表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移物語  作者: くろすく
7/10

僕と恭弥の異常スペック(圭吾は未だに謎)



※最後の方、何だか気に入らなかったので修正しました。





目が醒めると、知らない天井だった。

なんて、異世界なんだから当たり前のことなんだけど、僕がいるのはもともとあてがわれたあの部屋じゃなくて、もっと雑然というか…パッと見て何に使うのかわからないような機械が多く見られる部屋だった。


身体を起こすことなく、首と目を動かして周りを確認すると、恭弥が何かの革でできた高価そうなソファで寝ていて、圭吾は白い壁に寄っかかって目を瞑っていた。


他に人は誰もいないようで、窓から見える外の景色は、赤く染まっていた。

そういえば、こっちの世界でも太陽ってあるんだよね…二つだけど。

大きくて、僕らの世界と同じように輝く太陽と、その側で小さく控えめに輝く青い太陽。

でも、夕暮れは僕らの世界とほとんど変わらないんだ。

そう思って身を起こして外を見ていた。


「…む、起きたか」


僕が身を起こしたのに気づいた圭吾が目を開ける。目を閉じてただけだったみたいだ。


「ああ、圭吾。僕、どのくらい寝てたかな」


「そうだな…ざっと四時間ってところじゃないか?ちなみに俺らは昼御飯を食べたが、そうだな…フィリスだけは食べていなかった。余程こたえたんだろうな、王様の話が終わって時間でもあったら会いに行ってやったらどうだ?」


「そうだね、とりあえずあの子のせいじゃないってことくらいは伝えておこうかな」


そうじゃないと、あの子は自分で自分を許せないかもしれない。

だから、僕が代わりに許してあげないといけない。まあ、基本的には僕のせいだしね。


「王様との話し合いっていつ?」


「準備が出来次第ってところだな。…ああ、今日でなくても良いという確認は一応お前が寝ている間に取っておいたが?」


「サンキュー圭吾。でも大丈夫、身体は問題ないみたいだし」


そう言ってぐっと伸びをして立ち上がると、なんだかいつもより力が入るようになっている感じがする。

身体が慣れたっていうか、解放された感じがするし、調子は良いかな。


「圭吾、ここって盗聴とかされてない?」


「ちょっと待て」


そう言って圭吾が目を閉じてつま先で床をトンと叩く。

ソナー…みたいなものかな?こういうのは恭弥が得意なんだけど、今は寝てるしね。


「そうだな、特に作動してる物は何もない。外にも誰もいないようだ」


「うん、それじゃあ…僕の能力(アビリティ)について話そうかな。なんで急に覚醒したのか、については話せばわかるよ」


「そうか。恭弥はどうする?起こすか?」


ちらりと恭弥を見ると恭弥が目を開けた。

ソファに寝転がったまま、こちらを向く。


「いんや、起きてんよ。圭吾が魔力出したかんな。そんで?どんな能力だったんだよ?」


僕はこれから話すことで空気が少し重くなるかもしれないな、と思いつつ話し始める。


「えっと、何からも縛られない…っていう能力かな。能力が覚醒した時に自分の能力がどんなものなのかが漠然とだけどわかったよ。

なんでこの能力で、なんであの時覚醒したのか…。それは多分、フィリスさんの魔力に、僕が無意識に支配されてるのかもって思ったからだと思うんだ」


僕が支配されるのが嫌だから。命令されるのが嫌だから。誰かに従うのが嫌だから。だから多分こんな能力なんだと思う。


それがわかっているからか、圭吾も恭弥も何も言わなかった。


「こっちの世界に来た時、僕は本当に良かったって思ったんだよ」


二人の顔を今は見たくなくて、窓の外に顔を向ける。太陽が沈みつつあって、燃えているような夕焼けが、群青色に変わりつつあった。見たことのない明るい星が見える。

赤い星、黄色い星、緑色の星…色々な色があるな。

地球じゃあこんな景色は見れないんだろうなあ。


「多分、自分が望んでいること、変えたいこと…願いっていうのかな。そういうものが能力に関わってくるんだと思うな」


「……そっか」


「なるほどな」


と、ひとしきり話し終えたところでドアがノックされる。


「あー、キョウヤ、ケイゴ。ユウの様子はどうだ?」


声から察するにキルツが来たみたいだけど、なんだか戸惑ってるような感じがする。


「大丈夫大丈夫。入れよ」


「あのね恭弥、そういうのは普通僕が言うんじゃないのかな…」


「良いじゃんかよ、別に平気なんだしさ」


恭弥はソファから立ち上がってドアを開けた。僕は呆れた顔で恭弥を見つつ、ベッドに腰掛けた。


僕が起き上がって普通にしているのを見たキルツはどこか安心した様子で息をついていた。


「まじでビックリしたっての。急に顔色が悪くなったなって思ったら寝ちまうし。シルヴィは右往左往で俺の首締めるし、フィリスは真っ青な顔で震えてるし、リンコは座り込んじまって動かないし、ルアンは真剣な顔であれこれ指示出してるしさ」


