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蒼空のセレスティアブルー  作者: 稲木グラフィアス
第一章《One-eyed Wizard》
18/35

第四話《Battle Royal》(1)

テスト終了と同時に執筆開始しました!

遂にクラス対抗バトルロイヤル開戦。

前話でセレスが呟いた「お別れ」という意味はどういう事なのか、"もしかしたら"この第四話のpart.5までにわかるかもしれない……。

それではpart.1をどうぞ!

 クラス対抗バトルロイヤル、当日。

 俺達、未分類型クラスは拠点とする予定の学食に来ていた。

 千鶴や駿達が声を掛けて集まってくれた生徒達、俺達を含めて計35名。

 開始まではまだ時間がある。

 集められた生徒達の中には早くしろと急かすものもいる。

 さて、いよいよ皆の結束が結ばれるか結ばれないかの分かれ道だ。

 正直、絶対成功するとは思っていない。


「皆をここに集めたのは他でもない。クラス対抗戦に皆が積極的じゃないからだ!」


 それでも、俺は勝負事でやる前から諦めたくない。

 数で負けるなら、団結力で勝つ!

 魔宝具訓練の時も荒垣先生は言っていた。

 諦めるな、と。

 俺達、未分類型クラスは他のクラスに比べて多く魔宝具訓練を受けた。

 なら、その分だけ他のクラスの生徒達に比べて魔宝具の取り扱いは上だ。

 後はそれぞれの連携、そして団結力で圧倒する。

 俺達がバトルロイヤルで勝つには、少しでも他のクラスより高いレベルでの連携が必要だ。

 だが今の未分類型クラスには連携どころか戦意すらない。


「皆の知っての通り、未分類型クラスは生徒が少ない。でも、それは魔宝具がレア物だと思えば良い事じゃないか!」


 皆からの視線が痛い。

 殆どの生徒が『何言ってんだ、コイツ』という目で見てくる。

 諦めるな、俺!

 俺は八月朔日 君翼、四大魔女で蒼陣魔法学園理事長の八月朔日 紗央莉の実の息子だぞ!

 本当の強さなんて今はいい。

 この立場を分からせてやるんだ!


「未分類型クラスの生徒は皆、個々の能力が高い。でも、ジャンルの複雑さに連携が取りにくい。だからこそ、ここで皆に一つになってほしいんだ!」


「たった35人で400以上の敵に勝てる訳ないだろ!」


 誰かの言葉に乗っかって、次々と「そうだ、そうだ!」と罵声が飛ぶ。

 あぁそうさ。誰だって自軍の戦力よりも圧倒的に大きな戦力を持った敵軍を前にしたら怖じ気付くだろう。

 でもそこで退いたら敗けなんだ。


「皆、俺が誰だか忘れてないか!?」


 すると皆が静かになる。

 例えば中国の英雄のゲーム(●動戦士版でも可)など。自軍は数えられるくらいしか表示されないのに敵は圧倒的な数が出現するじゃないか。

 それでもプレイヤーはその敵軍に突っ込んでいく。

 それは何で?

 自分が操っているキャラが敵より勝っているからじゃないか!

 未分類型クラスは今、その状況下にある!

 さぁ、駿。出番だぜ!


