Y4 戦闘準備
「よし、こんなところかしら」
「ありがとうございます」
「気にしなくていいよ」
世那ちゃんにつけさせたのは緑色のブーツの<シングルエンチャントクイックブーツ>、赤いコートの<シングルエンチャントレッドボアファーコート>、白っぽい金属の両手杖の<ツーハンドミスリルロッド>、ベルトに括り付けている青い金属っぽい石が埋め込まれているアミュレットの<バリアアミュレット>の4つ。戦闘スタイルは移動砲台スタイル。高威力でドカンとやるタイプね。因みに名前や性能はここに案内した騎士に聞いたわ。
性能はこんな感じ
シングルエンチャントクイックブーツ:AGI+5%・移動速度増加 緑色
シングルエンチャントレッドボアファーコート:VIT+10%・燃えにくい 赤色
ツーハンドミスリルロッド:魔力伝導率70% 白に近い銀
バリアアミュレット:防御・回避不能な即死攻撃を1度だけ絶対に防ぐ 土台は金色
なぜか少し微妙に感じるけど、ステータスの値が大きければ%で補正されるものはかなり大きい。あとこのゲームみたいな世界なのに魔法攻撃力補正どころか魔法攻撃力という概念自体がなかったのよね。だから杖は魔法を使うときに影響する魔力伝導率が一番高い物を選んでみた。そしてバリアアミュレットだけど、消耗品なのか、木箱の中に沢山入っていた。勿論私も付けている。私も色々と装備を用意した。これよりいいものがあればそれに切り替えるけど、ここにあるものだとこれよりいいものはないって程の性能だったの。性能はこんな感じ。
オリハルコンブレスプレート:VIT+90% 青い金属 アミュレットの石に似ている
ハティファングカバーリング:VIT+10%・氷魔法使用時補正有 白
リフレクトロングディステンスシューズ:遠距離物理攻撃を反射 黒
バリアアミュレット:世那ちゃんと同じもの
<オリハルコンブレスプレート>は持った瞬間「これだ」って思ったから使うことに決めた胸当て。因みに世那ちゃんに付けさせようとしたら胸威的な問題が起こり、付けられなかった。衝動的にもごうとした私は悪くないはず。うん。<ハティファングカバーリング>は手甲で、元々はハティと呼ばれる狼の犬歯の一つを半分に切り、それを削って作った品だった。あと、ハティが氷魔法を使う狼だったせいか氷魔法を使うと補正が掛かるみたい。<リフレクトロングディステンスシューズ>は色は真っ黒で、ローファーより走りやすく、遠距離物理攻撃を反射するという変わった効果が付与されている靴。私は非力だからあんまりつけると重くなって問題がでるから4つだけにしたわ。私は家にある日本槍より重いものは持ったことないもの。
「えっと氷川さん、氷川さん」
「自由に呼んでいいわよ、吉田君」
「わかりました、雪音さん。じゃあ僕のことも自由に呼んでください」
「そうさせてもらうね、吉田君。それでなにか用かしら?」
「僕と劉人はもう準備終わったので二人の手伝いとかを」
「ああ、それなら私たちはもう終わったわ」
「あ、そうですか。それじゃあミーティングしましょう。誰がどんなスキルを持っていたりどんな戦い方をするのかを話し合わないと」
「それもそうね。鈴木君はどこにいるのかしら?」
「あっちにある休憩室にいます」
「案内してくれる?」
「ハ、ハイ!喜んで!」
どこぞの居酒屋か(名前だけ知っているけど行ったことはない)、とツッコミそうになるのを理性で押さえる。ここで突っ込んだら負けだから!彼は自分なりに誠意を表そうとしているだけなのよ!と一生懸命自分を納得させると、平静になってきた。よし、大丈夫。私は落ち着いてる。うん。
「よし、会議しましょうそうしましょう」
「花いちもんめかよwww」
ぐはっ、なぜこの二人は私を殺しにくるのかしら!腹筋がいたいじゃない!ってそんなことはいいのよ。大事なのはミーティングだから・・・。クッククックククッヒッククッフフッフフフッ・・・・
あれから付いてくる騎士を含めて30分ほど話し合い、私はその結果をまとめてノートに書きとめる作業・・・すなわち書記作業をしていた。話し合ったことをまとめると、こんな感じになったけど、あることに気づいた。
・鈴木君は<ユニークスキル:段ボール創造>を使い、武器以外段ボールで全身を固めていた。一見するとバカなことをしているかもしれないが、創るときに持っている各種耐性系スキルを混ぜることができるみたいで、鈴木君は<ユニークスキル:全属性耐性>を持っているからここにある防具よりずっと強いらしい。主な武器は<オリハルコングラディウス>。ポジションは前衛・肉壁。
・吉田君は軽装にしてた。鎧はVIT+2%補正・AGI+3%補正・STR+3%補正・命中率補正の効果が付いた革の胸当て、<クワドロプルエンチャントレザーブレスプレート>と世那ちゃんが使っているのと同じ<シングルエンチャントクイックブーツ>、AGI+10%補正が付いているコートの<ゲイルコート>、武器は右手に<スチールクリス>と呼ばれる刺すことに特化しているグネグネしている短剣、左手に<オリハルコンマン・ゴーシュ>という左手用短剣を使う。更にコートに付いてる内ポケットには<スチールスティレット>と<スチールダガー>を二本ずつ入れているらしい。戦闘スタイルは<ユニークスキル:韋駄天>と<スキル:速度増加>と<スキル:ウィンドウォーク>を使った短剣二刀流による高速戦闘。ポジションは中衛・アタッカー。
・世那ちゃんはスキルなどの関係で魔法を重視とした移動砲台。装備類は省略。ポジションは後衛・アタッカー。
・私は槍をメインとした前衛アタッカー。装備類は省略。
・付いてくる騎士は剣と盾を使った前衛壁役。装備類は秘匿情報らしい。
・私以外回復系魔法を持っていない。
そう、あることというのは・・・ヒーラーがいないということ。誰かが怪我し手をしても治せないというパーティーとしてはかなり危ない状態。私がヒーラーをやろうとすると、今度は吉田君に止められた。曰く、「雪音さんがいなくなるとアタッカーが僕だけじゃないですか!」らしい。・・・そこの騎士に世那ちゃんがいるじゃない、と思いつつ彼がそういうのならということでアタッカーのまま。回復はまあ、いざというときは私がやればいいから問題ないわね。
こうして準備を終え、階段を更に下りて行き、とある扉の前で立ち止まった。なにかしら?と思っていると、
「それでは最後の確認です。もう準備のし忘れとか忘れものはありませんか?そしてここから先は最悪、死にます。覚悟はいいですか?」
ということを聞いてきた。・・・ここまで来て引き返すのも難しいと思うのだけど。と思いつつ、頷く。
「それでは、入ります。ここが訓練場、またの名を”ロイヤルパレスメイズ”といいます。さあ、行きましょう」
扉を開けると中はかなり暗く、道も整備されず、そして沢山の赤い色が一斉にこちらを向いている。・・・結構怖いわね・・・でも、行かないと。
そう決意したところ、後ろから、
「待った!」
と声がした。
雪音の笑いのツボが分からなくなってきた・・・




