女ゴコロ Ⅱ (1)
球技大会も無事に終わり、雅樹と約束をした土曜日。
香織と一緒に待ち合わせのカフェに入った。
「こういうところで待ち合わせするのも素敵ね」
香織は珍しそうに店内を見渡していた。
「高校生の待ち合わせっていう感じでしょ?」
そう言うと頷いていた。
店内に雅樹と祐介の姿を探すと、奥の席に座っている2人を見つけた。
「ごめんね、待った?」
そう言って声を掛けると、祐介が返事をした。
「オレ達も今きたとこ」
まだたくさん残っているコーヒーを見て、祐介が「何か頼めば?」と言いメニューを渡した。
「友達の桐生香織ちゃん」
席に座って二人に香織を紹介すると、香織はニコニコと笑った。
「はじめまして。中川君と九条君だよね?」
祐介達は香織と挨拶を交わし、仲良く話し始めた。
注文したミルクティーとカフェラテが運ばれてくると、本題に入ることにした。
「雅樹、彼女とはどうなの?仲直りした?」
私が聞くと、雅樹はぶすっとした顔をして私を見た。
「仲直りって言っても会えないことには解決にならないんだよ」
ああ、『部活ばっかりで会えないのは寂しい』って言われたんだよね・・
「大会が近いから、部活を休むのは無理だな」
祐介が言うと、雅樹は項垂れてしまった。
あ~あ、と思って雅樹を見ると、祐介と目が合った。
「利奈、腹減った」
祐介が言い出すと、雅樹が顔を上げて恨めしそうに祐介を見た。
「オレ、スゲー落ち込んでんだけど。悩んでんだけど?腹減ったっておまえ」
おまえの友情はそんなもんか!って怒る雅樹を横目で見て、祐介に『ラーメン奢る』って約束して来てもらったことを思い出した。
「雅樹は腹減らないのか?」
淡々と言う祐介に雅樹はまた項垂れて、そのままボソリと呟いた。
「・・・減った」
二人のやり取りを見ていた香織が笑い出した。
「中川君達って面白いね」
「ラーメン食べに行こう。雅樹、行くよっ」
そう言って雅樹を立たせてお店を出た。
香織と並んで歩いていると、翔慶学院の制服を着た生徒が私達を見ていた。“どうしてこんなところに桃陵の生徒がいるの?”そんな視線だったけれど、気にしないで目的のお店を目指した。
――その時、私は彼女達がこちらを睨むように見ていたことに気付かずにいた。