おいしい。
「お待たせいたしました」
わたしの前にはミルクレープと抹茶ラテ、先輩の前にはいちごタルトとバナナオレ。
「いただきます!」
「い、いただきます」
先輩につられて手を合わせる。
緊張する手でフォークを持って、ミルクレープの先をじっと見つめて、それからフォークを入れて…。
わたしの口まで、あと30センチ、あと20センチ、あと5センチ、あと2センチ、あと0.5センチ…………0!
「おいひい……!!」
美味しすぎて、思わず。
ちょうどいいクレープ生地のしっとり感、ほどよい甘さの生クリーム、ところどころの層に挟まるカスタード……ケーキの先端部分なのにぞんざいな感じがしなくて、口に入れた瞬間に重なっていた生地が崩れていく感じすら心地よくておいしい……。
「ん、めっちゃおいしそうに食べるのな」
笑顔でわたしを見ている海智先輩。
「わっ……見てたんですか! って、海智先輩まだ食べてないじゃないですか、食べてください、わたしなんて見てないで……」
「あんまりおいしそうに食べるから、一口目は鹿乃にあげる」
最高に優しい笑顔。この笑顔に今まで何人の女の子がやられてきたんだろう……。
「はい、あーん」
「んっ」
ま、待って、これは、その、あーんって、その、ラブラブなカップルがするものだって、わたしは思ってて、え、あ、あ、
「はいっ、ぱくっ!」
抵抗するすべもなく、まんまとあーんさせられてしまった。でも、いちごタルトもすごくおいしい…。
「本当においしそうに食べる」
海智先輩は満足そう。
「おいしいです! でも急にあーんはなしですよ……!」
「でも、おいしかったんでしょ? 結果オーライ?」
「お、オーライですっ」
「また、連れてきてあげる」
おっ、これほんとにうまい! なんて言いながらケーキを食べる海智先輩も
、なかなかおいしそうな顔をして食べてる。
「鹿乃のもちょうだい?」
「…………!!」
恥ずかしいのを悟られないように、ミルクレープをフォークに乗せて先輩の口へ運ぶ。
「ありがと、おっ、こっちもうまい!」
ほんとうにおいしそうに食べるなぁ……わたしといい勝負なきがする。
なんて思いながら海智先輩を見ていたら、少し真剣な顔になって、わたしの顔をじっと見つめて、
「あーんだけで緊張してた? ほんとうにかわいい。俺が、鹿乃の初めて全部もらっちゃいたい」
わたしは何も返すことができなくて、テーブルの下でぎゅっと手を握りしめた。
海智くんちょっときもくない?




