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スキルZERO  作者: 伴タツミ
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こんなどうしようもない無理ゲー人生に

努力なんて、意欲なんて、知力なんて、体力なんて、忍耐力なんて、優しさなんて。

財力なんて、家柄なんて、カリスマなんて。

そんなもの、持っている人間の誇張だ、奢りだ、怠慢だ。


保有資格無し。高校中退。努力、忍耐、意欲0。

対人関係能力皆無。

そんな、そんなどこにでもいるありふれたニートが生きやすい世界がいったいこの世の何処にあるっていうんだ。



はて。

いったい此処は何処だっていうのだろうか。

見たこともない青い族衣装は何処か海外の田舎を思わせる。アルプスの少女か着ていそうなその衣装は23年間日本で生活した生粋の関東人には全くもって馴染みがない。

そこそこ栄えた騒がしい街並みも、テレビ画面で観るようなそんなどこもかしこも現実味のない場所。

道行く人々が喧騒に紛れながら呆然と立ち尽くす優理を何処か遠巻きに見ていた。

不信任ものを伺うような目。

まるで獰猛な珍獣を檻の外から見物するような剣のある表情。

格好だろうか、見た目だろうか。兎に角も最近ではおしゃれなんぞも忘れもっぱらジャージを愛用する優理は今日も今日とて最近買ったばかりの上下揃いの黒のジャージに中には白いプリントTシャツといった現代人からしてみれば特に珍しくもない部屋着なわけで。

しかし、今優理が佇むこの街並みに凡そ似つかわしくもない違和感ばかりがしゅちょうする。

ーーーーよく、考えろ、俺。

どうにもこうにも同様して、冷や汗が浮かぶなか努めて冷静さを取り戻そうとは試みるが、それは残念ながら無駄な努力だ。

生まれも育ちも生粋の埼玉。関東から一度たりとも出たことがない。いや、修学旅行ぐらいは西にも行った事があるが、重要な事はそんなことじゃない。

そんなことはどうでもいい。

優理が今一番気にしなくてはいけないのは、そんなことではなく、


「いや、まて、此処は何処だよ」



晴天が何処までも続く煉瓦の街並み。人も風景もまるで異国の情緒ある一枚の絵画のよう。

子供を連れた奥さまが買い物袋を片手に佇む優理を一瞥して、早足に通り過ぎて行った。



ーーーーああ、俺にはあんな風に手を引いてくれる人なんかいない。


そう脳裏を過った考えにどうしようもなく心許なくなる。


まるで、見知らぬ土地で迷子になった幼子のように。

そんなことはどうでもいいよと潮風が凪いだ。


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