真実は屋敷から
・プロローグ
世の中には、未だに解明されてない謎がたくさんある。
それらを人々は怪奇現象やオカルトなどと呼んでいる。
今回の物語もそういった類いの話とも言える。
日本のとある所に少し古びた屋敷がある。
そこは、地元の住民の間では幽霊屋敷として有名であった。
その屋敷では、様々な怪奇現象が起きていた。
屋敷は居住者がいなかったため市役所が取り壊そうとしたが、敷地内に入ることすら出来なく、また外壁を壊そうとしても機械が壊れた、いくらやっても傷一つつけることさえ出来ないでいた。
またある時には、普段入れないはずの屋敷になぜか人が入りこんでは、そのまま帰って来なかったこともあった。
いつしか、地元の住民はその屋敷に近づいたり関わろうとする者はいなくなっていた。
ある一人の男が現れるまでは…。
・幽霊屋敷と男
ある日のこと、一人の少女が道に迷っていた。
「えぇっと、確かこの辺りにあるって聞いたんだけど。」
彼女の名前は宮原 燐。数日前から、とある理由で家出中である。
「おかしいな?確かに、ここにあるって聞いたんだけど。」
そういうと、ポケットからスマホを取り出し目的地を調べてみたが、それがある地域は載っていたがその場所までは詳しく書いてなかった。
「ここまで来て嘘でしたなんてやめてよ…。」
少し不安になりながらも、燐は探してみることにした。
「それにしても、ここの人たちはなんで頑なに教えてくれないんだろ。」
彼女の行こうとしている場所。
そこは、あの幽霊屋敷であった。
しばらく歩いていると、一人の男性が訪ねてきた。
「もし、例の屋敷を探してる女の子ていうのは君かい?」
「え!えと…その…あのぉ。」
「ああ、急に話しかけてごめんね。僕はこの辺りに住んでる者なんだけど。」
「は、はぁ…そうなんですか。」
「なんでも、女の子が例の屋敷を探してるって聞いてね。それで、忠告しに来たんだよ。」
「はぁ…何でしょうか?」
すると、男は表情をかえて言った。
「悪いことは言わない。肝試しに来たって言うんならとっとと帰った方がいい。どうせ中には入ることができないのだから。」
「わ、わたしはそんなつもり。」
「もしかして、中に入ると自分の願いが叶うっていう話を信じてきたのかい?あんなのただの噂話さ。仮に入ることができたとしても二度と帰ることができないらしい。…さぁ、わかったなら帰った帰った。」
しかし、燐は
「そんなのじゃありません!私はそこに行けばもしかしたら本当のことがわかるかもしれないから!」
と、力強く否定した。
はっ!と我にかえるとすぐさま男性に謝った。
「ご、ごめんなさい!つい、大声をだしてしまって…。」
男は少ししかめっ面をしたあとしばらくすると口を開いた。
「失礼だが、君誰か親族で亡くなった人が?」
「はい…。」
「なるほど…君も呼ばれたのか…。」
「え!」
「いや、気にしないでくれ。よし!君を屋敷まで案内するよ。」
「本当ですか!ありがとうございます!…でも、どうして急に?」
「それは、まぁ…あとになればわかるよ。自ずとね。」
「?」
「さて、案内する前に三つほど言っておくことがある。」
「はい、何でしょうか?」
「一つ、もし、なかに入れなかったら諦めて帰ること。二つ、屋敷の中のことは誰にも言わないこと。まぁこれはどうせ出来ないけど。そして三つ、これが重要だ。」
「あの…さっきの中のことを話せないって言うのは…。」
「それも、行けばわかるよ。」
「はぁ…。」
「そんじゃ最後の一つを言うよ。中で起こることは全て真実だ。たとえそれが受け入れ難いことであったとしても受け入れなければならない。まぁこれは、俺というよりは“彼”からの忠告だけどね。」
「屋敷に誰か住んでるいるんですか!」
「おや?知らなかったのかい。」
「ネットには誰も住んでないって…。」
「あぁ…彼は最近あそこに住みはじめたからね。」
聞けば聞くほど、頭の中がこんがらがった。
誰も入ることができないところに人が住んでいて、目の前の男の人はやけに詳しく、そして、さっき言ってた呼ばれたという発言。
考えれば考えるほど、疑問がふえていった。
「それじゃ、そろそろ行こうか。」
「あ…あの!」
「ん?なに?」
「なぜ、そんなに詳しいんですか?まるで、屋敷に入ったことがあるような」
男は少し沈黙してから答えた。
