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蒼空のセレスティアブルー  作者: 稲木グラフィアス
第二章《Kaleidoscope》
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第五話《Blindfold》(1)

えー、第二章《Kaleidoscope》に入って、報告します。

魔宝具の変化段階を3~4に変更しました。

さすがに三つってのは少ないと思ったんで。


今後、こういった事もあると思われますが、それを踏まえて『蒼空のセレスティアブルー』をどうかよろしくお願いいたします。

「骨の具合はどうだ、君翼(キミスケ)?」


 クラス対抗バトルロイヤルが終了し、その後俺は怪我の治療に専念した。

 ようやく復活した俺に、千鶴(チヅル)が心配そうに話しかけてきた。


「大丈夫、もう殆ど良くなったよ」


 骨折した肋骨は、俺が想像していたよりも早く治った。

 一週間と少しかかったが、それでも早い。

 これも《フェイズⅠ》の魔宝具(ワンド)のお陰らしく、只のヒビだけなら二日も経たずに完治してしまうらしい。

 しかしそれには若干の個人差はあり、魔力の強さが関係しているとか。

 魔力が強ければ強い程、完治までの時間が短くなっていく。

 俺の場合はかなり速い方らしい。

 その理由はおそらく、俺の呪いがかかった右目の持つ魔力があってこそだろう。

 それを思えば複雑な気分だった。

 クラス対抗バトルロイヤルで屋上から落ちたのが俺の不運だったとしたら、今こうして立っていられるのはまさに不幸中の幸いと言える。


「ん、どうした。まだ痛むのか?」


「いや、別に……」


 屋上から落ちた理由は未だ誰にも話していない。

 その理由を知っているのは、俺を除いて生徒の中では遠距離型クラスの(タチバナ)夕火(ユウカ)ただ一人。

 それ以上の情報は学園の教師達が握っているに違いないが、いくら俺がこの蒼陣魔法学園の理事長であり、魔女の八月朔日(ホズミ)紗央莉(サオリ)の実の息子であろうと、教えてくれはしない。

 俺の事を突き落とした最乃見(モノミ)(ハルカ)の行方も、俺と同じく療養となっているが、絶対に違う。

 まず一年が現時点で持っている筈のない《フェイズⅡ》に移行した後の魔宝具を遥は持っていた。

 つまり、遥は蒼陣魔法学園に入学する以前から魔宝具を扱っていた事になる。

 それはどこで?

 そして、どうやって?

 魔宝具を使用するには魔法学園に入学する事が絶対条件だ。

 遥は俺と同じ学年なのだから、合法に魔宝具の使用は不可能だ。

 だとすると遥は違法に魔宝具を所持、使用していた?


「まぁ、いいや」


 この問題はいつか明らかになるだろう。

 俺は理由もなく襲われた訳じゃない事ぐらいわかる。

 そんな事より……


「何で夕火が未分類型クラスの教室にいるんだ?」


「あら、今は休み時間よ? 貴方だって中学以前に、休み時間に他のクラスにお邪魔した事くらいあったでしょう?」


「いや、あるけどさぁ」


「ならいいじゃない」


「良いのか? 俺のせいで他のクラスは未分類型クラスの事を見下してるって思われてんだぜ?」


「心配してくれるの? うれしっ」


「…………あぁ、そうだ。心配してる」


「え? あぁ、そう。ありがと」


 俺はわかった。

 ボケられたらボケ返せと!

 突っ込んでしまったら相手の思うツボだと!


「…………(じー)」


「あ、セレス。どうした?」


「…………(じー)」


「何か言ってよ! ……はっ」


 しまった。つい、突っ込んでしまった。

 それにしても、夕火と会ったあたりからセレスの倦怠期が始まってる。


「つーん」


 何だろう。いきなり『つーん』とか言い出しちゃったよ。

 何だかよく分からないけど、顔はそっぽを向いているのに何故か擦り寄ってくる。

 器用だなぁ、と思いながら頭を撫でてみた。


「でれー」


 その台詞と同じく、セレスの顔は俺が頭に手をのせた瞬間から『でれー』とした表情になる。

 何がどうなっているんだ?


