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『・初ターンは先制行動可能
目の前に危険が迫った時のみ使用可能になり、自動で効果が発動する。
襲われた際、1分間使用者以外の全ての時が止まる。ただし、行動を選択し、その行動を終えれば、能力は切れる。
また、1分間何もしなかった場合は時が動き出す』
その素晴らしい効果に俺は感嘆の声をあげた。
なかなかいい能力だな。要するに、どんなに相手が速くても、俺の方が先に動ける能力なのか。ただ、さっきの表示に初ターンが逃げられないと書いてあったということは、逃げるという選択以外なら、なんでもできるってことだよな?
しかし、1分となると急いだ方がいいな。
よし! いっちょこの【ブースト】という特殊能力を試してみるとするか! ブーストっていうくらいだから、戦闘力が上がる能力なんだろうし、殴ってみればいいかな。
「【ブースト】発動! くたばれ! 熊野郎!!」
その言葉と共に、俺は振り上げた拳を動かない相手の頭蓋にぶちかます。
しかし、この熊の頭は、石頭と言うに相応しい硬さを持っており、殴ったこっちの右手が痺れて痛めてしまった。
ブーストの効果はのってないのか、相手の熊にダメージを与えられたような痕跡はなかった。
何が起こったのか理解出来なかった俺のもとにタッチパネルから、何かを知らせるような音が鳴った。
『ぷぷ~。発動条件満たしてないんだから、そんな掛け声したって発動するわけないじゃん。ばっかみたい(笑)』
「はあああああああああ!? そういう大事なことはもっと早く言えやーーっ!!」
タッチパネルというよりも、これを書いてるあの女神に対して文句を言ったが、お知らせはこれだけじゃなかった。
『P.S【勇気】の能力解除されるから、後は自力でがんばっ!』
その文を読んだ後、優真の顔は真っ青になった。
「……え? このタイミングで切れるの? 能力無し状態の俺がこんな化け物に勝てる訳ないじゃん。ふざけんなよっ!!」
ついあの女神に悪態をついてしまうが、今はそれどころではなかった。
目の前で鼻息荒くうなっている黒い熊、殴られたことに怒りでも感じているのか、正直ちょっとちびりそうだった。
「ご……ごめんね」
愛想笑いをしながらその言葉だけ残して、【勇気】から解放された優真は、一目散に逃げ出した。もちろん、怒り狂った熊に追いかけられながら。




