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渡された鍵 (1)

―――――――

   ―――――――――



「ん・・・」


寝返りを打つと目が覚めた

目だけを動かして周囲を見ると私が寝ているのは剣崎家での私の部屋だった。


どうしてここにいるんだろうと思ったけれど、ママに話をして発作を起こしたことを思い出した。


ベッドから出てサイドテーブルに置かれていた水を一口飲んで、仄かにともる灯に照らさた部屋を見た。私がいないのに今でも手入れがされている部屋を見てパパが私を待っていてくれたことを感じた。私はパパ達を選んだ。本当にこれで良かったのだろうか?


そう考えてしまい慌てて頭を振った。今は何も考えたくない、夢も見ないで眠ってしまいたい。

・・でも、こんな風に目が覚めてしまったらきっと眠れない。



私はブランケットを持って部屋を出た



小さい頃の習慣。

眠れないときはここに潜り込むに限る。


音をさせないように、そっと扉を開いた。

昔はこの部屋の先にあるベッドに潜り込んでいたけれど私はもう高校生、さすがにそれはできないけど、この部屋は大好きな部屋だからきっと眠れるはず。


私は落ち着いた色のソファでブランケットにくるまれて丸まると大好きな部屋と懐かしい匂いに安心できた。






「起きなさい」


やだ・・・



「利奈、朝だよ」


起きたくない・・眠い・・


「利奈。―――――利奈、起きなさい」


寝返りを打って片目を開けると史兄様がいた。


「おはよう、利奈」


史兄様が濡れた髪をタオルで拭きながら言った。


仰向けに戻って自分の状態を確認すると、ソファに寝たはずなのに、私はベッドに寝ていた。


「おはようございます。兄様・・」


ベッドサイドに漣兄様が立っていた。


「利奈、学校に行く支度をしておいで」


何故か史兄様が笑いを堪えながら私に言い、私は自分の部屋に戻って身支度を整えた。





ダイニングルームに行くとパパと兄様達が席に着いていて、私は漣兄様の隣に座った。


この部屋でパパ達と朝食を食べるのは久しぶりで、この光景がひどく眩しくて、涙が出そうになった。


「利奈、良く眠れたか?」


パパが聞き、私は「はい」と返事をした。

何か話すと涙が零れ落ちそうだったからそれしか言えなくて、食べることに専念した。


食事が終わる頃、パパが


「利奈、今日からはここが利奈の家だ」


そう言うと、史兄様が微笑みながら


「おかえり、利奈」


と言い、


「これからは一緒だ」


漣兄様に言われて、我慢していた涙が零れてしまい後から後から流れた。


「利奈?」


パパが優しく聞くから


「ただいま」


それしか言えなかった。



鼻をすする音が聞こえて顔を上げると


「も、申し訳ありません」


執事が泣いていて驚いた。絶対に動揺しない人だと思っていたのに・・・

私が驚いているとパパも苦笑いを浮かべていた。


「お嬢様、お帰りなさいませ。屋敷中の者がお嬢様のお帰りを喜んでおります」


「ありがとう・・」





顔を洗い直した私は、シェフ力作のお弁当を持たされて史兄様の車で学校に送ってもらった。


「史兄様」


問いかけると優しく笑って私を見てくれた。


「ん?」


「ベッドに運んでくれてありがとう」


「ああ・・ソファから落ちそうになってたから。眠れないから来たんだろ?利奈は昔から変わらないな」


「うん。やっぱり史兄様のところだとぐっすり眠れるね」


史兄様、大好き。史兄様の肩にもたれると頭を撫でてくれた



「利奈、手を出して」


史兄様から鍵を渡された。家の鍵とは違う形の鍵、少し古めかしいような真鍮の鍵だった。


「?」


「これは空き教室の鍵。好きに使っていいよ、場所は職員棟の3階。一番奥の部屋だから」


なぜ空き教室の鍵を兄様が持っているの?


「どうして?」


「生徒会だった時に息抜きがしたくて作らせたものだよ。この鍵を持っているのはオレと利奈だけだから、好きにしていいよ」


・・・学校の教室って、生徒が息抜きの為に勝手に使用してもいいの?しかも卒業して3年は経っているのに、未だに鍵を持っているって、どういうこと?


ふと、校長先生の言葉を思い出した。のびのびと過ごしたって、このことも含まれてるんだ?


「ねぇ、史兄様」


「ん?」


「生徒会ってそんなに権限があるの?」


「ん~・・・3年も生徒会長をやればそれなりに自由になることも多いよ」


今、3年て言った?


「1年の時から生徒会長だったの?」


「そうだよ」


・・・漣兄様と史兄様の年が逆じゃなくて良かった。心の底からそう思った。漣兄様の王子様キャラが可愛く見えてしまった。


「兄様はすごいね」


「好きにやりたければそれなりの実績を残す。それだけだよ」


パパ、剣崎グループは安泰だね・・・


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