女ゴコロ Ⅱ (3)
私は脱線してしまった話を元に戻した。
「私のことより雅樹でしょ?」
話を戻すと雅樹が
「アクセサリーか・・・利奈、付き合え」
「私が一緒に行くの?」
私が一緒に見に行ったって彼女にバレたらまずいんじゃないの?
「買うかどうかは別にして、お薦めのお店があるから見てみたら?私の母の友達が趣味で経営しているお店があるの。可愛いアクセサリーが多くて人気よ?」
香織に教えてもらったお店に雅樹と一緒に来た。祐介も誘ったけど、「絶対に行かない」と言って帰ってしまった。
「このネックレスはいかがですか?カップルに人気ですよ」
店員に言われて雅樹は真剣に選んでいた。小さな石がついている可愛いデザインのネックレスだ。
高校生にも買いやすい価格設定で、華奢なデザインが女の子らしくて可愛い。
私もいつか彼氏ができたら、こういうものを強請ったり、恋人から送られた指輪を喜んで嵌めたりするんだろうか。
きっと、兄様やパパが買ってくれるのとは価値が違うんだよね。
ショーケースの前で考えていると店員がやってきてニッコリと笑った。
「こちらが気に入られましたか?」
「え?」
私は違います。と説明しようと思った時にショーケースの中を見て、雅樹を呼んだ。
「雅樹!これがいいんじゃない?」
「なんだよ」
私はショーケースを指差した。
「ほら、これ。ペアリングだよ!雅樹は嵌められなくても首にかけて身に着けてればいいじゃない?二人でお揃いだよ」
「指輪?」
私は自分の首からチェーンを取り出して雅樹に見せた。
「ウチの学校はね、恋人同士になるとお互いのスクールリングを交換してこうやって首にかけるの」
「利奈のはなんで2つあるんだよ」
「これは、お兄ちゃんからもらったお守りだよ。ね?ネックレスあげるより指輪の方が喜ぶんじゃない?」
雅樹はまたショーケースの前で悩み始めてしまった。彼女の事でこんなに真剣に悩んでいる雅樹が可愛く思えてしまった。
迷いに迷った雅樹がペアリングを買い、会計をしている間に私は店から外を眺めていた。
女の人が通りの向こうの歩道にしゃがんだのが見えた。お腹を抱えて蹲ってしまっている。私は店から飛び出して車道を渡った。
「大丈夫ですか?」
蹲っているのは、若い女性だった。お腹に手を当てて、真っ青な顔をしている。
何回呼びかけても答える事ができないようだったので「救急車を呼びますよ」と言って携帯電話から救急車を手配した。