に立つよう促すが、彼女は不安気な顔を見せるだけだった。
「で……でも」
「でもじゃない。シルヴィが眷族だろうと信仰者だろうと関係ない。シルヴィにはいつも通りに接して欲しいんだ」
不安気な顔を見せるシルヴィにそう言うと、シルヴィはやっと立ってくれた。
「ユーマさんがそれでいいとおっしゃってくださるのなら……私も普段通りに接しようと思います」
「うん……そうしてくれると嬉しいかな。さっ……俺たちも行こうか?」
「はい……あっ……それと」
皆のもとに戻ろうとした時、シルヴィがいきなり俺の耳に口を近付けてきた。
「……眷族の言うことには私達信仰者は逆らえませんので……その……ど……どんなことでもあなたの命令一つでお受けしますよ」
その囁かれた言葉で優真は頬が赤く染まってしまうが、シルヴィは耳まで真っ赤になっていた。
「い……行きますか?」
それでもシルヴィは、はにかんだ笑顔で優真の手を取って案内してくれた。




