Chapter9-4
扉は自然と閉じた。
内側に開いていた扉がまたしっかりと閉じて施錠されると、執務室に静寂が訪れる。
部屋を見ると、石壁や天井から下げられた坑道と同じランタンが灯っており、全容が明らかになってくる。
その途端、五人は全く同じ既視感を覚えた。
どこかで見た部屋に似ている――気がする。それがどこかは思い出せず、実在した場所だったかも不明だが、確かにここと似た場所を知っている。
目の前には赤い絨毯と、その上に置かれた応接用机と椅子が数脚。部屋に窓はなく、四方の壁は全て棚となっており、その棚中には、所狭しと様々な書物や道具、用途不明の物が並んでいる。
部屋の奥、応接机の上座には数段の階段が設けられ、その上に大きな執務机が鎮座し、階段下と同じように、本棚がそれを覆っている。
そして机のすぐ横に、体育館でも見た、学校旗が飾られている。それは先程の物よりも遥かに美品、綺麗だ。
「お待たせ。――私に客人ですって?」
(なっ、女――!?)
そして、その大きな執務机。そこに座る、一人の女性。女性は長く、茶色い髪をしていた。
そこに座る人こそがトウカの言う、ここ軍団長なのだろうか。机の目を落とし、何やら書類に忙しくペンを走らせている人こそ、トウカの上司にあたる、ここの長だというのだろうか。
「忙しいのにごめんなさい、軍団長」
するとトウカは執務机を数段下から仰ぎ見て、少し砕けた口調で応えた。
「いいわよ。お待たせして――」
書類がひと段落ついたのか、とうとうその人物が顔を上げた。
その瞬間、トウカ以外はその場で大口を開いた。
誰も、何も言わない。
誰も、動こうとしない。
「軍団、長?」
その異変にトウカが気付き、話しかけるのも、たっぷり数秒を要したあとだ。
「そんな……! あなたたちは……!」
「「「なんで、どうしてお前が……!?」」」
執務机から立ち上がり、驚きを隠しきれない軍団長。
勢いよく動き、揺れ靡く茶色い長髪。その髪が左右に靡き、また引力に従う頃、五人は確かに、その顔を見た。
「みんな、どうして、ここに……!」
「ジョゼ――! なんで、お前が!?」
執務机から飛び上がったその人物は、見間違えようもない。
腰まで伸びる、茶色の髪。そのすっきりとした顔立ちと、無駄の無い体躯――彼女は間違いなく、ジョゼット・S・アルウェン本人だった。