「…お前は?」


キルツがやけに真面目な顔で僕が寝た後のみんなの様子を教えてくれる。


「俺?そりゃあ俺も少しは心配だったけど。 でもさ、いくら異世界の客人だっつってもまだ会ってすぐの奴を本気で心配できるわけないと思わね?」


そう笑って懐から水筒のようなものを取り出して中身を飲むキルツ。匂いからして…果実水か何かかな?


ごくりとそれを飲み、口を拭ったキルツは恭弥が寝転んでいたソファとは違うソファに腰掛ける。


「ルアンは王子サマだし仕方ないと思うぜ?

でも他の奴までなんでそんなに、って俺は思ったね」


そう言われた僕らは揃って頷く。

初対面の他人を本気で心配するだなんてそんなことできるはずがないと思う。


「確かにそうだな」

「あー、俺もそう思うわ」

「僕も同意見」


そんな僕らの様子を見たキルツは少し驚いた後に笑顔を深めて足を組んだ。


「だからさ、俺はお前らのことをもっとよく知りたいって思った。要するに、友人としてこれから付き合っていければいいなって思ったんだよな。お前ら、悪い奴じゃなさそうだし、何より面白いしさ」


キルツの目は嘘をついているようには見えなかった。少なくとも僕はこっちの世界ではまともに…というか、信じられる人が増えていけばいいな、とは思ってる。

だからこの申し出はありがたいけど……お前はどう思うんだろうね、恭弥。


僕らの中で多分一番警戒心が強いのは恭弥だと思う。一番アホっぽいのも恭弥だけど、それはそれとして、あいつはあいつで空気を読むし、よく考えてる。


ちらりと恭弥を見ると、恭弥は僕と圭吾を目で制してキルツに手を差し出した。


「よろしく頼む、キルツ。俺はお前とならやっていけそうな気がすんだよな」


「ああ、俺もそう思う」


恭弥が差し出した手をキルツは躊躇わずに握った。

この瞬間、僕らは友達になったんだと思う。

恭弥が認めたってことは、僕らが認めないわけにはいかないし、僕も仲良くなれるような気はしてた。


「そんじゃまあ手始めに、飯食わね?俺腹減ってきちゃってさあ」


「あー、僕も。僕は昼ごはん食べてないし」


「そういえばそうだな。ならば……もう王様のところに行かないか?正直、俺は早く色々まとめたいし、晩餐会という感じでいいんじゃないか?キルツも同席で」


「……なかなか無茶言うな…」


と、そう言いつつ数十分後、王様の了承を取り付けたキルツと僕らは圭吾の無茶振りを叱りつつ、キルツの手腕に驚いたのだった。



◆◇◆◇



晩餐会を終えて、僕らは王様の私室でこれからのことを話し合うことになった。

一応僕が無事だったっていうことはあの場にいた人たちには伝えておいたけど、晩餐会には僕と恭弥と圭吾にキルツ、ルアンと王様が参加していた。というか、それしか呼んでないんだけどね。

女性陣についてはあっちはあっちで何か話しているらしいけど。


王様の私室には僕ら三人とルアンに王様がいて、キルツは遠慮しておくと言ってシルヴィさんを迎えに行った。


「あのような場を設けてくれて礼を言う。そなたらの人となりを多少なりとも見ることもできたし、余としても良い気分転換にもなった」


「いえ、僕らも王様がどのような人なのか、信用できる人物なのかを判断する材料にはなりましたので」


僕がそう笑って告げると、王様はそれを咎めることなく笑って流した。


「そうかそうか! それで、そなたらの目に余はどのように映ったのか教えてくれまいか?」


どこか少年のような雰囲気を滲ませて楽しそうに聞いてくる王様。

それを見たルアンはやれやれと首を振って紅茶を飲んでいる。


どう思ったのか僕が口を開こうとするとそれを制するように圭吾が王様に向けて話し出した。


「俺は特に問題ないように思えたが?愚王と呼ばれる類いの者ではなさそうだし、他の国の王がどのようなものかは知らないが、そこまで悪いことをしているようには見えなかったな。もっとも、これは使用人たちの立ち居振る舞いから観察してみただけだが」


