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翔慶学院  (2)

車が走る速度を落としたことを感じて、学校についたとわかった。


「女子生徒がいるよ」


「剣崎君と皆川君のファン?」


バスケ部の部員達は窓を見ながら言いだすと、


「利奈、私ワクワクしてきた」


香織は目をキラキラさせていた。


私に何かを期待しているその視線に思わず目を逸らしてしまった。


「そう?」


私は、帰りたくなってきたよ・・

バスが停まり、ドアが開くと先輩達は外へと降りはじめた


「利奈、降りないのか?」


漣兄様の言葉に覚悟を決めて席を立った。


先にバスから降りていた漣兄様と黎人の隣に立つと、黎人が私にだけ聞こえるような小さな声で「怖いか?」と聞いてきた。


その問いかけに小さく頷くとぎゅっと手を握ると、すぐに手を離した。


「利奈っ!!」


呼ばれた方を振り返ると、懐かしい顔ぶれがいた。


「バカ!!」


ごめん。と言おうと思ったけど、友達が私にしがみついてきて言えなかった。


「利奈のバカ!」


「ごめんね、真紀ちゃん」


仲が良かった真紀ちゃんは私にしがみついて怒っていた。


「何も言わないで卒業して!!あんたは本当にバカだよ!みんな、利奈と一緒に高校に行きたかったんだよ!?」


私を責める真紀ちゃんの言葉通り私はバカだ・・


「・・ごめん」


「利奈、戻ってきてよ!!転校してくればいいでしょ!?」


転校?


「戻ってきて!みんな待ってるんだよ」


思ってもいなかった真紀ちゃんの言葉に驚いていると、目の前に祐介が立っていた。


「山本、いい加減にしろよ?利奈を困らせるな。離してやれ」


「中川君のバカ、邪魔しないでよ!」


「いい加減にしろ!分かってて無理を言うな!」


そう言うと、私にしがみついていた真紀ちゃんの腕を外させて私の手を引いた。


「利奈、行くぞ」


「中川君!話は終わってない」


「試合が終わってからにしろよ」


祐介の言葉で最初の目的を思い出した。


「真紀ちゃん、本当にごめんね。話の続きは試合が終わってからにしよう?」


そう言うと真紀ちゃんは渋々頷いてくれた。


「部長・・・試合までにコートに行きます」


「え?」


部長に言い、兄様が持ってくれていたバックを自分の手に持った。


「兄様、私、用事があるから先に行くね?試合までには体育館に行くから!」


「利奈?」


黎人と目が合うとフッと笑い、声には出さずに『行ってこい』そう言ったように見えた。


「祐介、後ろに乗せて」


「は?」


「いいから早く!時間がない!」


近くに停めてあった原付バイクを指して言うと祐介は渋い顔をしながらエンジンをかけた。


「仕方ねぇな」


「自転車から出世したじゃない?」


「うるさい」


本当は禁止されているけど、校舎とグラウンドや部活用の体育館まで距離があるので原付バイクを移動手段に使っている生徒は多い。教師達も見て見ぬふりをしている。


祐介の後ろに乗り、肩につかまると後ろを振り返り聞いてきた。


「いいか?」


「うん、いいよ!」


バイクで走りながら、祐介の背中に話しかけた。


「ねぇ!大輝と話がしたいんだけど。どこにいるかな?」


「教室じゃないか?・・連れて来るか?」


「うん、お願い」


「わかった!引きずってでも連れてくる」





祐介は私をバイクから降ろすと、すぐに大輝を探しに行ってくれた。バスケ部の部室で待っているように言われ、中に入ると雅樹がいた。


「よぉ、お疲れ」


「お疲れ。相変わらず無駄に広い学校だね」


「まぁな、原付が必需品だよ」


雅樹はそう言いながら彼女にメールを打っていた。




「そろそろ時間じゃないのか?」


雅樹が時計を見ながら言った。


「うん」


ぎりぎりまで待とう。そう思って部室で待っていると、扉が開いて祐介と大輝が入ってきた


「利奈?」


祐介に連れて来られた大輝は私を見て驚いていた。


「オレ達練習しに行くから・・・利奈も早く来いよ」


「わかった」


祐介が雅樹を連れて部室を出ていった。


「利奈、どうしてここにいるんだよ」


「バスケの練習試合で来たの」


ちゃんと話をしたいのにどうしていつも時間がないの?


「利奈」


苦しそうに私を見た。

大輝の話を聞きたいのに・・


私の携帯が鳴り、通話ボタンを押すと黎人だった。


『利奈?』


「うん」


『話はできたのか?』


「・・まだ」


『時間だぞ?』


「黎人、部長に今から行くって伝えて?」


『わかった』


そう言って電話を切り、大輝を見た。


「私ねこれからバスケの試合に出るの。ちゃんと動けるから見ていて?」


大輝は何も言わないで私を見ていた。

きっと来てくれる。と信じて、私は部室の扉を開いた


「試合の時間だから行くね。大輝、待ってるから」


「・・・」


大輝は答えてくれなかった。


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