表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/125

翔慶学院  (4)

――――

  ―――――・・



試合は桃陵の負け。

やる前から結果はわかっていたけど、全力でやったから悔いはないし、楽しかった。



私は体育館を出て行った大輝を追いかけた。



「大輝!」


呼び止めると、大輝は振り返り、苦笑いを浮かべて私を見た。


「・・・お前には負けるよ」


「そぉ?」


「・・・ありがとな。利奈」


大輝は私にハグをした。


「私こそありがと」


私は大輝の背中をポンポンと叩いた


「秋の記録会まで・・・体つくっておけよ」


大輝は言った


「間に合うかな?」


「やれよ」


大輝が笑った。

良かった、笑ってくれたね。それだけでも今日、ここに来た甲斐があったよ


「んー・・・頑張ってみる。大輝も頑張ってね?」


視界の隅に、口は悪いけど優しい人が見えた。


「ああ、無理はするなよ?」


「うん。また一緒に走ろうね」


黎人が振り返り、私を見た。


「利奈の事を探しているんじゃないのか?」


「そうかも。私、行くね?」


「利奈、またな」


大輝に『またな』そう言ってもらえた事が本当に嬉しかった。


「うん、またね」


手を振って大輝と別れた。



「黎人、待って!」

走って黎人のところに行くと、私の顔を見ながら笑っていた。


「・・うまくいっても泣くのか?」


さっき、大輝に言われたことが嬉しくて涙ぐんでしまったのがバレたのだろうか?


「まだ泣いてないよ」


親指で目元を拭われた


「泣きそうだろ」


この人の前では泣いてばかりだな・・そう思いながら目を見てお礼を言った。


「黎人、ありがと」


ああ、と頷くと、急に真面目な顔をして私をまじまじと見た。


「利奈は男より女が好き、とか言わないよな?」


突然言い出す言葉に、一瞬意味が分からなかったけど、すぐにさっきの事を聞いているんだと思った。


「違うから!彼女達が勝手に盛り上がってるだけだから!」


否定すると黎人の腕が伸びてきて抱きすくめられた。


「利奈の後ろにさっきの女達がいるけど、どうする?」


耳元で囁かれた。


「どうするって?」


「蹴散らしてほしいか、女たちに追いかけられるか。どっちを選ぶ?」


彼女達に追いかけられるのは嫌。でも蹴散らす、という言葉に不安もある・・


「利奈、どうする?」


いつもの、少し意地悪な笑いを浮かべて私を見下ろす黎人を見て胸に頬を当てた


このままがいい・・


“利奈”名前を呼ばれて黎人の顔を見上げると長い睫毛を伏せたきれいな顔が落ちてきた。

この前と同じ・・・そう思いながら私も睫毛を伏せて黎人の唇を受け止めた。

唇は優しく触れて啄むようなキスを繰り返していたけど、下唇を食まれると激しいキスに変わった


頭の芯が痺れるキスに酔わされて応えていると、かくん。と膝の力が抜けてしまった。


「・・ゃっ」


地面にしゃがみ込みそうになるところを黎人に支えられて我に返った。後ろを振り返ると、いつも私を追いかけていた女の子達が呆然と立ち尽くしていた。


恥ずかしすぎる・・・


「着替えてくる」


黎人の顔を見ることが出来なくて、俯いたまま更衣室へ走った。





更衣室で汗を流し、制服に着替えて体育館に戻ると歓声が聞こえた


コートを見ると祐介達と2ON2をしている強者がいた。


「利奈!大変なのっ」


香織が走ってきた


「剣崎先輩と皆川先輩が、中川君達と・・」


あの2 ON 2は兄様達がやってたんだ・・・


「やらせておけば?」


「利奈!すごく雰囲気悪かったよ?喧嘩にならない?」


「ならないよ」


私は椅子に座ってスポーツドリンクを飲みながら試合を見ていた。

兄様と黎人はバスケ部の二人に食らいついていて、時にはリードしているように見えた。

お互い制服でやりにくそうだったけどとても良く動けていると思った。


この試合は、すごく見応えがあった・・・けど


「眠くなってきた・・・」


「利奈?」


いろいろなことがあったから、なんだかとても疲れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