「そう、その通り。僕はあの屋敷に入ったことがある。そして、彼にあった。でもって、何故か屋敷から出ることが出来た。理由はわかっているけど話せない。というか、さっきもいったけど話すことができない。まぁどうせ中に入ったらわかる。質問はそれだけ?」
「はっはい…。」
「よし、じゃあいくか。」
燐は他にも聞きたいことはあったが、これ以上は多分彼が言ってたように話せないため聞くのを諦めて彼についていくことにした。
・現地リポーター
燐は、謎の男と一緒に歩き目的の場屋敷まで来た。
「さぁ着いたよ。」
「ここが…。」
噂以上であった。
確かに、古びていて幽霊が出てもおかしくない雰囲気とはネットにも書いてあった。
建物そのものは、ただの古びた屋敷。
ヒビが入りつるやこけがついた外壁。
そして、少し錆臭い門だけだった。
しかし、実際目にしてみるとその異様なまでのまがまがしさを全身で感じた。
燐の生物としての本能は、その屋敷に行くことを拒んでいた。
全身が震え、冷や汗は噴出し、足は前に進まず、妙な寒気まで感じた。
(嫌だ。なにここ。まるで、闇の中に引き込まれるような恐怖。怖い。)
燐の怯え震える様子を感じ取ったのか男は言った。
「引き返すなら今のうちだよ。さっきも言ったが中に入ったら戻れる保証はどこにもない。僕のように偶然生還できるなんて思わないほうがいい。」
燐は、いや、燐の中にある本能はそうしようとした。
しかし、彼女の中の感情はそれをしなかった。
「いや…大丈夫です。ここまで来たんですもん。引き返したら何もかもが無意味になる。」
それを聞いて、男はそっと微笑んだ。
「それじゃ、僕は帰るとするよ。ここから先は、君自身でどうにかするんだ。」
「はい!ありがとうございました。」
「根拠はないが、君ならうまくやれる気がする。」
そういって、男はどこかえいってしまった。
「大丈夫。私ならやれる。まっててね」
「 」
小さい声で、誰かに向かっていった。
決心して中に入ろうとしたその時。
「すみませーーーん。もしかしてあなたもこの屋敷に用が?」
突如、見知らぬ男が話しかけてきた。
「あのぉ…どちら様ですか?」
「あら?ご存知でない。いやはや、私もまだまだですね。」
そういうと、男は名刺を取り出してきた
「私こういう者でして。」
名刺には”○○放送局 アナウンス部 竹堂 成光”と書いてあった。
「あぁ!あの人気番組”ミステリー究明 オカルトっす”で有名な心霊スポット調査隊現地リポーターの”たけっち”!」
「そう!そのたけっち!なんだぁ知っているんじゃないかぁ。」
「すいません。いつも探検家の格好をされているので。」
「ああね!あれは、普段は山の中とか行くからだよ。今回は、街の中だし雰囲気とは合わないしね。第一今回の目的は、場所というよりは人に用があるからね。」
その言葉に反応してしまう。
「…やっぱり、人が住んでるっていう話は本当だったんですね。」
「どうやら、君もなかなかのオカルトファンだね。その情報を知っているのは、現地を除いては、ごく一部の人だけなんだ。」
「いえ…私もさっき初めて知って。」
「?君…ここには、オカルト目的できたんじゃないのかい?」
「私は、ネットにあった自分の知りたいことが分かるっていう書き込みを見て、ここまできました。」
「そんな話聞いたことないけどなぁ…。」
「嘘かもしれませんが、私はここに望みを託してきました。」
「ふーん、まぁいいや。あ!そうそう。多分君もここに用があると思うんだけど。悪いんだけどこれから撮影があるんだ。訪問するのは、僕たちのあとにしてくれないかい?」
「そ…そんな。」
「一般人を入れるわけにはいかないし。それに、僕らは独自のルートで中の居住者とはもうアポをとってるけど君はどうなんだい?」
「あ…。」
「その様子じゃ、取れてないみたいだね。それじゃあ尚更だめだ。ほら、そろそろ撮影が始まるからどいたどいた。」
なにか言い返したかったが、彼の言っていること間違っていない。
何も言うことができなくただただ撮影が始まるのを黙って見ていた。
(せっかくここまで来たのに…やっと掴んだチャンスなのに)
今日が無理なら明日来ればいい。
普段ならそう思うはずなのに、なぜかもう二度とここに来れないような感じがした。
燐は悔しさをこらえながらも、あきらめて帰ろうとしてた。
すると、なにやら撮影の現場の方が少しざわついていた。
「なに?中には入れないだと?」
「すいません!理由はわからないんですが入ろうとしても屋敷とは反対のほうを向いちゃって。」
