キレイな空
「今日の体育は前半が男女混合学年別対抗リレーと後半が球技大会の練習をする」
「「え~!?」」
私だって“え~”です
「100と200の両方やるからな!走者の順番は自由だ。頭を使って組合せを考えろ~」
考えろ~!じゃないです。先生・・・
1年から3年までのA組が集合したこの時間・・・急に殺気立つクラスメイト達
「2年はいいとして問題は3年だよ。オレの予想だと2番走者が皆川先輩でアンカーが剣崎先輩だと思う」
香織がにっこり笑った
「ウチは利奈がアンカーね」
「・・・だな。頼むぜ松本さん」
「どうなっても知らないから」
陸上部に入っている男子と体を慣らした。
第一走者は香織、第二走者は陸上部の野村君、第三走者はサッカー部の橋本君、アンカーは私
漣兄様はニコニコ笑いながら私のところにきた
「利奈は何番走者?」
「兄様は?」
「ナイショ」
ナイショ。と可愛らしく大人げない事を言う兄様に私も対抗した。
「じゃあ私もナイショ」
「久しぶりに利奈のリレーが見られるな」
「そうだね・・・兄様、手加減なんかしないでよ?」
そう言うと、口角を上げて笑った
「もちろん」
バトンを渡す練習をしながら聞いた。
「どうして球技大会の練習をしているのにリレーなの?」
「秋にある体育大会の為に走るのよ」
香織は言った。
「また縦割りチーム?」
「もちろん、今年は優勝間違いないね」
縦割りが好きな学校・・学校を卒業した後にも財界等で繋がりがあるから在学中から良好な関係を築く為だとか・・分かるような分からないような
「第一走者集まれー」
先生に呼ばれて香織は行ってしまった
「じゃあね利奈、ゴールで待ってる」
「うん」
第一走者は3学年とも女子だった。
香織はトップでバトンを渡した
「野村君早い!」
私は第ニ走者を見ながらスタートの位置に立った
「利奈もアンカーか」
「兄様も?」
「1年の第ニ走者速いね。でも、黎人も速いよ」
2位でバトンを受け取った黎人は野村君との差をどんどん縮めた。
1位と2位がほぼ同時に第三走者にバトンを渡し、私と兄様はトラックに立った
「利奈、本気で行くぞ?」
「いいよ。私だって負けない」
2年生と3年生の第3走者は女子だった。私達は男子が第3走者だったから、男女の力の差で私の方が漣兄様より先にバトンを受け取った
「松本!頼む」
頭を空にして走った。
ラスト30メートル位で隣に並ばれた
「っ・・・」
負けたくない!
体がグンと前に進んだ気がした
「利奈!!すごーい!」
私は僅差で兄様より先にゴールした。勝ったけれど、膝が震えている。
練習で震えているようじゃ試合に出たらどうするの?
「まだまだだ・・・私」
情けなくて涙が滲んだ。
「利奈、どうしたの?足が痛いの?」
香織が覗き込む
「何でもないよ!次は200でしょ?」
200メートルリレーをするはずなのに、私は3学年の体育教師に捕まっていた。
「松本さん、タイムを測らせてくれ」
1年の先生はストップウォッチを片手にニコニコしていた。
「リレーはいいんですか?」
「100メートルで結果は分かっているだろう?ジャンプのフォームも見せて欲しいんだ」
本調子じゃないと言ったけど、それでもいい。君のフォームを見たいんだ!と熱く語られてしまった。
2年と3年の先生方がいそいそとハイジャンプの用意をした
「久しぶりなので慣らしていいですか」
「もちろん」
バーを外してフォームの確認をした。
何回かそれを繰り返してバーをセットした
「150から行くかい?」
「はい」
助走をつけてジャンプすると“ボスン”とマットに体が沈む
「まだまだ余裕だったよ!もっと上げていいかな?」
久しぶりに跳ぶとお尻が重くなったような気がする。お尻を引き締めるメニューを追加しなきゃ。
「はい」
「180だ」
先生、極端すぎです。
・・・でもまあいいや・・・
「行きます」
跳んだ時、空が見えた
青くて澄み切った雲一つない空
きれい・・・
この空の事・・・忘れてた・・・
マットに体が沈むと先生方が走ってきた。
「素晴らしい!」
「まったくだ!陸上部に入部してくれないか?」
私はゆっくりと起き上がった
「球技大会が終わったら・・・」