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蒼空のセレスティアブルー  作者: 稲木グラフィアス
第一章《One-eyed Wizard》
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第三話《Machine gun girl》(5)

「君翼……」


 部屋に戻り、機関銃の対抗策を練ろうとベッドに横になると、セレスが心底心配そうに訪ねてくる。


「どうした、セレス?」


「負けたら、遠距離型クラスに行っちゃうんでしょ?」


「そんな事、心配すんなよ。確かに機関銃相手に中距離以下は不利でも、絶望的じゃあない。必ず突破口はある筈なんだ」


 勝つ自信は決してない訳ではない。

 でなければ、決闘なんて思い付かない。

 勢いで決めてしまった辺りもあるが、もし俺が負けて遠距離型クラスに行ってしまったら、部屋割りはどうなるのだろう。

 クラスが変われば、部屋まで変わるのだろうか。

 この四号館は未分類型クラスの寮。

 遠距離型クラスの寮は二号館になる。


「君翼ぇ……」


 セレスが甘えるように抱きついてくる。

 その動作に初日の事を思い出した。

 俺が龍になってセレスを襲う夢を見ていたらしい。

 もし俺が負けたら、誰がセレスと一緒に寝てやるんだ?

 俺がこの寮を出たら、セレスは誰にすがる?

 駿? 千鶴? 遥? それとも俺の知らない誰か?

 それでセレスが落ち着くならそれでも良いだろう。

 だが、落ち着かないのなら俺が側にいてやりたい。

 いや、……


「セレス……俺、勝つよ」


 絶対にいてやらなきゃだよな!


「うん」


 セレスは顔を赤くして、腕に力を込めてくる。

 少し苦しいけど、もしもの事を考えればどうって事はない。

 だから、俺も今の内にセレスをたくさん愛でよう。


「はぁ~、可愛いなぁ」


「にゃっ、……また…………?」


 『にゃっ』が一層俺の理性を揺さぶってくれる。

 フード越しにあるセレスの金髪がふわふわとして心地が良い。

 撫でれば猫のように目を細くして、気持ち良さそうな仕草が猫っぽい。

 前世は猫だったんじゃないか? と、さえ思えてしまう。

 見た目も仕草も猫のようで可愛い。

 親父と暮らしていた頃は金銭的にそんな余裕はなく、猫なんて飼えなかった。

 もし猫がいたとしたら、きっとこんな感じなんだろうなと細やかな幸福感を感じながら、俺は眼帯が外れないようにしっかりと着け直す。

 この幸福を失いたくないから。


「き、君翼……?」


「ん、どした?」


「…………私は猫じゃない」


 セレスの口から出たその言葉は、彼女に似つかわしくない程ドスが効いていて、セレスのどこか奥から響いてきた気がした。


「俺、セレスは猫だなんて言ったっけ?」


「ううん、千鶴から聞いた」


 気のせいだったのか、セレスの声はいつものままだ。

 夕火や決闘の話で、疲れてるのかもしれない。

 今日は早く寝るとしよう。


「ごめん、ただセレスが可愛くてな」


「ま、また……可愛いって」


 顔を赤くして俯くセレス。


「また話は後で、今日はもう……寝る」


「うん、おやすみ」





















 君翼が寝付いてから数分後、セレスはぬくっと起き上がった。


「……八月朔日 君翼」


 いつものセレスの声ではない。が、確かにセレスが発したルームメイトの名前。

 何やら寝言を言い、呑気で無防備な君翼の様子をセレスは軽く鼻で笑ってから、静かに歩き出す。

 その先は部屋の窓。

 ガラス越しに見える三日月は細く、それでもしっかりと太陽の光を受けて、その光を地上に届けている。

 月が輝く夜空で、月の周りで弱々しく輝く星達のように、それを見詰める金髪の少女の青い眼が少し輝いて見える。


「来週は、君翼とお別れか…………」


 ぼそっ、と呟いた。

 その言葉は寝ている君翼には聞こえる筈がなく、薄く輝く青い目から、一滴落ちた。


第三話はこれで終わりです。

次は第四話になりますが、申し訳ない事に学年末テストが近づいているために執筆を一時中断させていただきます。

三月四日からテストなので、それまで勉強を……。

次の更新はそれ以降とさせていただきます。


なお、今回の話が短かったので、第一部に『キャラクター紹介1』を投稿しました。

イラストはまだセレスの分しか描いてませんが、出来次第更新していくつもりです。

それではまた三月以降まで…………

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