「なにいってんだ!さっきからおまえら門の前でぐるぐる回っているだけじゃねぇか!」
どうやら、竹堂と現場スタッフがもめているようだ。
「竹堂さん、やばいっすよ。ここガチで幽霊屋敷なんじゃ。」
混乱する現場スタッフ。
「今までもそんな場所いくらでもあっただろうが。お前ら何年この仕事やってんだよ。」
「でも今回はガチでやばいっす!実際に怪奇現象を体験するなんて初めてですよ!」
「そんなこと言って、本当はビビって行きたくないだけじゃないのか?」
「信じてください!ビビリでもなんでもいいですから!今回の撮影はやめましょ!普通じゃないですよ!」
「ッチ。おじけつきやがって。もういい、録音機貸せ。俺一人で言行ってくる。」
そういうと、竹堂はスタッフから録音機を受け取って屋敷へと向かいそして、屋敷に中へはいった。
「噂は本当だったんだ…。」
「どうする!噂どうりなら竹堂さん帰ってこれねぇぞ!」
「一応念のため警察に連絡しとけ。あと、本社の方にも。もし、万が一のことがあったら俺ら全員クビだぞ!」
(噂は本当だったんだ…)
少し、怖くなる…が、しかし、同時に今がチャンスと思う。
(もし中に入ることができれば。あそこに居るスタッフは私を止めることができない。竹堂さんひとりだけなら大丈夫。でも、もし中には入れなかったら…それに入ったとしても帰れなくなるかもしれない。…こんなこと考えちゃダメ!ここまで来たんだもの!覚悟を決めなきゃ!)
顔を叩き、決心して突撃することにした。
(イチかバチか。入れなかったときはそれまで)
そして、燐は屋敷めがけて全力で走った。
「あ!おい待て!」
途中、スタッフ立ちに止められそうになったが振り切って屋敷へと向かって走り抜けた。
「…はぁ…はぁ…はぁ。」
息を少し整えて顔を上げた。
目の前には、例の幽霊屋敷が見える。
後ろを振り返るとスタッフたちが驚いた顔でこちらを見ている。
どうやら、中に入ることができたようだ。
「…はぁ…やった…はぁ。」
そして燐は屋敷の入口の前に立ち、少しためらいながらも中へと入っていった。
「竹堂さんといい、あの子といい、どうして中には入れたんだ…。」
「いったい、どうなっているんだ。この屋敷は…。」
スタッフたちは、ただ呆然とすることしかできないでいた。
・主との出会い
屋敷の中に入ると、そこは外見と裏腹にとてもきれいだった。
クモの巣一つかかっておらず、床はピカピカだった。
「使用人か家政婦でもいるのかな?」
中はとても広く、螺旋階段まで有り、見る限り三階まであるようだ。
故に、一人で住んでいてはどうやってもこの清潔さは保てない。
そう、燐は思うのであった。
「とりあえず、竹堂さんを見つけて主さんのとこまで行かないと」
しかし、この広い屋敷の中でどうやってみつけようかと悩んだ。
「どうかなされましたか?」
「!!!?」
突如、後ろから声が聞こえてきたため、燐は驚いた。
振り向くと、ゴスロリの格好をした女の子がいた。
「申し訳ございません。驚かせるつもりはなかったのですが。」
「あああ…あの、あの!すいません!かってにああgksじおwじょうぇj」
燐はとてもテンパっていた。
「いえ、大丈夫ですよ。今日あなたが来ることは家の主から聞いておりましたので」
「え?」
聞いていたどういうことだろう。
家の主とは話したことは愚かあったこともない。
顔すらも見たこともない。
なんだったら、今日はじめて人が住んでいることを知ったのだから。
燐は混乱した。
「申し遅れました。私ここの使用人の一人。さくらと申します。それでは、宮原様。主のもとへご案内いたします。」
「あの!すいません。その、私が来ることを聞いてたというのは…。」
「はい。先ほど申し上げたとおり。主から聞いております。」
「じゃなくて!私ここの主とあったことないんですよ!それに、人が住んでいることも今日初めて知ったんですよ!なのにどうして私が来るなんて…。」
「すみません。理由についてはお答えすることができません。わたしもただ今日あなた様が来られると聞いただけなので。」
ますますわからない。
一体ここの主は何者なのか。
いろいろなことが起こりすぎて、頭の中はパンク寸前だった。
「質問はそれだけですか?」
「…はい。」
「では、案内します。中で主と竹堂様がお待ちしております。」
「え?あぁ…はい。」
頭の霧ははれないが、燐は彼女についていくことにした。