「魔女の息子、八月朔日 君翼だ!」


 駿の言葉に一同は一瞬だけ『しーん』として、すぐ後に「そうだ!」と、先程とは別の『そうだ』が次々と飛び始める。


『八月朔日! 八月朔日! 八月朔日! 八月朔日!』


 クラス全員からのコール。

 少し恥ずかしいけど、感激の方が強い。


「そうだ、今回の未分類型クラスには八月朔日がいる! 魔女の息子が!」


『ワー!!』


「さぁ、立ち上がれ皆。武器を取れ、思う存分にその腕を振るえ! 弱小だとバカにする相手クラス達に目に物を見せてやるんだぁ!!」


『ワー!!』


「八月朔日ぃぃぃ!!」「魔女の息子ぉぉぉ!!」「我らが八月朔日ぃ!!」


 いろんな歓声が飛び交う。

 勝った。まずは未分類型クラスの生徒達を一致団結させられるか、させられないかの勝負に。


「さすが、魔女の息子。見事なカリスマだな」


 盛り上がったクラスをそのままに、千鶴達の方へと下がる。


「そんな事はないさ。今の話し方のイメージは千鶴だからな」


「ん、どういう意味だ?」


「男勝りな所のある千鶴なら、どんな感じかなって思ったんだ」


 こういうのは、俺なんかよりもっと統率力のある奴がやるべき事なんだろうなと思い、その雰囲気が似合うのは誰かと考えれば、それは千鶴だろうという結論に至ったのだ。


「そ、そうか。それはそれで複雑な気分だ」


「ん、何で?」


「こっちの話だ。気にするな」


 気のせいか、照れ臭そうに頬をかじる千鶴の顔が赤い気がする。

 気にするなと言うのだから、余り踏み込むのは野暮な事かもしれない。

 特に千鶴の心に踏み込むのは止めておいた方が良いかもしれない。


「兎に角、これで第一関門は突破だな。次は第二関門、作戦を成功させる事だ。わかってるだろうけど、俺は時間が来たら行かなきゃならないから」


「承知している。それまでお前の事はやらせはせん。そして、お前はあの夕火とやらに絶対に勝ってこい。『絶対に』な」


「えらく夕火の事気にすんだな、千鶴って」


「そういう訳じゃない」


 千鶴はゆっくりと自分の胸に手を当てて、喉の奥から絞り出したような声を出した。


「あんな巨乳女に負けたら、只じゃ置かないってことだ……」


「え、……ちょ…………」


 千鶴が浮かべたその顔は、誰が見ても言葉を失う程の物だった。


「だから、ちゃんと勝ってくるんだぞ!」


「その後の笑顔が怖い!?」


「何をバカな。私は只お前を応援してるだけだ」


「その裏に憎悪を念が感じられるんだが……」


「気のせいだ。…………くそっ、巨乳め」


「おーい、聞こえてるぞ?」


 大丈夫だろうか、もし俺が負けて帰ってきたら千鶴に何をされるのか。

 ……想像もしたくないな。

 只、脳裏には刀を振りかざすポニテの侍が過った事は言っておく。





















 その頃、学園の生徒達の入れず、教員も限られた者しか入室を許されていない部屋の中の事。

 テーブルの上に置かれた水晶の中に浮かび上がっている君翼達の姿を、二人の人物が覗いていた。


「さすが君翼君。見事に未分類型クラスを一致団結させましたね」


「まだよ。これはまだ初めの一歩でしかないのだから。本番は戦闘に入ってからよ」


 一人は理事長、もう一人は花子先生。

 現在、この部屋に入室を許可されているのはこの二人を含めて五人しかいない。

 しかし、残りの三人は今はいない。


「そうです、理事長。ひとつ気になる情報が」


「あら、何かしら?」


 花子先生が思い出したように言うと、理事長に耳打ちで話し出す。


「あの魔女がこっそりと自分側の魔法使いを各学園に送り込んでいる、と噂が立っています」


「そう、心配ね」


 自分の学園内に入り込んだ侵入者がいるかもしれないのに、理事長は平然としていた。


「なら、何か対策を……」


「予想ならついてるわ。でも確証はないの。それに、その噂の信憑性もわからないわ」


「そんな事を言っていたら……被害者が出てからでは遅いですよ?」


 侵入者が何をするつもりなのかハッキリとはわからないが、被害が出る前に収集をつけなければならない。

 それが噂なら、嘘か真か確かめなければならない。

 なのに何故、理事長はこうも平然としていられるのか、花子先生にはわからなかった。


「もしその噂が真実だったとしても、その狙いを知るのは簡単よ。あの魔女がやる事と言ったらそれしか無いわ」


「なら、やはりそれに対策を講じるべきでは……」


「まだいいのよ。これから……ね?」


 理事長は一度、花子先生に向かって悪戯な笑みを見せると、すぐに水晶の中に視線を戻す。


「入学式当日から、私の息子とよく一緒にいる子達に一人ずつ監視を。後、遠距離型クラスのあの子にもつけてちょうだい。今はそれでいいわ。何かあったら早急に駆け付けられるように」


「わ、わかりました」


「さあ、始めましょう。魔法使い達」


 理事長は口元をにやりと吊り上げ、言った。





















「『異端者』を炙り出すのよ」






















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