32 テネシン出発
ギルドをでて言われた店に向かっていると街が騒がしくなった。何事かと思い近くにいた人を捕まえ話を聞いてみると、「アスタ様が帰ってきたんだ!」と言っていた。・・・ああ、何か忘れているとおもったらアスタたちのことだったか。
そしていつの間にか周りに押されて東門まで来ていた。そこから見えた光景は・・・・シルバーボア、ゴールドボア、ボア・キングが動く光景だった・・・。しかもそれを運んでいるのはアスタたちなのだ・・・
「凄いですね、あんなに大きいイノシシを2人で運ぶなんて・・・・。隼人君もそう思いません?」
「ああ、確かに凄いな。というかあれは人が運べるもんなのか?」
アスタたちが運ぶボア・キングの屍を見てそう思ったオレは多分正常だ・・・・と信じたい。
「やっと着いたー!ねえみんな!着いたよ!」
「ああ、着いたね。だからもう寝てもいいかな?」
「お腹・・・空いた・・・」
「酒・・・飯・・・ねむ・・・」
「・・・・・・・・・」
「みんな情けないわね・・・・ってエマちゃん!?
シャルロット以外が疲労からなのか、倒れた。ただし、質量兵器の下に。
「いやさすがにそれだと死ぬだろ!」
慌てて駆け寄り横からボア・キングの死体を持ち上げる。・・・・うわっ、少ししか持ち上がらねえ!けどこれくらい隙間があればきっと誰か引きずり出して・・・くれないだと・・・!?
「誰か二人をさっさと出せ!出ないとこいつら永眠するぞ!?」
「「「はっ!」」」
今気づいたのかよ!?我に返ったテネシンの人たちによってアスタたちはズルズルと引きずられながら救出された。・・・・さて、これ、どうすんだ?
「あの、シャルロットさん」
「ん?ヒナちゃんどうしたの?というかそれよりも無事だった?怪我してない?転んだりしてない?変な男に乱暴とかされなかった?」
「怪我はしていないし転んでもいませんし乱暴なことなんてされてません!」
「そっかー、それはざ…良かったね。それで何か聞こうとしていたみたいだけどなに?」
「何を言いかけたんですか、何を・・・。いやそれよりもこれどうするのですか!?これ交通の邪魔ですよ!?」
陽菜の言いたいことはわかる。明日になったら勿論道は混む。何故ならテネシンは商業で栄える街だからだ。夜に人の出入りが無いのは定刻になると門を閉めら、出入りができなくなる。尤も、今日はテネシンに緊急クエストが発行されたため誰も来ない。・・・が、もう解決したことを知らせる馬はもう走っているらしい。アルゴンが言ってた。ならば明日には人が来てもおかしくないのだ。
「ああ、これ?食べるのよ。テネシンの街のみんなで。”私たちは助かったんだー!もう大丈夫なんだー!”って思ってもらうために」
周りをみると涙ぐんでいる人がチラホラと・・・・。今の話に感動する要素がどこにあったんだ?
「貴女のやりたいことはわかりました。で、どうします?食べるといっても丸焼きにでもするつもりですか?街の中で?」
「それもいいかもね~。けど場所がないからここで解体して分けましょう」
なるほど、ここならギリギリ作業はできるな。少し動かさないといけないが。けどさ・・・どうやってばらすつもりだ?並みのナイフや剣だと刃が骨まで届かないし、下手に剣を使うと肉はぐちゃぐちゃになる。切り口がぐちゃぐちゃだとぶっちゃけいい肉も不味くなる。一体どうするんだ?
