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翔慶学院  (5)

私はコートに向かって声をかけた。


「祐介、雅樹!私帰るね~!」


あっさりプレーを止めた4人は私達の方に歩み寄った


「置いて行こうとしたろ。薄情者」


黎人が言うけれど、恥ずかしくて黎人を見れなかった。


「・・眠いんです」



「桃陵の人かっこいい!」


ざわつくギャラリーを無視して兄様と黎人にブレザーを渡す


「利奈、またな」


「うん」


祐介達に手を振り漣兄様の顔を見上げた


「兄様がバスケをするなんて珍しいね」


「まあな」



バスに乗ろうとすると


「利奈!」


真紀ちゃんに呼び止められた。

彼女にきちんと謝って話をしなくちゃ、そう思って前を歩く漣兄様を呼び止めた。


「真紀ちゃん、ちょっと待っててね」


真紀ちゃんに待ってもらいながら私は漣兄様に話をした。


「漣兄様、私、真紀ちゃんと少し話をしてから帰るから先に帰ってて?」


「バスが出たらどうやって帰るつもりだ?」


「駅まで歩いて行けるから大丈夫だよ」


公共機関を使わない兄様は眉をひそめた


「オレも残る。迎えの車を呼ぶから友達と話をすればいい」


心配性・・電車位一人で乗れるのに・・


「利奈、にいさまって・・お兄さんいたの?」


真紀ちゃんは私と兄様を交互に見た。


「うん、兄が二人いるの。漣兄様は同じ高校に通ってるの。漣兄様、中学の時の友達で真紀ちゃん」


漣兄様が「はじめまして」と言うと真紀ちゃんは顔を赤くしていた。


「真紀ちゃん、何も言わないで卒業したことはごめんなさい」


「利奈」


真紀ちゃんに頭を下げた。


「戻ってきてくれる?」


彼女の言葉に首を横に振った。


「桃陵に入学を決めたのは父親だから、利奈を転校させることは認められない」


漣兄様が私の代わりに言い、真紀ちゃんは唇を噛んで俯いた。


「私、翔慶の高等部に進学するつもりはなかったの。今も戻ろうとは思わない。今でも、桃陵の雰囲気には慣れないけど、あそこが私のいる場所だと思っている」


兄様達がいて、香織がいて、黎人がいるあの場所が今の私がいる場所。そう思っている。


「・・・わかった。なんだか、利奈は住む世界が違う人になったみたい。お兄さんの事もにいさまって呼んでるし、本当はお嬢様だったの?」


『住む世界が違う人』いつか誰かに言われるだろうと思っていたことを実際に言われると、思った以上にショックだった。


「黙ってるっていうことはそうなんだよね?」


真紀ちゃんは、家の事で私との関係に壁を作ってしまった?


「そうだね・・。私の事を許してもらおうとは思わないけど、家の事は関係ないと思っているから・・」


中学の時の私も、今の私も変わらないと思っているから・・私を見てほしい。

そう思いながら真紀ちゃんを見ると、俯いていた。


「真紀ちゃん、私は・・利奈のままだよ?」


「意地悪な事言ってごめん・・」


「真紀ちゃん、泣かないで?」


彼女の顔を覗き込むと、泣きながら私に抱きついてきた。


「私はもう利奈の友達じゃない?」


どうしてそんなこと言うの?


「家の事は関係ないって言ったでしょう?真紀ちゃんは友達だよ?」


「本当?」


「うん」


ありがとう。と言いながらしがみついて泣いている真紀ちゃんの背中を軽く叩いた。


「泣かないで?」


「利奈・・」


「ん?」


「大好きだよ」


真紀ちゃんの背中越しに漣兄様と目が合うと、『良かったな』と言ってくれたから、頷いた。


「ありがと。私も大好きだよ?・・また一緒に遊ぼう?」


二人で顔を見合わせて笑った。




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