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Candy

「利奈、練習に行かないと先輩が迎えにきちゃうよ?」


授業が終わった放課後、私は机に突っ伏していた。


「・・・やだ」


体育の授業では、教師に解放してもらえず、跳んだ後にずっとタイムを測られた。


「もう無理・・・体力使い果たした・・・100メートル何本やったと思う?」


6限目は苦手な数学を頑張った。

体と脳をフルに使ったから今日はもう無理!動けない、動きたくない!!


「利奈、プリンあげるから頑張って?」


「・・・プリンは食べたい。でも嫌・・・」


香織はクスクスと笑う。

今バスケの練習したくない・・・コートを走り回って、身長差がある大男たちと張り合う気力がない。


机に突っ伏してゴネる私に香織は頭を撫でてくれた。


「今日の利奈、スッゴくかっこよかった!あんなに近くで見れて嬉しかったよ?」


顔を横に向けて香織を見るとにこにこ笑っている


「ありがと。でも無理」


廊下がざわついて、


「「皆川先輩!」」


その名前にビクッと反応してしまった。


「利奈、お迎えがきちゃったよ?」


ああ、失敗した・・・さっさと帰れば良かった。


「利奈、遅い!」


黎人はズカズカと教室に入ってきて私の横に立ち香織に聞いた。


「桐生、こいつは机にへばりついてナニしてんだ?」


「利奈は疲れちゃったんです。今日の練習も無理だってゴネていたところです」


香織の裏切り者・・もっと違うフォローをしてくれてもいいと思う。


「・・・大会が近いってわかってるよな?」


黎人は私の顔を覗き込んだ。


「・・・体力温存ってことで今日はお休み・・」


私は顔だけを反対側に向けて“行きたくない”と行動で主張してみた。


「利奈、プリン食べて頑張って?」


香織が差し出したプリンに手を伸ばすと、それを黎人に取られた。


「プリン・・・」


「練習が終わったら食わせてやる」


憎たらしい男だ。

今食べたっていいじゃない


「利奈、諦めて練習頑張ってきたら?」


香織がニコニコ笑いながら言い、黎人は私を見下ろしている。


「ほら行くぞ。動かないなら担ぐぞ」


この男ならきっとやる。私を担いで更衣室に放り込みそうだ。

私は諦めて立ち上がり、荷物を持った。


「皆川先輩、これ---」


「ああ・・・」


香織と黎人が何やら話しているのを横目で見て教室を後にした。


「利奈、頑張ってね~」


香織の言葉に手をあげて答えた。




更衣室に通じる廊下を歩いていると


「利奈、ちょっと待て」


黎人に呼び止められた


「何ですか?」


振り返ると黎人が目の前に立っていた


「口開けろ」


「?」


訳がわからずにいると黎人の指が口に入れられた


「!」



「桐生がくれた」


舌の上に何かが乗り、転がすと口の中に甘い味が広がった。


飴だ、はちみつ味の飴。

甘くて美味しい



「オレの指舐めてんだけど・・・おまえ、エロいな」


黎人は私の口から指を引き抜いて自分の指を舐めた。

どっちがエロいんだ!


「ほら、早く着替えてこい。エロ利奈」


ムカつく!

私は飴を噛み砕いた


疲れた体に飴の甘みが染み渡り、噛み砕いた事をちょっと後悔した。



着替えて廊下に出ると黎人が待っていた。


「飴、もう一つ欲しい」


香織が飴をくれたならいくつか渡したに違いない。


「食べさせて欲しいか?」


廊下に誰もいないのを確認して言った

こんな会話聞かれたら大変だよ?


「それはイヤ、飴だけ頂戴!」


黎人はニヤニヤしている。


「どうしようかな・・・」


むっとした私は黎人が着ているジャージのポケットを漁った。

左になければ右?


「仕方ないからやるよ」


ポケットを探しても飴はなかった。


「いいから、早く頂戴」


顔をあげて黎人を見ると唇が目の前にあった。


「!?」


唇が塞がれて舌と一緒に小さな塊が口の中に入ってきた。


「やっぱりオレ、甘いの苦手」


そう言って顔を離してニヤリと笑う。


私の口に入ってきたのはさっきと同じ飴だった。

噛み砕いてやろうかと思ったけれど思いとどまった


この甘味を失うのは惜しい


黎人は片眉をあげて


「続けて食べて甘くないのか?」


信じられないという顔をする。

私は、はちみつの味を味わいながら黎人を軽く睨んだ。


「甘いから美味しいの」


余計なものも味わってしまったけど・・・



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