Title-22 破壊者は創造主と相対する
鳴り止まない爆破に、クリスは身を竦ませる。
それでも一歩一歩ウォンに近づくことを確かめるように、ゆっくりと進んでいく。くろぶちが平常時の倍以上に腫れあがっているが、苦しげな表情を抱えながら引きずっている。
停電を引き起こしたのか、ずっと暗闇のまま突き進んでいて、次第に不安が胸に滲んでいく。
――ウォンさん、無事ですよね。
上でどんなことが行われているのか、さっぱり検討もつかない。同業者同士で親交を深めようなんて空気ではなかった。それを確かめるためにも、早く上に行かないと。
ようやく三階にまで辿り着くことができた。
あのままウォンと『流星』が場所を維持しているのなら、この上の四階にいるはず。それから対峙して、ウォンの口からありのままの真意を聞き出し――
「えっ?」
爆発の音が真上で鳴り響く。
思考が中断され、危険信号が脳内で反響する。ビキビキッ、と天井がひび割れると、上から土砂崩れように瓦礫が降ってきた。
奥歯を噛み締めながら、捻挫した足で跳躍して前に倒れる。手に持っている鉄筋で床を押して、生き残る可能性を少しでも引き上げる。
大量の土煙が舞う。
なんとか無事に避けきることはできたが、霧のような土煙の中に誰がいた気がする。
頭上から降ってきた瓦礫とともに、人間が落ちてきたような、そんな気がしたが、目の錯覚だったのだろうか。景色が晴れると、そこには立派な瓦礫の山ができあがっていて、仮に人間が落下してきたとしても、その人間は残念ながら助からないだろう。
自分もあと少しでそうなっていたのでろう恐怖心にかられながら、最悪の想像を振り払う。瞳に映った幻影を霧散させる。
そして、気がつく。
天井をぶち抜いた爆弾のおかげで、一縷の光が差し込んできた。
まるで世界がクリスを祝福してくれるような光のおかげで、闇に満ちた前方が視認できるようになった。そこには、希望に満ちた階段の端が見えた。
ようやく、ようやくだ。
これでウォンの傍に行ける。
足の痛みも忘我しながら、光に縋るようにして――
パン、と銃声のような音が響く。
飛び跳ねるようにして、クリスは頭を引き上げる。
コツコツ、と階段を下ってくる。暗闇から徐々に光の差し込む場所へと歩いてきて、その全容が明らかになる。立ち止まった人間は、クリスが見た事もない人間だった。
「……どなたですか?」
艶美な唇には潰れたガム。
女性は口周りについたガムを口内に含む。どうやら、銃声のように聴こえたのは、ガムの破裂した音だったようだ。見下すような構図で、酷薄に満ちた双眸を横したその女性は口を開く。
「……『創造主』」