不機嫌な彼と私の苛立ち(3)
黎人に怒られた香織は可愛らしく頬を膨らませていた。
なぜか私は福本先輩にお説教された。
「お前な・・・オレはアップをしろって言ったんだぞ?男のレベルで10周走れなんて一言も言ってない!しかもラストのあれは何だ?体力残しておけよ!」
「私、アップしかしていません・・・」
「そうですよ、福本先輩!利奈はアレが普通なんです」
香織がフォローしてくれるけどその言葉に眉をひそめる福本先輩と黎人と兄様。お願い、香織はもう何も言わないで・・
「桐生それおかしいぞ」
「だってアレは翔慶学園の・・・」
福本先輩の言葉に反論しようとする香織の口を手で塞いだ。
「香織ちゃん、練習しよう。・・ね?」
お願いだから漣兄様の前でそれ以上言わないで!香織に目で訴えると分かってくれたらしくコクコクと頷いてくれた。
「桐生はテニスの練習、松本はバスケの練習」
福本先輩が私と香織を振り分けた。
私が水を飲みながらベンチに座ってまだ走っている生徒を眺めていると私を挟んで兄様と黎人がベンチに座った。
「利奈、今のが友達?」
「前に体育館で3ON3やってたよな?」
2人が聞くから、祐介と雅樹の解説をしてあげた。
「うん、髪の毛を立てているのが雅樹でサラサラなのが祐介。あの2人にバスケを教えてもらったの。2人ともバスケがすごく上手いんだよ」
「へぇ」「あっそ・・」
聞いたから教えてあげたのに興味なさそうに言う漣兄様と黎人。2人がどんなにいい友達か説明しようとすると
「利奈!」
祐介と雅樹が傍に来た
「オレ達これから試合だから」
「うん、頑張ってね」
雅樹が紙袋を差し出したのでありがたく受け取った。
「リクエスト通りだからな」
「ありがとう!練習が終わってからの楽しみにするね」
雅樹と私のスイーツの好みは同じで意見が合う。だから手にした袋の重みに期待が持てた。
「利奈」
ドーナツを持ってニコニコしていると兄様が機嫌の悪そうな低い声で私を呼んだ。
「あ、2人とも紹介するね。兄の剣崎漣と、さっきも話した球技大会でチームを組む皆川黎人先輩」
「九条祐介です」
「中川雅樹です」
2人は頭を下げて挨拶をしてくれた。祐介と雅樹は大切な友達だから兄様も認めてほしい。そう思ってハラハラしながら漣兄様を見ていると
「利奈と仲良くしてくれてありがとう。翔慶学院で1年生にレギュラーになれるのは凄いね」
漣兄様は作り笑いを浮かべている。・・・やっぱりダメ?
「利奈にバスケを教えたのは君達なんだって?利奈は凄い人に教えてもらえて良かったな」
黎人までにっこりと笑いながら言う。どうして二人とも顔に笑いを貼り付けているの?不自然極まりないし。祐介と雅樹も二人に笑みを返したけれど心なしか笑みがぎこちない
この場をなんとかしたくて祐介達に声をかけた
「祐介達試合でしょ?大丈夫なの?」
「ああ・・・行くよ。試合が終わるまでに都合のいい日決めておけよ?」
「うん。試合頑張ってね」
「じゃあ、利奈のお兄さん、皆川センパイ失礼します」
爽やかに言って仲間のところに戻って行った。
・・心臓に悪い対面だった・・・
「松本、練習に行くぞ」
私も福本先輩に急かされて体育館に行きバスケの練習をすることにした。