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払い除けられた手 (1)

祐介達と約束した土曜日。


授業が終わってからバスに飛び乗り、懐かしい待ち合わせ場所を目指した。

途中で運転手に電話をして『友達と会うので帰るときに連絡する』と伝えて一方的に電話を切った。




「利奈、お待たせ」


「雅樹、祐介」


待ち合わせのカフェに二人がやってきた

昔から女の子に人気のある二人・・・

身長が高くてスタイルがいいから少し着崩している詰襟がかっこいい。


二人は私を見て笑った。


「利奈が翔慶学院じゃない制服着ているのは変な感じだな」


私も翔慶学院のセーラー服は好きだった。今の制服も可愛いけど私はセーラー服の方が好き。


「腹減った・・・何時もの定食屋でいいか?久しぶりで懐かしいだろ」


雅樹の提案に急にお腹がすいてきた。前は練習の後にみんなで定食屋さんに行って仲良く食べていた。数あるメニューの中からいつも食べていたメニューを思い出した。


「うん、久しぶりに唐揚げ定食が食べたいな」


絶対に学園のカフェテラスでは出てこないメニューだ。




久しぶりに来た定食屋さんでいつもの席に座り、3人がそれぞれ好きなものを頼んだ。


運ばれてきたのはボリュームたっぷりの定食で、丼に山盛りにされたご飯を見て笑ってしまった。


「相変わらず・・すごい量だね」


「練習の後はこれでも足りない」


そう言う祐介と雅樹の丼に食べきれない分のご飯を分けて、前のようにおかずを交換しながら定食を食べ始めた。




「私ね、また走る事にしたの。少しずつ馴らそうと思うんだ」


私が二人に報告すると


「頑張れよ」


雅樹が笑いながら言ってくれた。


「お前の頑張っている姿・・・有村にも見せたいよ」


祐介の言葉にドキっとした。


「大輝がどうかしたの?」


雅樹は私があげたからあげを頬張ったまま“うんうん”と頷いている。祐介に視線を向けると


「一応陸上部にいるんだけどさ・・・練習に出てこないらしい」


そう言って祐介も唐揚げを頬張った。私は唐揚げをもう一つずつ二人の皿に置いた


「なんだよ、食べないのか?」


祐介が聞いてきた。


「お腹の中にパフェの分のスペースをとっておかなきゃ・・・何で大輝は練習に出て来ないの?」


「さあな・・・女ができたからっていう噂もあるけど」


雅樹が言った。大輝に彼女ができたから練習をしないの?・・・そんなの大輝らしくない。


「あれは違うだろ、もしも本当の話だったら・・・趣味悪いよ」


祐介が続けて生姜焼きを口に入れる。


「彼女って誰?」


私が聞くと雅樹がニヤッと笑った。


「気になる?有村と利奈って仲良かったもんな」


「気になるっていうか・・意外だったから」


大輝は走ることが好きだったのに。


「女と一緒にクラブに出入りしているらしいよ」


水を吹き出しそうになった


「う・・・」


ケホケホとむせてしまった。


「大丈夫か?」


「うん・・・ちょっとびっくりした。大輝とクラブってなんだか結びつかないね」


クラブ通いをしていた自分と重ねたら黎人との事を思い出してしまった。大輝の彼女はクラブで知り合った人なんだろうか?


「彼女って誰なの?同じ学校の人?」


「上田」


その言葉に思わず言ってしまった。


「嘘でしょ?」


確かに彼女は大輝が好きだと言っていた。何度も私に大輝と付き合っているのか聞いてきて、その度に違うと答えても信じなかった・・


「利奈もそう思うだろ?上田ってあんまりいい噂ないからな・・・」


『少し人気があるからってつけあがるな』階段から落ちる前に聞いたあれは彼女の口から出た言葉だった。

でも、あの時上田と友人の鈴村も大輝の事が好きだって言っていたと思う。私を突き落とす位に気性の激しい彼女達なのに一人だけが大輝と付き合っているの?


「有村が心配?」


私が考え込んでいると祐介が聞いた。


「うん・・・大輝はいい奴だからね」


二人は「そうだな」と言った。大輝の事も心配だけど何かが腑に落ちない・・・


「利奈?そんな難しい顔して・・大輝と上田に何かあるのか?」


祐介に言われて顔をあげて「なんでもないよ」と答えた。この事は一人でじっくりと考えることにしよう。


私は二人に向かって笑った


「私、買い物したいんだけど一緒にみてくれない?」


「何を買うんだ?」


「トレーニングウェアとシューズとか・・・」


“色気が足りない”と二人は笑った


だって仕方ないじゃない。


もう二度と走らない、走れないと思っていたから全部処分してしまったんだもの・・



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