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 優真は自分の告白に泣きながらも頷いてくれたシルヴィを再び抱き寄せようとしたところでよろめいてしまった。

「だ……大丈夫ですか? やっぱり怪我が酷いんですね……」

「あはは……ここまでずっと走りっぱなしだったし、その疲労も足にきてんのかな? どっちにしたってかっこわるいな……」

「そんなことありませんよ。私はユーマさんが助けに来てくれた時、王子様だと思ってしまいました」

「いや……さすがに王子様は言い過ぎじゃない?」

「それくらいかっこよかったです」

「私を忘れるんじゃない!!」

 シルヴィと楽しく話していると、へたりこんでいるベラキファスが大声で間に入ってきた。


「もういい! お前みたいな阿婆擦れこっちから願い下げだ!! お前のいた村もその男もお前の大切な存在全てをこの手で壊してやる!!」

 ベラキファスがそう喚くと、シルヴィの表情に再び陰りが差し、優真の表情から笑みが消えた。


 ◆ ◆ ◆


「……ユーマさん?」

 シルヴィは優真の雰囲気が変わったことに違和感を覚えながらも、ベラキファスの方を向いた優真を止めることはできなかった。


 優真はへたりこんでいるベラキファスの傍まで近付き、しゃがんで目線を合わせた。

 直後、優真は右手でベラキファスの頭を鷲掴みしながら壁に叩きつけた。

 死んでもおかしくない攻撃だったにも関わらず、ベラキファスはその強い衝撃を受けても、吐血するだけで気絶にすら至らなかった。

  

「やれるもんならやってみろよ。ただしその時は間違いなくこの国とお前の最期だと思えよ? もちろんお前には俺の世界に伝わる拷問の限りを尽くして殺してやる。……ちなみに今日の俺を基準に考えて勝てると思ったならそれは無理な話だよ。俺はまだ全力の100分の1も出していない。お前達ご自慢のS級クラスの騎士でも冒険者でも連れてくればいい。俺を怒らせたらどうなるかはその時にでも身を以て教えさせてやるから」


 ベラキファスは目の前にいる青年が嘘をついているようにも、誇張しているようにも見えなかった。

 感じたのは純然たる恐怖。その逆鱗に触れれば間違いなく今言われたこと以上の結果になるであろうことが推測できた。

 自分の『鉄拳』と呼ばれたプライドでさえも、この男が見せる漆黒の瞳を前にして、反感の意思を持つことすら出来なかった。


 この男に逆らわない方がいい。

 その警告とも言える内容が頭の中で何度も何度も反復する。

「…………それでもまだやるのか?」

「も……もう二度とあなた方には近付きません……」

 ベラキファスは優真の問いにそう答えることしか出来なかった。

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