11-3
シルヴィは舌を噛んで死のうしようとした。
皆をこれ以上巻き込まないためにも、それがいいと思った。
だがその決意は、上から聞こえてきた轟音で遮られた。
昔お母さんがよく読んでくれた英雄譚。大好きで何度も何度も読んでもらったお話。
囚われたお姫様を白馬に乗った王子様が助けてくれるそんなお話を、何故か今思い出した。
轟音が鳴り響き、砂塵が逆巻く煙の中で一人の人影がそこに現れた。
「悪いシェスカ……埃が立つとは思ってなかった」
「お兄ちゃん砂が目に入った~! 痛いよ~!!」
「ええっ!? ……えっと……なんかなかったかな? ……ちょっと待ってろ……今アイテムボックスからなんか探すから……」
「あっ……取れた」
「は~良かった~……ったく、心配させないでくれよ。おっ? どうやらシェスカが言った通りの場所にいたみたいだな」
舞い上がった砂塵が晴れてきた時、絶望しきっていたシルヴィの前には、二人の人物がいた。
「待たせたなシルヴィ……ちゃんと無事か?」
目隠しで二人の姿は見えなかった。
それでも声が二人の来訪を教えてくれた。
私にとっての王子様は、幼い妹を背負って現れた。
◆ ◆ ◆
「ちょっと待ってろ……今すぐこんな牢屋はぶっ壊してやる……少し離れてろ」
その言葉に従って、シルヴィはすぐに後ろへと下がった。
優真は【ブースト】を使用し攻撃力、防御力、ともに20倍にはねあげると牢屋の鉄格子を握り、簡単に曲げてしまい、人が通れる隙間を作った。
牢屋の中に入った優真はシルヴィの目隠しを取る。
そこには暗くなっていて分かりにくかったが、涙を流し続けている顔があった。
続けて、彼女を結んでいる縄をアイテムボックスから取り出した包丁で斬って適当に捨てた。
全ての縄を斬り終え包丁をしまい終えると、勢いよく立ち上がったシルヴィが、優真に抱きついてきた。優真はそれを咄嗟に受け止める。
シルヴィは泣き続け、優真はシルヴィに自分の胸を貸す。
こんな暗い場所にたった一人で閉じ込められ、どれだけ辛かったのだろうか。
「遅くなってすまなかったな」
シルヴィに抱きつかれた優真は、彼女の耳元にそう囁いた。




