女ゴコロ (4)
教室に戻ると香織がニコニコ笑いながら待っていた。
「皆川先輩の話は何だったの?」
「今日の練習に行けないけど、私にサボらないで行けっていう話」
「ふぅん・・それだけ?」
物足りなそうに言う香織に「なんで?」と聞くと。笑ってごまかされた。
「何となく・・皆川先輩って利奈には優しいよね」
優しい?
「優しいけど意地悪だよ」
『キス魔だし』という言葉は飲み込んで言うと、香織はふふっと笑った。
「皆川先輩も大変だ」
大変だ、という言葉でさっきの電話を思い出した。
「忙しいみたいだよ?女の人から電話きてた。これから行くみたい」
私がそう言うと、香織は驚いた顔をしていた。
「女の人?」
「うん。怒ってる声で『待ってるんだけど』って言っているのが聞こえたの。「今から行く」って答えてたよ」
「本当に女の人だったの?」
納得できないような香織に、そうだよ。と頷くと怪訝な顔をしていた。
「ねぇ、利奈」
香織は真面目な顔で私を見た
「それを見て、どう思った?」
「どうって・・・」
「利奈、教えて?」
「・・・イライラした」
「そっか。イライラしたかぁ」
うんうん、と頷いている香織を見ながら、香織に聞いてみようかと思った。
「香織、あのね」
「ん?」
「最初は関わりたくなくて、嫌だと思ってたのに、黎人がいるのが当たり前に思えてきてるの」
キスばかりするけど嫌じゃなくなっている自分がいる。
「利奈、球技大会は明日だよね?」
「うん」
香織はにっこりと笑った。
「球技大会が終わったら、放課後の練習は無くなるんだよね・・」
どうして香織は分かりきったことを聞いて来るんだろう?
「皆川先輩に会うのはお昼休みだけだね?・・でも、剣崎先輩も一緒だね」
「香織?」
「ところで、どうしてイライラしたの?」
どうしてって・・呼び出されて出かけていく。そういう人がいるのに・・・
「利奈?」
「なんとなく、イライラした」
「うん、わかった。もう少ししたら利奈もきっとわかると思うよ?利奈、そんなに困った顔しないの!」
香織に「笑って?」と頬をつんつん、と突かれた。