女ゴコロ Ⅱ (2)
「オレ、チャーシュー大盛り」
そう言った祐介に雅樹が「オレも」と言うと
「落ち込んでんじゃないのかよ?」
祐介に突っ込まれていた。
香織はそんな二人を見て楽しそうに笑っていた。
「ラーメンて美味しいのね」
ポツリと言った香織の言葉に雅樹は驚いていた。
「え?桐生さんラーメン食べたことなかったの?」
桐生家のお嬢様はラーメンとか食べないよね。漣兄様と史兄様も食べた事あるんだろうか?
「うん。初めて食べた」
「やっぱり桃陵って金持ちの通う学校なんだな」
しみじみと言う二人に、少しだけ寂しい物を感じてしまった。
「利奈が桃陵っていうのもしっくりこないよな」
「ああ。利奈だもんなぁ」
スープを飲んでいると、急に話の方向を私に向けられた。
「どういう意味よ」
「だって、利奈って学校帰りにスーパーで買い物してたし、庶民代表みたいじゃん」
確かにね・・桃陵に通っても、つい最近まで買い物していたけど、今は必要がなくなったから買い物はしないな。
「利奈?」
香織が目で“話していないの?”と聞いたから、小さく頷いた。ずっと話しそびれていたんだ。
「あのさ・・」
いつか話さないといけないな。人伝に聞くのではなく、ちゃんと私の口から話をしなきゃいけない。
「ん?」
「私、もうすぐ名字変わるから」
「あ?ああ・・」
「剣崎利奈っていう名前に戻るから。覚えておいてね?詳しいことは今度話す」
それだけを言って最後に残しておいたチャーシューを口に入れた。
お昼ご飯を食べた後に場所を変えて、じっくりと雅樹の悩みについて考えることにした。
やっぱり元気がない雅樹に香織が
「何か・・プレゼントしてみたら?私なら身につけられるものをもらったら嬉しいな」
「身につけるもの?」
私が聞き返すと香織は頷いた
「アクセサリーとか。会えないけどいつも想ってるよ・・・利奈、そういう顔しないの。女の子はそう言われたら嬉しいでしょ?」
雅樹の口からそういうセリフが出てくるのは想像できない。
「無理無理、利奈にはわかんねーよ」
祐介が私を見て鼻で笑い、それを見た香織が溜め息をついた
「利奈の恋愛偏差値って」
「限りなくゼロに近いな」
雅樹が言った
「仕方ないよねぇ・・・好きな人ができたら剣崎先輩が全力で阻止しそうだし。でもね、利奈。考えてみて?“いつも想ってるよ”ってスクールリング渡されたらどう思う?」
スクールリング?
「これ?」
首にかけてあるチェーンを持ち上げると、香織が
「違うよ!剣崎先輩のじゃなくてね」
香織が耳元で「皆川先輩から渡されたらどうする?」そう言ってニッコリと笑った。
黎人からスクールリングを渡されるの?・・黎人から?
「・・・あり得ないでしょ。そう言う事はしないような気がする」
私が言うと香織は楽しそうに笑った。