王子様、その人は××× (2)
黄色い声が遠くから近づいて来るにつれて、カフェテラスで食事をしていた女子生徒がソワソワしだした。
「「「「漣さまぁ~!!!」」」」
あちこちから悲鳴のような黄色い声が飛ぶ
「今日は一人なんだ」
香織が興味なさそうに言い、私のおかずと自分のおかずを交換した。
騒ぎを起こしている本人はニコニコと笑いながら席につき、取り巻きの上級生も同じテーブルに腰を落ち着けた。
私はここまで来る間の王子様を盗み見た。
高い上背、くっきりとした二重の目に通った鼻筋、唇は薄めで形が整っている。
アッシュブラウンに染めた髪は前髪と襟足を少し長めに残してワックスで遊ばせている
確かに、王子様だ・・フェロモン垂れ流しの王子様だ
「ファンクラブに入らないで話しかけると制裁されるらしいわよ」
香織はつまらなそうに言った
「私には話す機会もないよ・・・学年も違うしね」
香織はくすくすと笑った。
視線で王子様にまとわりついている上級生を指し示した
「あの取り巻きを押しのけて告白できる人はいないわよね・・・それにしてもどこから出てくるのかしらね、あのキラキラオーラ」
確かに。どこから出しているのだろう?頭の先からでも噴出しているのだろうか
「確かに剣崎財閥の息子っていうだけでも凄いけど・・・顔良し、頭良し、運動神経良し、家柄良し・・・無いものなんかあるのかしらね?」
香織、天は自分のお気に入りには二物でも三物でも与えるんだよ・・・
でも、一番欲しいものはなかったりしてね?
お弁当から顔をあげてお茶を飲むと視線を感じた。
こんなに地味な私を見ている奇特な人もいるんだ
・・・視線を感じた方を振り向くと、こちらを見ていた“漣さま”と目があった。
王子様は目があった瞬間“パチン”とウィンクをした
途端にあがる黄色い悲鳴
皆自分にウィンクされたのでは?と頬を染める。
私は視線を外してお弁当を食べる事に専念した。
「ウィンクして悲鳴があがるって・・・どこのアイドルよ。さすがキラキラ王子ね」
香織の言葉に笑ってしまった
「あ・・・利奈の笑った顔可愛い。絶対メガネとったほうがいいよ!コンタクトにしたら?」
私は食べ終わったお弁当箱をしまいながら答えた
「コンタクトってあわないんだよね・・・」
メガネのフレームを触りながら答えておいた。
これは大切な私のアイテム
「え~、今どき校則通りにまとめ髪にしてる子なんて利奈だけよ?利奈のこといじってめちゃくちゃ可愛くしたいな」
無邪気に笑う香織に笑みを返した。
香織、ごめんね・・・私目立ちたくないんだ。平凡でいいから地味に過ごしたいの