11-7
ベラキファスはそのまま地に両膝をつき倒れてしまった。
(……何故私はうつ伏せになっておる? ……腕が麻痺して使えん……足も動かん……くそっ……私の鎧は神の加護を受けているというのに何故防げん!! …………神の加護を受けた鎧でも防げない威力。そんな強さを……何故人間ごときが持っている? ……まさか人間ではないというのか?)
ベラキファスの霞んでいく視界は、近付いてきている優真の姿を捉えていた。
「今のは処刑された婆さんのぶんだ……それでこれがお前らに大切な生活を奪われた姉妹のぶんだ!!」
優真はそう言うと倒れて動けないでいるベラキファスの体に強烈な蹴りを叩きつけた。
ベラキファスの体は優真の強烈な蹴りで吹き飛ばされ、壁に激突した。
優真は動かなくなったベラキファスの姿を一瞥して、シルヴィとシェスカの元に戻った。
「ユーマさん……大丈夫なんですか? お腹の傷とか、頭からも血が……」
近付いてきた優真に駆け寄ったシルヴィは優真の服をめくって怪我の具合を確認するが、血はすでに凝固していた。
「【ブースト】で回復力上げてたからな……傷も数日あったら治るだろう……そんなことよりもとりあえず早くここを出よう。上の方が騒がしいし……もしかすると増援が来るかもしれない」
「……それでも少しくらい休んでいかれた方が……」
「それは出来ない。時間になったら俺は動けなくなってしまうからな。そうなったら俺たちは敵に捕まって処刑されることになる。俺の心配をするんだったらまずはこの場を離脱しよう」
「わかりました……では急ぎましょう。……シェスカ行こっ?」
「うん……でもあの人まだ動いてるよ?」
その言葉で優真はシェスカの指が差す方向に急いで顔を向けた。
そこには、蹴られて瀕死だった筈のベラキファスが血を吐きながら腕を立て、体を起こそうとしていた。
「……お前を……逃がす訳ないだろ!! お前は私が見つけた奴隷だ! 絶対他にはやらぬ!!」
奴隷という言葉は優真が一番嫌悪感を抱いている言葉だった。優真の殺意がその言葉を聞いてから一層強くなる。
「……なに言ってんだ? 彼女は歴とした普通の人間だ……決して奴隷なんかじゃない!!」
「貴様こそ何を言っておる。逃げた者にもはや人権なぞない!! このまま私の奴隷として一生生きていくか全国民の前で無理矢理犯され見せしめとして処刑されるかでしかない!」
ベラキファスはなんとか体を起こし、ふらふらになってはいるがなんとか立ち上がり、シルヴィに向かってこの言葉を告げた。
「……おい女~……こっちに来なければ村の者達やそこのガキを皆殺しにするぞ~?」
その言葉で優真の目がどんどん鋭くなっていく。
しかし、シルヴィがベラキファスの方へと歩き始めたことで優真の鋭くなっていた目は驚きで大きく見開かれた。




