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11-4


「な……なんで助けにきてくれたんですか!!」

 泣いていたシルヴィが涙を拭うと、いきなりそんなことを言ってきた。

 シルヴィの顔には、怒りと罪悪感のようなものが感じられ、その瞳には拭ったはずの涙が再び浮かんでいた。


「そりゃあ、大切な人を助けたいと思ったからな。なんとか間に合ってよかったよ」

 それが俺の本心だった。

 婆さんに頼まれていたから……だけではやい。

 俺のせいで彼女が捕まったからという罪悪感があったから……だけでもない。

 打算なんてないと言えば嘘になる。

 だが、危険というデメリットを考慮しても彼女を取り戻したいという思いの方が俺の中では大きかった。


 …………やっぱり俺は彼女を好きになってしまったんだと思う。

 だからこそ、ここまで必死になれたし、こんな危険に身を投じられたんだ。


 シルヴィの頬は赤く染まっている。このまま押せばいい結果を得れたかもしれないのに、状況はそのまま静観なんかしてくれなかった。


「奪われた女を取り返しにわざわざ私の家まで来るとは……ただの馬鹿か、それとも蛮勇か……」

 優真たちとは違い、設置されていた階段を使用して階下に降りてくる人影が優真たちの方から見えた。

「……あんたがベラキファスか?」

「ええ、私がパルテマス帝国において将軍の地位にあるベラキファスである。貴様のような新人冒険者が簡単に口を聞いてよい存在じゃないぞ!」

 その威圧的な態度には余裕がないように見受けられたが、それでも油断しようなんて思わない。聞いた話によれば、卑怯な手を使うことを躊躇わない。しかし、それだけで将軍という地位についた訳ではない。

 拳一つで将軍の地位まで上り詰めた男。それが『鉄拳』と呼ばれた男だ。


 豪華絢爛な鎧を身に纏う男の姿を見た優真はシルヴィとシェスカを相手から見えないように庇う。


 それは偶然の産物だった。

 優真が庇ったことにより、狙われた相手がシルヴィではなく優真になったことで【勇気】が発動した。


 止まった時の中で優真の目には突然現れたUFOキャッチャーで見るようなアームが映っていた。

 シルヴィの方へと伸ばされたアームは間に立った優真を襲おうとした。

「……【ブースト】も後10分くらいか……攻撃力20倍」

 止まった時は、優真が刀を振り抜いたことで再び動きだす。

 優真が振り抜いた刀は、そのアームを真っ二つに斬り裂いた。


(な……なんだとっ!? 今のが何故わかった!? それよりも動きがまったく見えなかったのはいったい……)

「十華剣式、壱の型、菊一文字」

 その声が耳に届いた直後、目の前に剣が現れたことで、ベラキファスは回避行動に移る。

 目の前を掠めた攻撃を放ったのは、先程『鉄の腕』を斬っていたはずのアマミヤユウマという男だった。


 ◆ ◆ ◆


(……さすがに少し離れ過ぎていたか……)

 だが、対応しきれていたのは距離があったからだとわかっただけでも、今の一撃には意味があった。

 どうやらこいつ、俺のスピードについてこれてないみたいだ。……それならこいつに勝てる。


 そう確信した優真は刀で相手を鎧ごと斬ろうと考えて、刀を鎧に当てた時だった。

 刀は鎧に刃を通せず、鈍い音を立て砕け散ってしまった。

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