「…………(じー)」


「え、何。夕火も?」


「いや、そうじゃなくて……」


 そう言って夕火も顔をそっぽに向けて擦り寄ってくる。

 そうか。きっとこの動作は撫でてほしいという合図なんだな。


「…………(にへら)」


「うーん…………、夕火も猫だけど。ツンデレ猫かなぁ」


 両手に子猫とツンデレ猫。

 猫を沢山飼ってる家の人ってのは、こんな感じかなぁ。


「ね、猫!?」


「よかったじゃないか。君翼が人を猫に例えるのは、その人を可愛いと思ってる証拠ではないか?」


「おう、そうだ」


「お前はツンデレにはならないな」


 駿が茶々を入れてくる。


「え、ダメか?」


「はぁ…………いいんじゃねぇか?」


 最近、皆の表情から殆ど意図が読み取れなくなってきた。

 俺が療養していた一週間に、皆の何がそんなに変わったと言うんだ。


「それよりも、俺にもセレスティアさん達を……」


「せいっ!」


 気持ち悪いが、駿が擦り寄ってくるので、こう……『がっ!』と側頭部に手を当てて力を込めて撫でる。


「あだだだだだだだだだだだだだだだだ!!」


「そうか、お前も撫でて貰いたいか」


「違う違う! そんな事、一言も言ってないし!」


 駿の暴れようが面白い。

 俺ってSっ気があったのだろうか。

 もう少し力を入れてみよう。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」


「もう止めてやれ、君翼」


「はーい」


 手を離すと、駿は頭を押さえて後ずさりする。

 少しやり過ぎたか。


「ったく、頭が割れるかと思った」


「まぁ冗談はさておきだ」


「冗談じゃないぜ、まったく」


「ちょっとやり過ぎた。すまん」


「よるなっ、このサディスト!」


「うん、それならセレス撫でてみるか」


「マジでっ!?」


「…………っ」


「引かれたっ!?」


 駿はセレスに引かれてショボくれてしまった。

 手をワキワキとしながら近づけば誰だって引くけどな。

 そんな場面の中、千鶴の咳払いが間に入ってきた。


「とにかく、退院おめでとう。君翼」


「本当にすまねぇな。心配かけて」


「……君翼がいない教室、何だか暗かった」


「リーダーがいなくなった部隊みたいなモンだからな」


「いいなぁ。私も未分類型クラスに入りたい」


「いや、無理だろ」


「いや、そんな事はないぞ。魔宝具の変化はどんな物になるか分からない。故に、変化の過程で夕火の二丁機銃に近接武器の特性が生まれれば未分類型クラスに入れるかもしれないぞ」


 そう言われて、夕火の目の色が変わった。

 そして自分の両手のひらを見て何かを呟き始める。

 何を言っているのかまでは……うん、わからん。


「じゃあ千鶴、逆に未分類型クラスから別のクラスに入るって事はできるのか?」


「なんだ君翼。他のクラスに行きたいのか?」


「え、ほんとっ!?」


 と、夕火が飛び付いてくる。

 そしてそれ以外の皆の視線が痛い。


「違うって。只、単に気になっただけだから」


「…………(じー)」


「なんだよぉ、セレス」


 睨んでくるセレスを宥めるために、撫でようと頭に手を伸ばすが、セレスはそれを見てプイッとそっぽを向いてしまう。

 これは分かった。『私はそんなバカな女じゃないわ』的な感じだろう。

 いや、別にセレスをバカにしてないけど。


「えっと未分類型から、他へ。だったか? 私の記憶では、それは無かった気がするぞ」


「ん、何で?」


「魔宝具の変化の過程で、遠距離型に近接型や防御型の特性がつく事はあっても、未分類型はそれらを掛け合わせた形が多いために、どれかに特化してもクラスが変わる事は無いそうだ」


「へぇ~」


「それに、君翼のような《変形型(チェンジタイプ)》は純粋な近接、遠距離の二つの特性を持っているためにどちらのクラスにも行けるが、それは強制ではない。もしどちらかの特性を無くなったりすれば、それも有り得るかもしれないが……」


 その瞬間、皆の視線が一斉に夕火に注がれる。

 夕火は魔宝具を作っている家系の人である。

 もしかしたら魔宝具の変化について、この五人の中で最も詳しい人物かもしれないのだ。


「……あぁ、それは殆ど無いわよ。

 能力を失うって事は魔宝具の弱体化を意味するから。

 魔力は体力と違って、ずっと訓練しなければ鈍るなんて事はないの。

 こまめに魔宝具を使ってみないと、自分の魔力がどのような魔宝具を産み出すのかが分からなくなるけど、日常生活を送ってるだけでも少しずつ魔力は強くなっていくものなのよ。

 ほら、言うじゃない?

 三十代まで純潔だと手から火が出せるってやつ。

 あれは純潔の状態が魔力を強くするために一番効率がいい状態だからなの。

 つまり、一度純潔を失うと魔力の強化が妨げられるから、もうその人は魔法を使えるようになるまで生きていられなくなるって訳」


「でも、俺の母さんは魔女だぞ?」


「それはね、魔力の強さには血縁とかが関係してるのよ。

 突然変異なんてのもあるけど、それは千鶴ね。

 皆、入学の前に魔力検定を受けたでしょ?

 それは生まれながらにして魔力が高いか高くないかを調べる物だったのよ。

 それに合格しなければ、魔宝具は杖の形から何も変わらないし、只の棒切れでしかなくなってしまうのよ」


『なるほど……』


 予想通り、夕火は魔宝具についてとても詳しかった。

 魔宝具その物よりも、魔法についても詳しいようで、長々とした説明をありがとうと心の中で関心しながら思った。

 皆の視線を悟ってか、夕火はとても誇らしげな態度を見せる。


「こ、これくらい。橘の娘なら知ってて当然よ」


「いや、マジで関心した。すげぇな夕火って」


「そう? ありがとう」


 なるほど、クラス対抗バトルロイヤルの時の夕火には魔宝具について一本取られたけど、なんとかその場の思い付きで勝てた。

 もし、ちゃんとこっちも色んな不足の事態に対して、柔軟に対処できる頭脳があればもっと楽に勝てたのではないか。

 そう思えて仕方がない。


「…………、……………………。…………」


「ん?」


「君翼、どうした?」


 何かの視線を感じ、振り返っても誰もいない。

 かなり近くでの視線かと思ったんだが、気のせいだろうか。

 何か呟かれた気もするけど……。


「まぁ、いいか」


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