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蒼空のセレスティアブルー  作者: 稲木グラフィアス
第一章《One-eyed Wizard》
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第二話《Devil boy》(2)

 結局、女子達は授業が始まる前に来たものの、先生に『五分前行動しろ』と叱られてしまっていた。

 女の子の身支度は時間がかかると言うが、それは正解なようだ。


「千鶴は早かったよな、男子より」


「彼女達が遅いのだ」


「そうかなぁ」


 着替えてすぐグラウンドに来たというのに。

 千鶴一人だけは既にスタンバイしていたのだ。体育座りで。


「くはっ……ぜぇ……ぜぇ……」


「大丈夫か、駿?」


「大丈夫だ、問題ない」


「…………、そんな装備で大丈夫か?」


「一番良いのを頼む……ぜぇ……」


「返事にそこまで求めてねぇよ」


「お前が、振って、来たんだろ……ぜぇ……」


 初めの『問題ない』は素だったのか。

 まぁ問題なくはなさそうだ。

 さっきから顔が青い。


「このグラウンド、広いよなぁ」


「たしか一周1キロだ。それを10周と言うのだから……」


「計10キロ……」


 前日に遥と話すのが、10キロ走る以上に疲れるなんて思ったからか?


「まぁ、魔宝具のお陰で身体能力が向上してるそうじゃないか。証拠に、4周目でもそれほど疲れない」


「俺は結構疲れてるけどな」


「その割には余裕そうじゃないか」


「ポーカーフェイスって奴だな」


 荒垣先生の話では、魔宝具がフェイズⅠの時に持ち主の体の中で情報を得て固体化する過程で、持ち主の身体能力を引き上げるのだと言う。

 なお、フェイズⅡ、フェイズⅢになって魔宝具が固体化した後でも、訓練さえすれば身体能力を引き上げる事が可能らしい。


「そう言えば、セレスは……」


 振り返るとセレスは駿の少し後ろで、ペースは遅いが表情に疲れは見えていない。


「八月朔日はその……セレスティアが好きなのか?」


「はっ!?」


 こんな時になんて事を言うんだ、千鶴は?


「あのなぁ……。相部屋とはいえ、まだ一日目だぞ。そんな気なんて起こる筈がないだろ」


「そうか? それにしては度々セレスティアの事を見ているじゃないか」


 駿といい千鶴といい、何で皆その事ばっか聞くんだ?

 言えるわけないだろ!


「まぁ、ちょっとね」


「深くは追求しないし、校内恋愛も否定しない。しかし、度を越さないようにな」


「俺ってどんな風に見えてるの?」


「ふむ……、中二病患者だな」


「この眼帯は確かに中二病で着けたけど、ちゃんとした眼帯なの! そして、俺はもう中二病じゃないんだ!」


 よく買い物に行ってると、知らない人には不思議そうに見られていたけど、取るわけにはいかなかった。

 取れば、余計に不思議そうに見られてしまう。


「ふふっ、冗談だ。普通だよ、普通」


「普通、ねぇ」


「強いて言うなら、魔女の息子とはとても見えないな」


「むぅ、そうか?」


 第一、魔女の息子らしいってどんな感じなんだ?

 魔法を使って見せればいいのか?

 ……無理だな。


「心配するな、理事長だって最初から魔法が使えた訳じゃないだろう」


「でも俺、魔法の事なんて何も知らないし……」


 四大魔女の内一人の蒼の魔女だと言われるのだから、それはもう大量の魔法が使えるに違いない。


「なら、これから勉強をすればいい。強さなんて言ってしまえば経験の差だと私は思っている」


「その経験が無いのだが?」


「才能の有無なんて言う奴もいるが、私はそうは思わない。才能なんて物があるとしたら、それは他人よりも上達する時間が少ないってだけだ。努力を覆してしまう程の才能なんて存在しない。少なくとも私は、今まで一度も見たことがない。だからこれから積んでいけばいい」


