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蒼空のセレスティアブルー  作者: 稲木グラフィアス
第一章《One-eyed Wizard》
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第一話《Blue Eyes》(3)


「ふぅ~……」


 俺とセレスティアの部屋は寮の廊下の手前、421号室。

 四号館の二階の一番目という意味だ。

 しかも、この部屋は寮の男子と女子のエリアの真ん中に当たる部屋。

 そして、以前から男女が共に奇数で、部屋が空いていなかった時の男女の相部屋だったらしい。

 俺達の場合たまたま部屋が余ってなかったらという事で男女の相部屋になったが、今まではそうだったのかと寮官に訪ねると、今まで部屋が一杯になる事は殆ど無く、一人部屋になっていたと言う。

 幸か不幸か、俺達はその殆ど無いの部分に当たってしまった訳だ。ははは!

 セレスティアはセレスティアで鍵を受け取り、部屋に入った瞬間に奥側のベッドを取りやがった。

 いや、別に言えば譲るっての。


「~♪」


 そして『ここは私の縄張りだからね?』と言わんばかりに俺を見、シャワールームに直行。

 そして俺は手前側のベッドに腰掛け、シャワールームから聞こえてくる、流水の音と鼻唄に緊張しているのだ。


「…………暇」


 だが、それも長くは続かなかった。

 暇すぎるんだよ。

 青春はまだまだ終わらない男子高校生としては、退屈は最大の毒なんだよ!

 何か無いかと探してみても……


「携帯、充電器、筆記用具、着替え……くそっ」


 遊ぶ物が全く無いんだよ!

 部屋にも何か面白そうな物は無く、後はセレスティアの荷物か……。


「…………(ごくり)」


 猫型のフードが思い出される。

 別に着たい訳じゃないが、親父の破れた服などを直している内に裁縫が得意になり、趣味で編み物をする事もある。

 趣味は多くても、少ないよりは良いと思う。

 そして、裁縫をしていてもまだ服は男物しか縫った事は無い為か女の子物は新鮮なのだ。

 猫型のフード一つとは考えにくい。

 恐らく荷物の中に他の形の物があるに違いない。


「他意はない。他意はない」


 そう自分に言い聞かせ、手を伸ばす。

 その瞬間が酷くゆっくりに感じられ、その間に色々な事を考えてしまう。

 まず一つ。人の物を勝手に物色するのは良くないと、自身を引き留める。

 二つ目。でもやっぱり、女の子の服には興味がある。思いきって行け! と自身の背中を押す。

 三つ目。シャワールームにいるセレスティアの姿。


「…………ないよな」


 …………四つ目は完全に変態だし、やっぱり人の物を勝手に物色するのは良くないよな!

 理性の勝利だ!


「何してるの?」


「えっ?」


 俺はまだ手を伸ばしたまま。それをセレスティア本人に見られてしまった。

 さぁ、どうする俺?

 急いで訂正するか、あるいは堂々と開き直るか。

 当然、前者だ!


「これは……なぁ?」


「これは?」


「あの……フード! 猫型のフードが可愛かったなぁ、と思って」


「思って?」


 威圧感とでも言おうか、セレスティアからオーラを感じる。


「他にもあるのかなぁ……と…………、すいません」


「……可愛かった?」


「あぁ、猫の耳が揺れ動いてて可愛かった」


「うぅ~……、ありがと」


 なんだ? 突然、顔を赤くした上にオーラが感じなくなった。

 セレスティアはフードで顔を隠すようにして、手で深く被る。

 まるで小動物のようだ。

 猫耳フードだから子猫かな?


「セレスティアさん?」


「さん、なんて」


「はい?」


「さん、なんて付けなくていい。後、セレスティアは長いからセレスでいい」


「お? おぉ、分かった。俺も八月朔日じゃなくて君翼でいいからな。セレス?」


 俺が名前(本当に本名なのだろうか?)で呼ぶと、セレスは嬉しそうに微笑む。

 なんだよ。可愛いじゃないか。

 …………ん、いかんいかん。


「どうかした?」


「セレスの照れた顔が可愛いと思ったなんて事は絶対に言えない」


「も、漏れてる」


「ふっ……わざと、さ」


 照れ隠しのため、気取ってみる。

 口に出してしまったのは、半分は無意識によるものだ。

 もう半分(主に後半)はふざけてみただけだが。


「私が可愛い?」


 おかしいな。セレスのフードの猫耳がピコピコと動いているように見える。

 尻尾なんて生えてないだろうな?


