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もう一度  (5) side:黎人

練習の為に図書室から連れ出した利奈を美化委員会で使っている部屋に連れてきた。椅子に座るように言うとオレから離れた席に座った・・・少しは学習したか?


利奈に「・・・生意気だ」そう言って利奈が座る椅子を引き寄せた。ギャラリーがいないときは名前で呼べと言っているのにまだ名字で呼ぶから“黎人だ”と遮った。


「あの女に何を言われた」


真っ直ぐに利奈の目を見ながら聞くと少し目を泳がせた。素直というか単純というか・・嘘をつくのが下手すぎる。


「・・・本の場所を聞かれた」


見え透いたウソをつくから、自分から目をそらせないようにしてもう一度、「利奈、何を言われた?」そう聞くとまた目を泳がせた。


「本の場・・・いひゃい」


言いかけたところで頬を引っ張り少し凄んで聞いた。


「りーなー?」


痛そうな顔をしたので指を離してやると生意気にもオレを睨んだ。


「毎回言われるのは同じ。皆川先輩に近づくなって事だよ」


妙に簡潔に言い切った利奈をじっとみる。真っ直ぐにオレを見る利奈を見て嘘ではないと思った。

それにしてもその答えは簡潔すぎないか?


「それで?毎回“はいわかりました”って答えるのか」


利奈の答えに腹が立った『まぁ、適当に・・・』だと?こいつは・・・


「練習するんだよね?」


立ち上がった利奈に腕を伸ばして抱きしめた


「やっ・・・」


「オレの事で呼びだされたり、何か言われたらすぐに言え」


オレの気持ちに気づかない利奈は無邪気な顔をしてオレを見上げる。


「大丈夫だよ?こういうの慣れているし」


こいつ・・・


「・・・利奈、お前バカだろ」


オレの知り得ない利奈の過去に嫉妬した。

慣れてるって・・・他の女が嫉妬するくらい親しく接する男がいたっていうことだろ!?・・・あの男達か?翔慶学院の生意気な二人、それとも土曜日の男か


「はぁ?何言ってるの!ちょっと離して」


オレの腕の中でもがくから、抵抗できないように抱き込めるとおとなしくなる


「黎人、痛い」


腕の力を緩めてやるとオレを見上げる


「黎人?」


わずかに開かれている唇を見て無性にキスがしたくなった。


「き、昨日!会ったよ?」


あと少しで唇に触れる。その時、利奈が焦ったように言い出した。


「誰に?」


「大輝に会った!」


『他の男に会いに行き、話を聞いてもらうために2時間も待った』自分の腕の中にいる女の口から、そんなことを聞かされているのはきっとオレくらいだ。

あの男は「友達」そのことを聞かされていたから、苛立ちを抑えて「良かったな」なんとかそれだけを言った。


「利奈の髪・・・甘い匂いがする」


利奈の頭に顎をのせると柔らかい髪の毛から甘い香りがした


「チョコの・・・黎人っ離して」


腕を解いてやると、ホッと息をついて呼吸を整えている・・・

本当にこいつは・・・人の気も知らないで・・




更衣室の廊下で利奈を待った。利奈を一人にしてまた女に因縁をつけられたら困る。


「でも、こうやって二人で歩いたら余計に言われると思うんだけど」


「そうかもな」


困ったような顔をしている利奈を見て、本当にこの女は分かってない。そう思った。オレの事をなんだと思っているんだ?

車の中でキスを拒まずに受け入れていたくせに『漣の妹がクラブにいる』それだけで連れ戻しに行ったと思ってるんじゃないだろうな?


考え出すとますます腹が立ってきそうだ。



女子バスケ部の部長が来て利奈に試合に出てほしいと言い出した。利奈が断っているのに引き下がらない。

困った顔をしてオレを見るから、オレの口から断ると更に食い下がってきた。


困惑している利奈が、翔慶学院に行くと聞かされて表情を変えた。またあの男のことを考えているんだとわかった。


自分の足の状態を考えたら無理はできないはずなのに、翔慶に行くというだけで試合に出るのか?


そんなにあの男が大切か?


利奈に苛立ちをぶつけてしまい後悔したが、どうしても苛立ちは治まらなかった。



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