球技大会 (1)
球技大会1日目
私はハードスケジュールだった
午前中だけで、テニス2試合、バスケ1試合をこなした
もう、本当に疲れた!
「利奈のスコート姿可愛かったね」
香織は無邪気だ。
お昼休みに私達はカフェテラスではなく、いつもの空き教室にいた。
ふかふかのソファに香織と私、向かいに漣兄様と黎人で座ってお昼を食べた
シェフが張り切って作った4人分のお弁当は好評だった
「利奈、はい」
香織が“あ~ん、てして?”と可愛く言うからつい口を開けてしまった
香織が板状の何かを指でつまんで口元に差し出したから、パクリと銜えて噛み砕くと優しい甘味が口中に広がった。
「黒糖?」
「うん、疲れた時にいいでしょ。先輩方もいかがですか?」
漣兄様はスティック状の黒糖を食べていた。黎人は横目で見るだけだ
ソファの肘掛けにもたれていると眠気が襲ってきた
少しだけ眠りたい
「利奈、起こしてあげるから寝ていいよ?」
「ん」
香織の言葉に甘えて目を閉じた。
どれくらい眠ったのだろう・・・目を覚ますと誰もいなかった
時計で確認すると15分位寝ていたようで、集合時間まで30分程あった。
頭は少しボーっとしていたが体はスッキリしていた。
歯磨きでもすれば頭もスッキリすると思いパウダールームで歯磨きを済ませた。
部屋に戻ると黎人だけしかいなかった
「漣兄様と香織は?」
「漣は呼び出された。桐生はサッカーの様子を見に行った」
香織はわかるけど、兄様が呼び出された?
「誰に呼び出されたの?」
「1年の女子2名。告られてるんだろ」
「ふ~ん」
好きな人に告白するのにどうして二人で行くんだろ。
「漣が気になる?」
「全然。それよりもなんで二人なのかが気になる」
そう考えて、忘れたい二人を思い出してしまいキュッと眉が寄るのがわかった
「利奈?」
「何でもない」
何でもないとは言ったけれど疑問を口にしてみた
「あのね・・・もし自分が女の子二人から同時に好きって言われたとして、一人
は付き合ってもいいなって思ったらどうする?それか二人とも好みだったとしたら・・・黎人ならどうする?」
黎人は眉を寄せた
「なんだそれ・・・」
「だから例えばの話し」
「好きな方と付き合うんじゃないのか・・・」
どうでもいい。というような答えが返ってきた。
「そうだよね。・・・ねぇ。片方だけ片思いがかなったら、叶わなかった方の子との友情は続くと思う?」
あの女達は何を考えていたのだろうか・・・二人で大輝に告白して、一人だけ成就したらどうするつもりだったんだろう?
どちらかの想いが叶ったら、私にしたように逆恨みして階段から突き落とすのだろうか?
「利奈?」
目の前に黎人の顔があった
「え?」
チュッとキスを落とされた
「っ!」
キス魔・・・
「考え込むな。どうせしょうもない事だろ」
その言葉にうん。と頷いた。
確かに。今考えても、結果はもう出ている。
彼女達が何度告白しても大輝は断った。私は誤解して逆恨みした2人に階段から突き落とされた。
ただの憂さ晴らしで突き落とした私が学校に来なくなって、彼女達は喜んだんだろうな・・
目障りな女は学校から消えた。消えた後は大輝にまとわりついて・・
頭の上で大きなため息が聞こえた。
「ったく…」
何?と言う言葉は黎人の唇に飲み込まれた。
「っ」
名前を呼びながら何度もリップ音をさせて口付けられ、そのキスに溺れてしまいそうになったけれど、遠くからパタパタという足音が聞こえて現実に引き戻された。
前に聞いた、携帯電話から漏れ聞こえてきた女の人の声を思い出した。
「だめっ」
黎人の胸を押すとあっさり引き下がり部屋から出て行った。
黎人のキスは熱くて優しい。どうして私にキスをするの・・・