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女ゴコロ Ⅱ (5)

屋敷に帰ると史兄様は家に帰っていたけれど、漣兄様は出かけていていなかった。


「お帰り、利奈」


「史兄様、ただいま戻りました。迎えを寄越してくれてありがとう」



今日の夕食は史兄様と2人だけだった。


「兄様、お願いがあるの。明日、時間ある?」


「午後からなら空いてるよ」


プライベートな予定がまだ入っていないことに安心した。


「病院にお見舞いに行きたいの。一人じゃ不安だから史兄様も一緒に行って欲しいの。・・ダメ?」


「搬送されて付き添った人?」


史兄様の問いに頷くと、兄様は笑って「いいよ」と言ってくれた。


「お見舞いには何を持っていけばいいと思う?お花でいいかな」


「どういう症状で搬送されたか聞いたのか?」


首を横に振った。

お腹を押さえていたけど、話せる状態じゃなかったから、詳しくは聞かなかった。


「食べられないものがあったら困るから花でいいと思うよ」



食事を終えた後に、執事にお見舞い用のお花を用意するように頼み、もうすぐ試験が近いから兄様に勉強を見てもらった。




次の日の午後、史兄様の車で昨日の病院に向かった。

手の中でピンクのバラの花束が甘い香りを放っていた。温室で咲いていた花を可愛らしくラッピングしてもらった。



病院の受付で、昨日搬送された女性の話をすると、退院したと言われた。

史兄様が名前を聞いてくれたけど、個人情報だからと教えてはくれなかった。


「利奈、残念だけど退院したんだから良かったじゃないか?」


「うん。そうだね」


花束にしてきたお花は受付に渡して病院で飾ってもらうことにした。


「利奈、どこか行きたいところはある?」


せっかく史兄様と出かけたんだから・・と思い、ずっと行ってみたかった場所を口にした。


「動物園か水族館に行ってみたい」


「動物園?」


史兄様は私が言い出したことが意外だったみたい。

剣崎の家を出て、普通の小学校に通った時に夏休みの絵日記で『家族で動物園に行った』とか『水族館に行った』って書いてくる子がいて羨ましかった。

ママとどこかに出かけた。なんていう事はあるわけがないし、パパはいつも忙しくて家を空けることが多いから家族で出かけるなんてしたことがない。


剣崎の家にいる時も『パパとママと一緒にお出かけしたい』なんて言ってはいけない事だった。


「史兄様は行った事ある?」


「動物園は幼稚舎の遠足か?水族館は・・記憶にないな」


やっぱり兄様もないんだ。


「じゃあ、水族館に行きたい。いいでしょ?漣兄様も呼んで一緒に行こう?」


私が強請ると、史兄様は笑っていいよ。って言ってくれた。


漣兄様に電話をすると、寝起きみたいな声で電話に出た。


『利奈?』


「漣兄様、もう午後だよ?」


『寝たのが明け方なんだよ・・それよりどうした?』


「これから史兄様と水族館に行くの。漣兄様も一緒に行こう?」


『・・・なんで水族館なんだよ?』


眠い。と漣兄様はブツブツ言っていた。


「兄様、起きて」


私が言うと、私から史兄様が携帯を取り、代わりに話し始めた。


「漣、1時間だけ時間をやる。―――まぁ、来なくてもいいけどな」


それだけ言って私に携帯を返した。


「兄様?」


『どこに行けばいい?』


「決まったらメールするね」


『決めてなかったのか?』


「だって、今決めたんだもん。早く出かける準備してね?」


そう言って電話を切ると史兄様とどこの水族館に行くか相談した。


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