まとめて整理 (2)
「昨日言ったよな?『オレの事で呼びだされたり、何か言われたらすぐに言え』って・・やっぱりお前バカだろ」
先輩達は後ろから響いた声に青ざめた。
「バカじゃないです!」
私がカタをつけようと思っているのに、ここで本人が出てきたら台無しじゃない!?
「お前らさ、言いたいことがあるならオレに直接言えよ!利奈は関係ないだろ!?」
黎人が声を荒げた。
「皆川君、私達・・」
「今度、利奈に何かしてみろ?ただじゃおかない」
地を這うような低い声で言い、直接言われているわけではない私もゾッとした。
先輩達は「ごめんなさい」と消えそうな声で言い、逃げるように教室から出て行ってしまった。
「黎人、なんでここにいるの?」
私が説明しても、引き下がろうとしなかった先輩達は黎人の一声であっさりと引き下がった。
好きな男からの一言ってそんなに大きいのだろうか?
「桐生が知らせに来た。・・・一人で何とかなると思ったのか?」
「黎人に相談して、解決したら私は余計に彼女達から恨まれるでしょう?」
私が黎人に庇われたら逆効果なんだよ?それはもう経験済みなんだから・・・
「たとえ恨まれていたって、この学園で剣崎と皆川に喧嘩を売るバカはいないから安心しろ」
名前がモノを言うこの学校ではそれが当たり前なの?それでいいの?
「そういうのって・・」
そう言うと片眉を上げた。
「それが事実だ、受け入れろ。・・まだ授業が残ってるんだろ?教室に戻れ」
踵を返し、部屋を出て行こうとする黎人を見たら咄嗟に袖を掴んでいた。
「なんだよ?もうとやかく言ってくる奴はいないから安心しろ」
振り返って私を見る黎人の顔は冷めていた。
「助けてくれてありがとう・・」
黎人の袖から手を離して言うと、頭の上から大きなため息が聞こえた。
やっぱりまだ怒ってるんだ・・
「責任取るって言ったろ?」
また大きなため息が聞こえたと思ったら、黎人の腕の中にいた。
「黎人?」
「翔慶に行って、あの男と話すつもりなんだろ?」
急に大輝の事を言われて吃驚した。
「うん」
「また拒絶されたらどうするんだ?」
拒絶されたら?
そのことを考えると辛くて、黎人の胸に顔を埋めた。
「黎人の言うとおりに本人次第だから・・諦める」
悲しいけど、それが大輝の意志だと思わなければいけないのかもしれない。
「また泣くんだろ・・・」
そうだね、きっと悲しくて泣くね・・・
「泣いたらまた慰めてやろうか?」
少し笑いながら言う黎人の背中に腕を回すと、私の背中に回された腕に力がこもった。
「今から泣きそうな顔してどうするんだよ」