「隼人君」
「ん?」
陽菜が横から話しかけてきた。・・・気のせいだろうか?何か期待している目をしているのは・・・・
「隼人君、この剣より長い剣は作れますか?」
「今すぐか?」
「はい。出来ますか?」
「あるぞ。ホレ」
あくまで取り出す。事前に用意してあったものを取り出す―そう見えるように<創造>で陽菜が望むサイズの剣を創る。けど陽菜も知ってるはずだ。切れ味は最悪ということに。それに陽菜の愛剣より長いから構えた時のバランスが悪くなり戦闘にも役立たない。
「一応言っておくが陽菜」
「それじゃあさらに一工夫、お願いしますね」
「一工夫?・・・・・・ああ、ようやく理解した」
最初っから解体用のが欲しいって言えよ!付けるものはアンネと一緒でいいだろ。あ、あの筋肉を貫くのに力任せだとダメになるんじゃ・・・追加しよう。
<切れないことを拒絶>
<貫けないことを拒絶>
よし、完成。普通に危ないから鞘にそっと納め、陽菜に渡す。
「かなり切れ味いいから気を付けて使えよ」
「はい、ありがとうございます♪」
ギリリッ・・・・
・・・・気のせいだろうか?後ろで歯ぎしりする音が聞こえたんだが・・・。うん、気のせいだ。
それはそうと、陽菜は本当に大丈夫なのか不安だな・・・。今のところ<解体>の指示によってスラーっと捌いているけど・・・
べちゃっ
あっ、陽菜が転んだ。しかも頭から。原因は自分で捌いたボアの足。多分見ていなかっただろうなぁ・・・膝を支点に綺麗に突っ込んでいったし・・・なんか見ているほうが怖いな・・・
サクッとオレの分の解体用の剣を創る。そして陽菜の反対側に回り込み――解体作業に入る。勿論足元にも注意しながら手元も注意する。ああ・・・・これ楽しいな・・・・このスーッと斬れていくのがたまらない。
オレがやるのは陽菜の反対側、片側だけ。だから楽しい時間もすぐに終わってしまう。まだ陽菜は終わっていない。代わりにやりたくなるが・・・我慢だ。でないと―
「隼人君、こっちも手伝ってくださいよー!」
「自分が手を付けたんだから自分でやれ!」
こういう魅力的な提案に乗っかりそうになるからだ。けどこういうのはなるべく手伝いたくない。勿論本当に必要と思った時には手伝うつもりだ。
「隼人くーん!ヘルプミー!」
「ああもう分ったよ!やってやるよ!」
しゃーない、サクッと終わらせますか・・・
解体はサクッと終わらせた。そのあとはまあ・・・・肉の争奪戦が凄かった。特に女性陣の目が血走っていた。あとオレと陽菜はそれぞれ3ブロックずつ貰った。金、銀、王の部位を1つずつとはいえ、かなりの量がある。・・・腐る前に食いきれるかが疑問だ。
そのあと”火焔亭”で約束通りディランに粉塵爆発の解説も実験込みでした。ディランは二回目で理解したみたいだが、ライアンは何回説明してもダメだった。オレより丁寧かつ分かりやすい陽菜の説明ですらダメだった。本人曰く、「俺は基本全て感覚で使うからな!理屈を言われても困る!が、さっきの火をブワーってさせるのならばできる!」だそうだ。ディランが何も言わずに酒を飲んでいるあたり、いつものことなのだろう。
で、肝心のボア・キングの肉だが、ステーキとして食べた。味の方だが・・・・一言でいうと獣臭い。肉から滲み出るような獣臭さだった。そして少し硬かった。まああれだけの巨体を支え時速60km/h走っていた生き物の筋肉だ、硬くても不思議でもなんでもない。陽菜は苦戦していたけど。
そして今、オレは<無限倉庫>の中にいる。ベット、最高・・・
おっと、先に確認しないといけないと。でないと忘れるからな。
「<ステータス>、表示」
名前 :隼人・氷川
レベル :64/500
HP :48,000
MP :1,000,000(+987,244)
