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先生と、私。  作者: 南央
10/51

暗唱テスト。

 「枕草子、春はあけぼのを暗唱できるようにしてください」


 目指せ全員暗記。

 そう、プリントに書かれている。


 春はあけぼの。ようよう白くなりゆく…。

 なんだっけ。


 「6月20日午後2時まで暗唱テストを受け付けます。なお、春はあけぼのを12にわけ、1行1点としたプリントを渡します。12点満点とし、そのまま関心意欲態度点にいれるので、みなさんがんばってください」


 細谷先生が説明をする。

 皆は気にしていないかもしれないけど、先生は、すごく丁寧な日本語をしゃべる。

 私は、その、細谷先生の言葉が大好きだ。


 説明を続ける細谷先生を見つめて、心でがんばります、と言う。


 家に帰って、教科書を開く。

 「春はあけぼの。ようよう白く……」

 何度も音読して、紙に書いて、やっと夏まで覚えた。

 でもまだ夏だ。


 覚えているときに、何度も先生の顔が浮かんだ。

 先生は、どんな顔をしてテストをするんだろうか。

 1対1なんて、緊張して頭からすっ飛んじゃうかも。


 細谷先生が音読していた、枕草子、春はあけぼの。

 中学に入って、国語がすごく好きになって、物語や詩が、心に素直に入っていくようになって。

 目に見えるものが、心に届くものが、きれいに見えるようになった気がする。

 まぎれもなく、先生のおかげだ。


 テストが始まってから5日目。

 冬まで覚えてから2日たっていたけれど、自信がなかったのと、緊張していたのとで、なかなか先生のところにいけなかった。

 でも、毎日隣で私の暗唱を聞かされていた若菜がついに痺れを切らし、昼休みに強引に先生のところへつれてってくれた。


 図書室で先生を見つけ、暗唱テストを頼む。

 図書室にテストのプリントを国語のファイルごと持ってきている私が、普通に図書室を利用しに来ている人にとってはいささか奇妙に見えたんだろうか。


 「じゃあ、廊下に行きましょう」


 そう言った先生について、私と若菜は廊下に出る。


 心臓がどくどくいいだす。

 うるさい。うるさい。うるさい。うるさい……!


 「3秒まで止まっていいんですよね?」


 「はい」


 「3回まで挑戦できるんですよね?」


 「はい」


 丁寧に、静かに答える先生。


 「よし…。……いきます」


 私が暗唱しているあいだ、先生はプリントを見たり、私を見たり、ふらふらしている若菜を見たり…。


 「灰がちになりてわろし…!!」


 最後まで無事に言い終えると、


 「OKです」


 そう言って、先生がサインをしてくれた。


 「上手くかけないな」


 そう言って苦笑してたけど、逆に、嬉しかった。

 よくわかんないけど、特別な気がして。


 そこには12/12、つまり点数と、その得点を鉢に生えた花で囲んだサインがあった。


 先生のキャラじゃないような気もするけど、先生らしいといえば先生らしくて。


 テスト、がんばってよかった。


 細谷先生、初めて、そう思いました。

実際に、枕草子の暗唱、がんばりましたよ笑


読んでくださってありがとうございます(・v・)。

これからもお願いします

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