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幽霊に恋して  作者: 宙華
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プロローグ〔1〕 /…突然来た訃報

悪夢のような出来事が彩翠さいすい国の、とある場所で起こった。

寒い冬の夜、午前を回っていた…。

大学2年生である之波(旧姓大内神おおうちがみ樹子きこ は眠ろうとしていた。

高校を卒業すると同時に結婚した5つ年上の夫、之波栄真これなみえいしん は仕事で忙しく今日も帰って来ない。

樹子はその日に限って妙な胸騒ぎを覚えていた。と言っても何の根拠も無い。

夫の仕事は名誉ある仕事だが危険が多く、いつ死んでもおかしくないのだった。

ところが不安は的中してしまった。

樹子が眠りに落ちようとした瞬間、誰かがドアを叩いたのである!

樹子は飛び起きた。出ると夫の上司であるラルイートさんだった。

そして次の瞬間、彼の口から驚くべき言葉が出て来た。

「落ち着いて聞いて下さい…ご主人が殉職されました」

樹子は気を失いかけた。そんな馬鹿な!夫は強い人だ!

「嘘ですよね?」

樹子は震えながら呟くとラルイートのスーツの上着を掴んだ。

しかしラルイートの真剣な目つきを見た時、 樹子は体中の力が抜けそうになるのを感じた。

樹子は悲しみを堪えながらラルイートに言った。

「わかりました…」

ラルイートは樹子の言葉を聞くと深々と溜め息をついた。

数日後、葬儀を終えて慌ただしく自分の家に帰った樹子は、水を飲み、深呼吸をして振り返った。そこには死んだ夫の霊が立っていた。

『樹子、手間をかけさせてすまない』

樹子は、実は霊感があり、これまでにも霊にまつわる不思議な体験をしていたのだ。

夫は葬儀中に現れ、ずっと隣にいた。

だから泣くに泣けず、悲しむ様子を演じるのに苦労した。

「それよりもこんな…急に逝ってしまうなんてひどいです!」

樹子はかつて彼に助けられて以来彼だけを見つめ続けていたし、結婚してからもそれは変わらなかった。

樹子は栄真を恨めしそうに見つめた。彼の背は180に少し足りない。

顔はきりっとしていて、端正な二重の緑の目が優しく澄んでいる。

髪は茶色がかった金髪ストレートで長め。普段はそれを一つにまとめている。

栄真は静かに言った。

『すまない…頼むからその事でこれ以上責めないでくれ。 君もこう言う可能性があるのは覚悟していただろう? それに皆を助ける為には俺とレームナーダが死ぬしかなかった…』

そう言われると樹子も詰まった。

栄真の言った事は本当だった。

それに樹子は人の為に役に立ちたいと危険な仕事に就いている栄真を自慢に思っていたし、 彼が人の為に死に、結果助けられた人を含め多くの人が涙を流した。

夫がとても立派なのはわかっていた。

「…ごめんなさい。 あなたに続いてレームナーダさんまで死んでしまって…取り乱しました」

レームナーダとは彼より2つ年上の、彼の職場の先輩で、夫と息子がいた。

とても素敵な女性で、背が高く樹子より濃い緩やかなウェーブがかった長い緑の髮に、切れ長の深い紫の目のした美女で、春の陽射しのような温かい人だった。

そして樹子を妹のように可愛がってくれていた。

『本当にすまない。体は無くなってしまったが、これからはいつも側にいる』

「わかりました。ありがとう、あなた…」

樹子は寂しそうに承知した。


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