Str :1140
Agi :675
Vit :320
Int :990
Dex :400
Luk :550(+30)
スキルポイント:62
スキル
<EXスキル:創造 Lv4>
<EXスキル:拒絶 Lv3>
<EXスキル:大図書館ライブラリ Lv2>
<EXスキル:並列思考 Lv2>
<EXスキル:思考加速 Lv1>
<EXスキル:肉体超速再生 Lv2>
<ユニークスキル:異世界言語完全対応 LvMax>
<ユニークスキル:スキルポイント LvMax>
<ユニークスキル:スキルコピー LvMax>
<ユニークスキル:上限上昇 LvMax>
<ユニークスキル:MP上限完全解放 LvMax>
<ユニークスキル:無限倉庫 LvMax>
<ユニークスキル:幸運 LvMax>
<ユニークスキル:清潔 LvMax>
<ユニークスキル:時間加速 LvMax>
<ユニークスキル:コピー LvMax>
<ユニークスキル:全魔法耐性 LvMax>
<ユニークスキル:必中 LvMax>
<ユニークスキル:全魔法適正 LvMax>
<ユニークスキル:並列演算 LvMax>
<ユニークスキル:演算処理能力向上 LvMax>
<ユニークスキル:痛覚拒絶 LvMax>
<ユニークスキル:地図 LvMax>
<ユニークスキル:標的 LvMax>
<ユニークスキル:固定 LvMax>
<ユニークスキル:連結 LvMax>
<ユニークスキル:身体能力向上 LvMax>
<ユニークスキル:魔力操作向上 LvMax>
<ユニークスキル:覇気 Lv1>
<スキル:MP回復速度増加 LvMax>
<スキル:MP回復量増加 LvMax>
<スキル:MP消費量減少 LvMax>
<スキル:HP回復速度増加 LvMax>
<スキル:HP回復量増加 LvMax>
<スキル:剣術 LvMax>
<スキル:格闘術 LvMax>
<スキル:槍術 LvMax>
<スキル:弓術 LvMax>
<スキル:鑑定 LvMax>
<スキル:鑑定偽装 LvMax>
<スキル:鑑定隠蔽 LvMax>
<スキル:時間 LvMax>
魔法
<地魔法:地操>
<水魔法:水操>
<空魔法:空操>
<火魔法:火操>
<氷魔法:氷操>
<地脈魔法:地脈操>
<氷火魔法:氷火操>
<氷地魔法:氷地操>
<風魔法:風操>
<風魔法:旋風>
<空魔法:空力場>
称号
【転移者】 【招かれざる者】 【万物の創造者】 【万物の拒絶者】 【万物の守護者】 【覇者】 【大物喰らい】
・・・・・・・・・なんだこの規則性のないステータスの上がり方は。というか相変わらず自分で振れないのかよ。とりあえず<覇気>はMaxにしとくか。
してMPだが、100万超えたあたりで表示が分離した。まあ7桁以上になっているのは薬草摘みから帰ってきた時にスッと通れたから気づいていたけど。気づいていたけどさ・・・・多くね?そして分けるかいな。
寝るか。
朝。それは夜が明けてから正午ごろまでの間。明鏡国語辞典より。
そして今日の昼、この街を離れる。なぜだろう、この物悲しさと高揚感を感じるのは。
朝飯は<無限倉庫>の中に用意したキッチンで作るか。ゴールドボアとシルバーボアの肉を一口サイズに切り分け、焼く。俗に言うサイコロステーキだ。無論混ざらないように二つのフライパンで別々に焼いている。
焼き終えたら皿に盛りつけて・・・肉だけだと微妙だな。ガーポスタも切るか。ステーキに千切りキャベツにパン・・・やっぱ米が欲しい・・・それもジャポニカ米が・・・
「ねえ~食べないの~?」
「ん?あ、ああ・・・」
机に置いて椅子に座る。あ、目の前の少女の椅子を用意しなきゃ・・・あれ、もう椅子に座っている?どこから持ってきたんだ?
