ケーキ屋さんデート。
先輩の言っていたお店まで、学校から歩いて20分かからないくらいだった。
「来たことある?」
「いえ、こんなところにケーキ屋さんがあるなんて知らなかったです」
こぢんまりしていて、ガラス張りの壁越しにイートイン用の2人掛けのテーブル席が2つと、カウンター席が4人分あるのがわかる。
カランカラン。
先輩に続いてお店に入る。
「いらっしゃいませ」
私は、お店に入ってすぐにケーキが並ぶショーウィンドウに釘付けになった。
「わあああ………」
ショートケーキ、いちごのタルト、ティラミス、ミルクレープ、チーズケーキ……。
「全部おいしそう………」
ケーキから目が離せなくなった私の隣に、ひょいと先輩の顔が近づいてくる。
「どれもおいしそうでしょ」
ぐ、と私の顔を覗き込む。私はやっぱり恥ずかして、
「と、とりあえず座りましょう」
と、テーブルの方へ向かう。
席に着くとウェイトレスさんがやってきて、お冷とメニューを置いていった。
「どれにするか決まった? このお店、ドリンクもいろいろあるんだよ」
ショーウィンドウにあったケーキの中からどれにしようかとぐるぐる悩んでいた私の頭の中に、メニューから、おいしそうなドリンクの情報まで入ってくる。
どうしよう…。
ここで優柔不断なのを発揮してしまうなんて、先輩を困らせちゃう。でも、どうしても決められない…全部おいしそう…………。
「かーの? 決まった?」
「……先輩は決まりました?」
答えられずに聞き返すと、
「うーん……。佳乃、迷ってるの? 何で迷ってるか言ってごらん?」
予想外の返事が返ってきた。
「えーっと………ケーキは、いちごのタルトとミルクレープで迷ってて………」
「迷ってて? 飲み物は?」
「抹茶ラテと、バナナスムージーで、迷って、ます………」
恥ずかしくて声が消え入りそうになる。
「すいませーん」
先輩がウェイトレスさんを呼ぶ。
え、え、まだ決まってないのに…。どうしよう。そう、焦っていると。
「いちごのタルトとミルクレープ、ドリンクは抹茶ラテとバナナスムージーで」
「かしこまりました。お飲み物は先にお持ちいたしますか?」
「どうする?」
とっさに頷く。
「お願いします」
「かしこまりました。それではごゆっくりどうぞ」
「先輩、あの」
「全部半分つしよ」
人懐っこい笑顔で、海智先輩が笑う。
「あ、ありがとうございます……」
自分の顔が赤らんでいくのがわかる。
どうしてこの人はこんなに優しいんだろう。
私は突然、こんな優しさを、こんなに人気者な人の想いを受けていいのかな。
そんな思いが心に積もっていく。




