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会話は予測しようと努めると案外上手くいく

「ところで護衛さんの名前はなんて言うの?」

 歩き始めておよそ五分ほどで女の子がふとそんな事を呟いた

「ああ、そう言えばまだ自己紹介もしてなかったね」

 淡々と歩きながら質問に答える。

 道は整備されていて障害物もないので女の子に視線を向けながらでも歩けそうだ。

「えーと」

 一人称はなんと言おうか?

 女の子がいなければ間違いなく”自分”と呼称していただろうが、女の子の手前それだと堅すぎる。

 元の世界の方では”俺”と呼称していたのだがそれでいいだろうか?

 今の今までかなり丁寧というか好青年を演じてきたので俺は何となく憚られる。

「質問をするならまずそっちが答えるべきじゃないかな?」

 とりあえずはぐらかす。

 一応はぐらかしたのにも理由がある。

 この世界の名前がどういうものなのか知るのと、一人称の決定をする時間作りのためだ。

「うん! 私の名前はエリル。エリル・むぎゅ!」

「は?」

 そうか。名前はエリル・むぎゅというのか。

 と思った奴はおつむのネジが足りていないはずなので今後注意されたし。

「えーと」

 とりあえず反応に困った。

 手綱から手を離し、エリルの口元を手で覆って苦笑いを浮かべている女性にどんなリアクションを取ればいいのか?

 まあ、下の名前はなんて言うのですか? ではあるまい。

「この子はみんなからエリルって呼ばれて可愛がられてるの。あなたも呼ぶときはエリルでいいですよ」

 ぎゅーっとエリルの口元を抑え続ける。

「むー!」

「……わかりました」

 やはり下の名は聞くなと暗におっしゃっておられる。

 何か事情があるのかも知れないが、少しばかり好都合でもあった。

「自分はユウトです。家族なんかはユウトと呼びますけど、友人なんかはユウと呼びます。あなた方はどっちで呼んで貰っても構いませんよ」

 これで名字を言わずに自己紹介を済ませることが出来た。

 そしてだが、結局自分と呼称することに決めた。

 悩んだ末の結論だったが、今後この世界で活動していくには、まず自分が下手に出ることの方が多いだろう。

 だったら今のうちに自分に慣れておくべきだ。

「そうですか。なら私たちはユウと呼ばせて頂きます。あ、私の名前はスーナです。これでつつがなく自己紹介は終わりですね。ところでユウさんは仕事探しで首都に行くと言ってたのですが、もう成人なされているのですか?」

 話題を自己紹介から逸らしたところでエリルの口元から手を離した。

 エリルは「ぷうー」と深呼吸をして落ち着いてから勇斗の台詞を嬉々として待ち始める。

 それにしても自己紹介の話題から話を逸らそうとしたのだろうが、くそ。面倒なふっかけしてきやがって、と毒づくが何とか頭を捻って答えを出す。

 変なことを口走ってしまうと何かと怪しまれてしまう。

 それだと情報の会得が難しくなる可能性があるので異世界人だと言うことは伏せておくべきだ。

「……いえ、成人はしていませんが。もしかして首都では成人にならないと働いてはいけないのでしょうか? 自分の故郷の村ではある程度の年ならば働いても良いと決まっていたものですから。それと一応確認ですが成人は20歳ですよね? 村と違っていたら一大事ですから確認させて頂きたいのですが」

 どうだ? たぶん完璧な返答のはず。

「いえ。首都でも成人は20歳ですし、子供だって働こうと思えば働いても大丈夫ですが」

「ですが?」

「学校には通いませんでしたか? というかそもそもユウさんはおいくつなのでしょうか?」

 再び馬車がゆっくりと進み出す。

 なので勇斗も行進を再開する。

「自分は17です。村に学校なんて上等なものは無かったので無学ですよ」

「わっ! 私も17ですよ! 同い年だったんですね!」

 無論今の台詞を発したのはエリルだ。さすがにスーナがそう言ったら苦笑いというアクション一択しか反応できない。

「見た目より幼いですね。12歳くらいかと思ってました」

「えへへ」

「それで、えーと」

 何の話だったっけ? 女性の年の感じ方だっただろうか?

 どんどん年を取るにつれて自分の年齢を隠すようになっていくアレか?

 いや、そんな話はしてなかったはず。

「こほん。それで学校の話なんですが」

「ああ、そうでしたね」

 この中で一番お年を召しているであろうスーナが話題回帰をしてくれた。

 これは当然の流れと言って差し支えない。

「でもそれがどうかしましたか?」

 自分が無学だと言うことを知って人生において得なことなどあるだろうか?

 いや、あるまい。

「学校にも通っていないのに、丁寧な言葉遣い、高い身体能力。本当に感嘆します」

「いや、それほどでも」

 高校には通っていた。が、今回の異世界旅行に誘われるに当たって休学届けを出して置いた。

 まあ本当に人生で必要なことは両親から学んだので問題は無い。

「そうですか。では学校に通いたいと思ったことは無いですか?」

「うーん、そうですね」

 あっちの世界じゃあ学校なんてただ突っ伏すか友人と遊ぶための場所だと認識していた。

 それほどまでに自宅学習がすごかった。

 が、この世界での学校となると少し意味合いが違ってくる。

 思えば、学校ほど世の中の常識や仕組みが学べる場所は無いかも知れない。

 効率よく情報を得るなら行った方がいいだろう。

 どうせ……長期的に滞在することになるだろうし。

「確かに通いたいとは思いますね。でもまあ働かないといけないのでね。参考までに聞きたいんですが、首都での学費ってどれくらいなんですかね?」

「無料です。首都では学問も進んでいますからね」

「へえ。それじゃあ合間に通ってみようかな」

 無料なのはいいことだ。

 本当にどこかのお店で働きながら学校に通っても良いし、狩りで生計を立てて学校に心血を注ぐのだって良い。

 どっちにして母の意向には合うはずだ。

「そうですか……」

 またまだスーナは考える素振りを見せた。

 一応馬車は緩やかな速度を維持して走り続けている。

 またまたなのだが、この後スーナがなんて言うのかおおよその想像が付いた。

 なので口をつぐんで台詞を待っていると、とうとう言ってくれた。

「では、学校でエリルの面倒を見てはくれないでしょうか? もちろん、お給金も出します」

 そら来た。

 思い通り過ぎて、ちょっと怖くなった。

急ぎで更新です。

これから予定があるので急ぎすぎたかも知れません。

何か変な表現があったら言ってくれると嬉しいです。

それではまたいつか。

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