「ああ、この椅子は私が持参しただけだから気にしなくていいよ。それより食べようよ。ねえ?」
「そうだな。たべよう」
そういい少女は小皿にパンとか肉とか盛り付けてく。千切りキャベツには手を付けていない。
「野菜も食え。食事はバランスよく食べることが理想だ」
「緑みたいなこと言ってるー。そんなこと言ってると女の子にモテないぞー」
「はいはいモテなくていいから食え」
「ちょ!?勝手に入れないでよ!?」
食べたがらないようなら無理やり皿に入れる。多少強引だが残すよりはいいか。
肉は切る前にハーブに漬けて揉みこみ、焼くときにはニンニク(っぽい野菜)を切って一緒に焼いた。油は肉自身の油だから美味い。
「うみゃ~」
少女も気にってくれたようだ。よかよか。
ところでずっと気になっていたんだが・・・・
この娘、誰だ?
さりげなく混じって食べているけどオレの知り合いじゃないんだが・・・
けどどっかで見たことあるような・・・・ああ、夢の中に出てきた少女だ!
「おお、ようやく思い出したみたいだね。私のこと忘れたのかと思ったよ」
「オレ顔に出ていたのか?」
「うん。キミ、わかりやすいからね」
「会いに来いって言ったくせに自分から来るのかよ」
「いいじゃん別に~。それに次こうして直接会えるのはかなり先になるからね」
「いつでも来れるわけではないんだな」
「うん。・・・・それじゃあ私、食べ終わったから帰るね。これから何が起きても、惑わず自分の信じた道を選びなさい。キミの選んだ道なら、私は決してキミを責めはしない。その結果がどのようなものになろうとも。・・・・あ、陽菜ちゃんによろしくね」
少女はそういうなり、姿を消した。まるで、最初からいなかったかのように。
「人生何が起こるか分からないって言葉があるけど、本当にその通りだな・・・」
時間は過ぎて、東門前。王都行きの馬車の手綱を握るのは、トリムだった。
「これもきっと何かの導きなのでしょう」
とか言っていたけど偶然なんかじゃない気がする。
「はい、これがCランク用の二人のカードよ。Dランクのカードはこっちで処分しておくわ」
「「ありがとうございます」」
ロマーヌに古いカードを渡し、新しいカードを受け取る。そして<無限倉庫>に放り込む。
「いつでもまた来いよ。お前らはこのテネシンの危機を救ってくれた恩人だからな!」
「機会があればいつかな」
「そのいつかがいつになるか分らないですけどね」
そういえば陽菜にボコられた時のアルゴンの怪我ってっもう治ったのか?
「貴方にはとても有意義な時を貰いました。私たちは拠点が定まっていのであげられるものが少ない。だけど貴方にはこれをあげよう」
「ちょ、いいのかディラン!だってこれは―」
「ライアン、いいんだ。使うときが来ないほうがいい」
「このカードみたいなものはなんだ?」
「これは私の魔力を込めたカード。ただのコレクションくらいの感覚で持っていて構わない。君に持っていて貰いたい。けど他の者には絶対に渡さないでくれ」
「分かった。大事なものなんだな。」
「ああ、大事なものだ」
「本当にいいのか?」
「君だからね」
「そうか。それじゃあ大事に持っておくよ」
カードを受け取り、<無限倉庫>にしまう。ここならオレが許した人以外は入れなはずだ。今朝のは例外だが。
「いいか?どんなに眠くても疲れていても剣を抜いた日は必ず手入れをしろ。抜かなったとしても一週間にせめて一回は手入れをしろ。やり方は朝教えた通りだ」
「分かっている」
「ちゃんと覚えていますから」
ジンクスには朝剣の簡単な手入れの仕方を教えて貰った。いつでも鍛冶師のいる街にいるとは限らないからだ。
「気を付けろよ」
「ああ!」
「はい!」
アスタの何も変哲のない見送りの言葉。けどそれで十分だ。
「二人とも、そろそろ出発しましょう」
「「お願いします」」
ガラガラと音を立てて馬車は進む。テネシンからどんどん離れていく。右側を見ると、昨日の戦闘の跡がまだ残っている。なかなか濃い時間だった。
「隼人君」
「ん?」
「王都ってどんなところでしょうか」
「さあ?行ってみないと分からねえよ」
「それもそうですよね―」
「でもいいところだといいな」
「そう、ですね!」
日は、まだ高い。
一章完結!いやあ・・・長かった。




