表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/125

不機嫌な彼と私の苛立ち(2)

――――

  ―――――


「松本利奈!バスケとテニス!」


一年から三年までのA組が集められた小講堂で黎人は言い放った。


「応援希望って言いましたよね?皆川先輩」


球技大会のグループ決めを黎人と兄様が仕切っていた。


「却下」


「無理です!」


何で私が2種目も出場しなければいけないの!?

私が言うと


「利奈はオレと混合ダブルスに出るから」


にっこりと笑う漣兄様。その笑顔に黄色い歓声がわく


「それからオレと混合のバスケット」


「え!?絶対無理!」


混合なんて無理!この2人、何を企んでるの!?


「じゃあバレーボールとソフトボールにするか?」


漣兄様が笑いながら言った。

痛いところをつかれた。苦手なの・・・団体で駆け引きするの・・

さっきも話したはずなのにわざと言うのだから意地悪だ。


「楽しみだね、利奈。応援するね」


香織が無邪気に笑い私は机に伏せた。


最初の目標からどんどんずれていっている。・・・穏やかに目立たずに生活したいだけだったのに・・・


「去年はAチームが総合優勝だった。今年も優勝するぞ!1年生!気合い入れろよ」


知らないよ・・・


「利奈、練習さぼるなよ?」


黎人はさっきから私を名指ししてばかりいる。

何かの嫌がらせなのだろうか?


「大丈夫だよ黎人、利奈はオレが責任を持って練習させるから」


漣兄様のその言葉が恐ろしい。ああ・・・騒がしい日々が始まりそうだ。


騒々しいのは中学だけで十分だったのに・・

今だってあの事を忘れたわけじゃない。中途半端に目立つのは危険・・・





放課後、ジャージに着替えさせられた私はグラウンドにいた。


「基礎体力からつけるぞ」


仕切るのはバスケ部の2年生。競技チームはブーブー言っていた。

何故か3年は涼しい顔をしてグラウンドの隅にいる。


バレーボール・バスケットボール・テニス・ソフトボール 男女混合で各2チームずつ出場し、残りは応援チームとなるそうだ。

私は嫌だと頑張ったが兄様と黎人に強引に決められバスケとテニス。香織はテニスのメンバーに選ばれた。



「先輩、3年生はいいんですか」


誰かが聞くと2年の福本先輩は平然と言った。


「いいんだ」


漣兄様も黎人も余裕な顔をしてこちらに手を振っている


「柔軟をしてグラウンド10周!」


何がいいのよ、3年も走れ!でも、漣兄様が真面目にグラウンドを走る姿が想像できない・・

福本先輩の一言に湧き上がるブーイング


「「「え~!?」」」


その時、他校のジャージを着た集団がやってきた。


「翔慶学院バスケ部!グラウンドをお借りします!」


大きな声が響いた。


「お前達もさっさと始めろ!」


怒声があがり各自が柔軟を始め、私は翔慶学院の方に手を振った。

きっとあの二人が見ていると思った。


「利奈!」


思った通り、集団から離れて2人がやってきた。


「何やってるんだ?」


2人とも私を見て不思議そうにしているから経緯を説明した。


「へ~面白そうじゃん。後でチーム組む人に会わせて」


楽しそうに雅樹が言った


「利奈、久しぶりに一緒にアップしようぜ」


祐介が言い、私は頷いて柔軟を済ませるとグラウンドを走り出した。




グラウンドを5周目にさしかかったとき


「久しぶりで鈍ってるんじゃねぇの?」


憎まれ口を叩く祐介に反発してみた。


「鈍ってないよ!ちゃんとリハビリやったし」


ちょっとだけ強がりも入っていたけどそれはナイショ。きっと心配しているだろう二人にこれ以上心配をかけたくなかった。


「じゃあラスト1周でアレやるか?」


雅樹まで私を挑発する。


「いいよ、負けないからね!」


「負けた奴が奢れよ」


「祐介、その言葉忘れないでよね」





ラスト1周に入り雅樹が聞いてきた。


「いいか?行くぞ」


「おぅ」


「いいよ!」


祐介がカウントを出した


「3、2、GO!」


私達はダッシュした。



200メートルの全速力、無心でゴールを目指す。

久しぶりに走って気持ち良かった。心を空っぽに出来るからこの競技は好きだ。




私は後ろを振り返って二人に向かって親指を立てた。


「ねぇ!私パフェが食べたいな!」


悔しそうに雅樹と祐介が唸った


「仕方ないな、わかったよ」


祐介の悔しそうな返事を聞いて満足した私はへへっと笑って二人に駆け寄った。


「お前らって相変わらずだな」


呆れたように笑う翔慶学院の上級生達


「松本も相変わらず化け物だな。しゃべりながらあのスピードで10周走るなんて、女じゃねーよ」


同級生や先輩達は笑ったけれど、私は女の子なんですけど?


「先輩方・・・酷くないですか?」


私が抗議すると先輩たちは笑っていた。


「利奈!」


黎人が私を呼んだ。


「呼ばれたので行きます。じゃあね、二人とも約束だよ」




黎人のところに行くと


「利奈!カッコよかった~!」


走り終わった香織に抱きつかれた。ギュッと私の首に腕を回して抱きついている。


「香織?」


「生で見れて嬉しい!翔慶学院の名物を見れて嬉しいよ!」


ぎゅうぎゅうと私の首に回した腕に力が入り首が絞められて苦しかったけれど、どうして香織がそのことを知っているのだろうと不思議だった。


「香織・・苦しい」


女の子に抱きつかれる感覚ってこんな感じなんだ・・柔らかくっていい匂いがして・・苦しい・・・

黎人は呆れた様子で香織を見ていた。


「香織、ホントに苦しい・・」


苦しくて香織の身体を支えきれなくなり、黎人に助けを求めると私の首から香織の手を外してくれた。


「桐生、いい加減にしろ!」


「皆川先輩、邪魔しないで下さい!」


香織は黎人に怒っていたけれど、どうして私が祐介達と走っていたことを知っていたのだろう?


「利奈、カッコイイ!大好き!」


そう言ってまた私に抱きつこうとして黎人に怒られていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