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派遣の猟犬  作者: 魔桜
クリスside
22/32

Title-22 破壊者は創造主と相対する

 鳴り止まない爆破に、クリスは身を竦ませる。

 それでも一歩一歩ウォンに近づくことを確かめるように、ゆっくりと進んでいく。くろぶちが平常時の倍以上に腫れあがっているが、苦しげな表情を抱えながら引きずっている。

 停電を引き起こしたのか、ずっと暗闇のまま突き進んでいて、次第に不安が胸に滲んでいく。

 ――ウォンさん、無事ですよね。

 上でどんなことが行われているのか、さっぱり検討もつかない。同業者同士で親交を深めようなんて空気ではなかった。それを確かめるためにも、早く上に行かないと。

 ようやく三階にまで辿り着くことができた。

 あのままウォンと『流星』が場所を維持しているのなら、この上の四階にいるはず。それから対峙して、ウォンの口からありのままの真意を聞き出し――

「えっ?」

 爆発の音が真上で鳴り響く。

 思考が中断され、危険信号が脳内で反響する。ビキビキッ、と天井がひび割れると、上から土砂崩れように瓦礫が降ってきた。

 奥歯を噛み締めながら、捻挫した足で跳躍して前に倒れる。手に持っている鉄筋で床を押して、生き残る可能性を少しでも引き上げる。

 大量の土煙が舞う。

 なんとか無事に避けきることはできたが、霧のような土煙の中に誰がいた気がする。

 頭上から降ってきた瓦礫とともに、人間が落ちてきたような、そんな気がしたが、目の錯覚だったのだろうか。景色が晴れると、そこには立派な瓦礫の山ができあがっていて、仮に人間が落下してきたとしても、その人間は残念ながら助からないだろう。

 自分もあと少しでそうなっていたのでろう恐怖心にかられながら、最悪の想像を振り払う。瞳に映った幻影を霧散させる。

 そして、気がつく。

 天井をぶち抜いた爆弾のおかげで、一縷の光が差し込んできた。

 まるで世界がクリスを祝福してくれるような光のおかげで、闇に満ちた前方が視認できるようになった。そこには、希望に満ちた階段の端が見えた。

 ようやく、ようやくだ。

 これでウォンの傍に行ける。

 足の痛みも忘我しながら、光に縋るようにして――


 パン、と銃声のような音が響く。


 飛び跳ねるようにして、クリスは頭を引き上げる。

 コツコツ、と階段を下ってくる。暗闇から徐々に光の差し込む場所へと歩いてきて、その全容が明らかになる。立ち止まった人間は、クリスが見た事もない人間だった。

「……どなたですか?」

 艶美な唇には潰れたガム。

 女性は口周りについたガムを口内に含む。どうやら、銃声のように聴こえたのは、ガムの破裂した音だったようだ。見下すような構図で、酷薄に満ちた双眸を横したその女性は口を開く。


「……『創造主』」

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