「ま、まぁ。とにかくだ。男女とは言え、俺とお前は今日からルームメイト。シャワーの使用時間やその他諸々を決めておかないといけないよな?」


「どうして?」


「どうして、って。シャワー中に相手が入ってきたりしたら嫌だろ?」


 するとセレスは少し思案し……


「……じゅるり」


「お前、さっきもそうだったけど変態なのか?」


「私はただ、魔女の息子に性的も含めて興味があるだけ」


「だけ、じゃねぇよ。それを変態って言うんだよ!」


 セレスはまた少し思案する。

 このノリじゃあ、またボケが来る事だろう。


「じゃあ……君翼の事なんか何とも思ってないんだからね」


「すっげー棒読み。キャラが合ってない」


「君翼君のえっち」


「俺がいつそう言われるような事をした!?」


「さっき、私の荷物を漁ろうとした時」


 あぁ……そんな事ありましたねぇ。

 他意は決して無かった!


「目を反らす辺り、怪しい……」


「他の形のフードがあるのかなと思っただけだって言ったろ?……」


「…………(じー)」


「見るな! そんな疑いの目線を俺に向けるな!」


 セレスは俺に近寄ってきて、まじまじと俺の顔を見つめ始める。


「……、…………。……面白い」


 暫し見つめてから、悪戯に微笑んで離れる。

 何がしたいんだよ、セレスは?

 ドキドキしたじゃないか。


「一つ聞くけど、セレスは朝は弱いのか?」


「どちらかと言うと、弱い」


「そうか……」


 じゃあ、目覚まし時計はちゃんとセットしなきゃな。

 くそっ、寝過ごしても起こしてもらえるかと思ったのに。


「寝惚けてる所を襲うの?」


「襲わねぇよ。じゃあ、朝五時半頃に俺は起きるとするよ」


「そんな早くていいの?」


「ここに来る前は毎日そうだったから、問題ないだろ。セレスはゆっくり寝てろ。良い時間になったら起こしてやるから」


「優しいんだね」


「まぁな。親父にそうやって育てられたし……」


 シャワーの使用時間に起床時間、とりあえずはこんな所かな。

 学食が開く時間が、朝は午前六時から午前七時まで。

 セレスがどれだけ朝に弱いのかはまだ分からないからその場その場だな。


「セレスの方からは何か要望とかあるか?」


「んー……ベッドの陣地」


「布団じゃなくてベッドだから。そして勝手にそっち行かねぇから」


「ほんとに?」


「ほんとだ」


 セレスは少しの間を開けてから「じゃあ」と続ける。


「たまにそっち行って良い?」


「さっき陣地の話してなかったっけか!?」


「枕が変わると寝られないの」


「俺の方の枕だって変わらないだろ……」


「腕枕……」


「んなっ!?」


 今、何と言った?

 う、腕……えっと?

 段々と鼓動が速まっていくのがわかる。


「そ、それは……枕が変わるって言うのかなぁ?」


「前はお姉ちゃんにやってもらってた」


「俺の腕はそんなに柔らかくないぞ……」


「確かに、ちょっと固い」


「ちょっ、揉むなって」


 色々とくすぐったい。

 揉まれた腕が、そして腕枕をしてくれと言われた俺の心が。

 セレスの母親に甘える子猫ような動作を、被っている猫耳フードが強調させ、うるうると揺らめく瞳に吸い込まれそうな感じがたまらなく…………っ!


「待て待て待て!」


「君翼?」


「セレス、俺はまだ人間をやめたくない!」


「何をいってるの……?」


 何か色々とまずい。

 何か良からぬ領域との境界をさ迷った気がする。

 おかしいな。右目の刻印に新たな能力が生まれたのかな?


「まだな? 俺達はそんな関係じゃないから……」


「ん、わかった。我慢してみる」


「そうしてくれるとありがたい」


 少し残念そうにしながら、セレスは自分のベッドの枕を抱き締める。

 だが、やはり人の腕とは違うためか、不満そうな顔をする。

 セレスには悪いが、男女の関係をそんな簡単に縮められる程、俺に勇気は無い。


「どうしてダメ?」


「どうしてもダメ」


「うぅ~」


 そう言えば、セレスの家族はセレスが偽名を名乗っている事を知っているのか?

 セレスティアというのが本名ならそれは俺の思い過ごしとなる。

 それとも、セレスティアの後に続く苗字が嫌いだ、とか。

 セレスティアの意味は『天上の』『神聖な』『神々しい』など。

 初対面とは言え、ここまで得体の知れない人は初めてだ。


「それにしても、……」


 セレスは今、自分のベッドの上で枕をどうにかしようと色々考えて置き方を変えているが、それにはそれが猫じゃらしで遊んでいる子猫にしか見えない!


「可愛いなぁ」と声に出してセレスを照れさせるのも、段々と楽しくなってきた。


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