「ほほう、それはどういうことなのだ?」


興味深げに聞いてくる王様に圭吾は変わらず無表情に淡々と答えていく。


「人というのは気に入らない人と接する時は多かれ少なかれ態度に変化が現れるものだ。例えば眉が少し上がる、声のトーンが変わる、視線があちこち動くなどがあるが、使用人たちの動きを見ても特にそう言ったものは見受けられなかった。だから少なくとも嫌われてはいないだろうと予想をつけたわけだ。

だがまあ……巧妙に隠している可能性は否定しきれないし、細かい判断は俺の領分ではない。よって俺としては悪いやつではない。ただ不確定要素が多いってところだな」


「そうかそうか。よくぞまあそこまで観察したものだ。それで、そちらの……恭弥殿はどう思ったかな?」


圭吾の説明を聞いても気を悪くせず、むしろわくわくした様子で尋ねてくる王様を見ると、少し変わってるのかなと思う。

圭吾が相手を敬うような言葉をしなくても怒らないしなにより自分がどう思われているのかをそんなに嬉々として聞けるものなのか。


さっきから黙って紅茶を飲んだりお菓子を食べいた恭弥はそれらを流し込んで落ち着いた様子で話し始めた。


「そうだな、まあ、良い王様だと思うぜ?

町の人たちを見てもそう苦しんでいるようには見えないし、治安も悪くない。

他国との関係も悪くなさそうだな……帝国とはそれほど良い関係じゃなさそうだけどな。

ま、俺が言えるのはこれくらいか?

てか、細かい判断は優がやってくれるから俺らは適当でいいんだけど」


アニメやゲームみたく帝国は悪者扱いってところなんかなあと言いながら再び紅茶とお菓子を食べ始める恭弥。


僕らにとってはいつものことでも、こっちの人、恭弥をよく知らない人からすると看過できない部分があったのか、ルアンが疑問符を浮かべている。


「キョウヤ、自分の聞き間違いでなければ町の人たちを見たと言いましたよね?」


「んあ? ……言ったけど?」


「どうやってですか?キョウヤたちがこちらに来てからそう時間は経っていませんし、なにより外出もしていない。それなのに見たというのはおかしくありませんか?」


「だから、見たって言っただろ?そりゃあ外出はしてねえけど、見えるだろ?窓からとかさ」


そう恭弥が言うとルアンは信じられないという顔をしてこちらを見てくる。

まあさらっと人外的なことをするこいつのことを信じられない気持ちはわかるけど、慣れたしね。そういう意味で僕は頷いた。


「城から町までどれだけの距離があると……?それに、他国との関係についてはどうやって……?」


「それはどっかの大臣が話してんのを聞いたんだよ。言っとくけど、盗み聞きとかじゃねえから。今でも聞こえてるし、勝手に入ってくるそっちが悪くね?」


「今でも聞こえてる?! ……は?」


何を言っているのかわからない。もしくは、何を言っているんだこいつは。とでも言いたげな表情で僕を見てくるルアン。

僕はそれに苦笑で返す。


「気持ちはわかるよ?でもまあ、恭弥だからさ」


「それで片付けて良いんですか?!」


「うん……もうどうしようもないしね。スペックが色々と他と段違いなんだよ」


僕がそう言うと恭弥と圭吾はどの口が言っているんだとばかりの顔を向けてくるけど、僕はそれらを見なかったことにしてさっきから考え込んでいる王様に話しかける。


「リンテンス陛下、僕は、いえ、僕らは、僕らが不都合にならない限り、この国にいようと思います」


「……そうか。それでは学院に通うことにするのか?」


「はい、そうさせていただきます」


「では、そのように手配しよう。後日、詳細を伝えるのでまた時間をとってほしい」


「わかりました。あと一つお願いがあるのですが……」


少し言いにくいことなんだけど、一応言っておかないとさ、ほら、問題になるといけないし。


僕が言いにくそうにしているのを見て王様は少しばかり訝しげな表情をしているけれど、恭弥と圭吾はわかったらしく、にやにやしていた。ルアンは何のことかわからないので二人に聞いて、微笑んでいた。


僕は外野をさっと睨み、ため息をついた。

いや、もうどうしようもないのはわかるんだけど、なんかこう……ムカつく。


「遮音」


僕が一言呟くと王様と僕を囲うように結界が張られて周りの音が遮断される。


それを王様が見て驚いていた。


「これは…」


「……外野がうるさいので」


と未だににやにやしている馬鹿二人となんだか微笑んでいる王子を見る。

三人の様子を見た王様は僕のお願い事がそう難しいものではないと思ったのかほっと息をついた。


「それで、お願いというのは?」


「…実はですねーーーー」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