「わかった。千鶴の話聞いてたら、その気になってきた。サンキュウな、千鶴」


「そのいきだ。そうだ、私も付き合わせてもらおう。まず手始めに私とどちらが早く10周を完走するか競争だ!」


「おっし、負けた方が勝った方の言う事を一つ聞くでどうだ?」


「いいだろう。勝負!」


「3、2、1、ゴー!」


 そう言って、千鶴と同時に全力疾走を開始する。

 不思議とさっきまで感じていた足の重さが消え、どんどん加速する。

 隣で走る千鶴は俺なんかよりも更に速く、楽しそうに笑っている。

 全力って楽しいな。

 そう思いながら、俺の前に出たポニーテールを追いかけるのだった。





















「畜生! 負けたぁ!」


 走り出した千鶴は、その髪型に恥じない程馬のように速かった。

 ラスト一周となった所で千鶴はスパートをかけ、俺も負けじとスパートをかけたつもりだったが、千鶴の速さについていく事ができずにぶっちぎられてしまった。


「いったいその体の何処にあんな速さが……?」


「私は幼い時から体を鍛えていたからな、よく食べ、運動し、体調管理も怠らない。まぁ、一部だけはどうにもならなかったが……」


「ほぅ、胸か……」


「なっ、……何故わかった!」


 顔を赤くしながら、胸を隠す千鶴。

 わかって当然だ。話ながら自身の胸を見ていたのだから。

 育ち盛りの時に筋肉をつけると背が伸びにくくなると聞いたけど、千鶴の場合は胸が成長しなかったんだな。


「ど、どこを見ている!」


「胸だ」


「はっきり言うなっ!」


 赤い顔が更に赤くなり、湯気が出てきそうな程に恥ずかしがる。

 弄り甲斐のある奴だ。


「むしろ、小さい頃から鍛えてたから育たなかったんだよ」


「何っ、そうなのか?」


「まぁ、そういう……ジンクス?」


「しかし、体を鍛えるのは止めたくない。他に何か方法は無いものか……」


「や、やっぱ……揉む、とか?」


「ふむ…………」


 と、千鶴は思案するように自分の胸を見る。

 セレスのを10とするなら千鶴のは3から4と言った所か。

 って、何まじまじと女子の胸を見てるんだ俺は。

 目を反らそうとしても、話の流れからどうしても胸を見てしまう。

 顔を見るのは恥ずかしいし、足と言うのもあからさまだな。

 そうだ、手だ!

 手ならなんて事ないだろう。

 えっと、千鶴は手を……


「待て待て待て! ここでやろうとするな!」 


 俺の言葉を真に受けるのはまだいい。

 真偽は俺も知らないが、それより何故千鶴はここで揉もうとする?


「む、いかんか?」


「お前、保健の授業は受けなかったのか?」


「馬鹿にするな、ちゃんと受けたぞ。あれだろ、タバコや酒は程々にと……」


「何でそこ!? 性の方向を聞いたのに!」


「せ、せい?」


 ぽん、と千鶴の顔が再び赤くなる。

 よく下ネタに反応する奴だな、千鶴は。


「わ、わかった。ここではやらない」


「そうしてくれ」


 ん、ここではやらない?

 まさか、寮の部屋でやるのか。

 ゴクリと唾を飲む。


「な、なんだ八月朔日。じっと見て」


「いや、何でもな……っと?」


 どさっ、と俺の背中に重みがかかる。

 振り向けば、汗だくのセレスが俺の背中に倒れるようにして寄り掛かっていた。


「凄い汗だな。大丈夫か?」


「君翼、……走るの…………早すぎ」


 まぁ、殆ど全力だったからな。


「まさか、俺達の後ろを追いかけてきたのか?」


「……っ!? ……そ、そんな事…………無い」


 俺と千鶴が競争を始めたのは4周目の終わり。

 その時のポジションは結構後ろ側。

 そこから全力疾走で、俺達のワンツーフィニッシュ。

 始めに先頭だった奴も突き放してのゴールだ。

 その中で千鶴は俺よりもずっと速かったのだから、彼女の足の速さはダントツだ。


「うぉぉぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉおおおぉぉぉ!! 何してやがるぅぅぅ!!」


『駿っ!?』


 続々と生徒達がゴールする中で、物凄い勢いで追い上げてきた化け物、駿。

 俺達三人はドン引きだった。


「ぜはぁ、ぜはぁ、ぜはぁ、君翼ぇ!!」


「お疲れさん、駿。すげぇよお前」


 特に限界を突破したであろう疾走の後にまだ大声がでる所。

 俺じゃ絶対に無理かもしんない。


「そんな事より、君翼! 今、セレスさんと何をしてたぁ!?」


「ドン引きしてた」


『うん』


 後ろで二人が頷くと、駿は糸が切れた人形のようにその場に座り込んだ。


「大丈夫か、駿?」


「ははっ、セレスティアさんだけでなく千鶴にまで手をかけるとは……やるな、八月朔日君翼」


 何で、フルネームで呼ぶんだ。

 手なんてかけてないぞ、失礼な。


「て、手をかける?」


 こら、そこ千鶴。反応してんじゃねぇ。

 またややこしくなるだろうが。


「君翼、千鶴にも『可愛い』って連呼したの?」


「言ってない」


 弄り甲斐のある奴とは思ったけどな。

 ある意味、可愛い奴なんだろうな。

 セレスも千鶴も、二人とも純粋すぎるんだよ。

 だから、からかいたくなっちまうんだ。


「そうだ、私はそんな可愛いなんて言われる容姿ではない」


「…………」


「おい、君翼! 何で今言わねぇんだよ!」


「は? あぁ、可愛い奴だと思うよ。特に胸を気にしてた辺りがな」


『…………胸っ!?』


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