月日は流れたが、再会と言うほど知り合いでもない。
7年後~
「じゃあ、今年の新入生の担任はイブキ鳥声先生で補佐役に一路スガワラ先生に就いてもらうってことでよろしいかな?」
シワの目立つ白髪の老人が穏やかに言った。
ここは学校。
でも、ただの学校ではない。
国立のスパイや戦闘員を育成する専門の学校でこの老人は初代校長だ。
この学校の生徒はは10歳から6年間かけていろんな知識や技を学ぶ。卒業する頃にはどこに出しても恥ずかしくない工作員の出来上がりというわけだ。
生徒の中には家業を継ぐまでの行儀見習いとして入学するものもいれば、そのまま工作員として国に雇われるものもいる。
この学校を卒業すれば立派なエリートとして世の中に出ていけることは間違いない。
そういう学校なのだ。
今は会議室で新学期、新入生についての会議が行われている。
つい先程新担任として名前を呼ばれたイブキはこの学校に勤めて7年目の年数だけ聞けばそこそこ長いが、この学校では一番の新参者だ。
故に初めての担任就任となる。
今までは恩師でもあるスガワラ先生ことスガ先生に就いて副担任なら何度かしてきたが担任となればやっと一人前と言うところだろうか。
イブキは内心は小躍りするほど喜んでいたが、会議中のため机のしたで小さくガッツポーズを決めるにとどまった。
もちろん、隣に座っているスガ先生にはバッチリ見られていたのだが。
他の先輩教員達からも異論は出ず、安心して会議が終わろうとしたとき、校長が「あぁ、そうだ。」と手を打った。
「イブキ先生は初担任だよね?補佐役にスガワラ先生が付いているといっても不安だろうからもう一人お願いしようかな。」
校長がニッコリと微笑んで告げると会議室内の空気がピタリと止まった。
当たり前だ。スパイを育てる学校にそんなにたくさん教員が居るわけもなく、いつだって人手不足。
1学年1クラスとは言え、20人からなるクラスを各学年1人から2人の教員で24時間365日見ている。
正直これ以上仕事を増やしたい人なんて居ない。
例えばイブキ自身がが同じ立場でも「ゲ…」と顔を歪めてしまうような話だ。
いけない、このままでは自分の初担任の話まで流れてしまうと思ったイブキが思わず「大丈夫です!」と言おうとしたその瞬間、校長から思いがけない言葉が飛び出した。
「ホマレちゃんにお願いしようか。」
その瞬間、いや、その場にいた全員が言葉の意味を理解した瞬間と同時に天井からスタンッと小さな音をたてて何かが降ってきた。
ふわりと揺れる長い黒髪、日焼けしてない白い肌、校長をきつく睨む赤い瞳。
「適当なことぬかしてんじゃねぇぞ、じじぃ!」
あの日の小さな子供とイブキの再会であった。
人の名前が決められないです。