いかないよ。
「…っ、はぁ、はぁ…」
着いたときには手遅れだったみたいで、細谷先生が、じっと私を見ていた。
「せんせ…、ききっまし、た…?」
息が切れて、言葉が途切れ途切れになってしまう。
先生は、あれを聞いて、どう思っただろう。
怖くて、目を合わせられない。
きっと、いつもみたいな真っ直ぐな目で、私を見ているんだと思う。
「…………」
先生が喋るために、息を吸った微かな音がした。
どくん。
心臓がなる。
「…どこにも」
せんせい。せんせい。
細谷先生。
心で名前を呼び続ける。
「どこにも、行きません。ずっと、近くにいますよ」
せんせい。
優しい声。
恐る恐る顔を上げると、
先生と目があって。
思っていた通りの真っ直ぐな目に、私は、泣きそうになる。
先生はくるっと周りを見てから、
私の頭に優しく手を置いた。
「そばに、います」
せんせい。
だいすき。
口に出しそうになって、かわりに、大きく息を吸った。
約束は、守らなきゃ。
やがて、頭から先生の手は離れて。
「そろそろ行かないと、遅刻になってしまいますよ」
先生が、少し寂しそうに言う。
時計を見ると、登校時間の4分前だった。
若菜も、いつの間にかいなくなっていた。
この場所から離れるのが、惜しい。
けど、行かなくちゃ。
私は小さく頷いて、先生を盗むように見てから、校舎に向かって歩き出した。
心が、ふわふわ浮いていた。
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