放たれるコトバ (5) side:黎人
利奈は漣の妹・・・
最近、漣が利奈を構っていた理由がわかった。
「そうだったんですか・・・オレ、漣には黙っています」
「・・・ありがとう。息子達はまだこの発作のことは知らないから」
剣崎グループの会長に頭を下げられてしまった・・・。
利奈は父親に大事そうに抱きかかえられて病院へ向かった。
利奈を見送ると、
「皆川、コーヒーでも飲むか?」
保健医がオレの肩をポン、と叩いた。
「オレ、ブラック。濃くしてね、センセ」
「ハイハイ」
ドリップしたコーヒーを飲みながら保健医の表情を覗き見たが感情の読めない顔をしていた。
「センセは利奈の家族構成を知ってたの?」
感情が読めなかったから聞きたいことをストレートに聞くことにした。
「大まかな事はな・・・兄貴達が有名過ぎるしなぁ」
“目立ちたくなかったんだろうな”とぼやいた。
今までの彼女の容姿はその言葉を裏付けるものだった。
いまどき誰も守らない、まとめ髪に規定通りの制服・・おまけに黒縁メガネ
目立たないようにしているとしか思えないあの恰好。
オレがクラブで会った“リサ”の容姿なら、間違いなく学園で騒がれているだろう。
「何でうちの学校に入ったんだ?」
彼女は中等部からの持ち上がりではなかったはずだ。
漣が構う度に、迷惑そうにしているように見えた。距離を置きたいと思っているのならどうしてこの学園に来たんだ?
「・・・彼女なぁ、中学3年の時に事故で足の靱帯を切っているんだ。入院とリハビリで高校の進級試験に間に合わなかったらしい。剣崎理事の頼みで特別に編入試験を行ったという話を聞いた」
前に体育の授業中に漣が彼女を保健室に運んだことがあったことを思い出した。
あれは、怪我をした足に関係することだったのか?
「これから球技大会だろ、あんまり無理はさせないでやってくれ・・・剣崎が表立って行動するとファンクラブが騒ぐ。現に何か言われているらしいしな」
「わかった」
昨日、
『その2つのリングは・・・誰のものだ?』
そう聞いたら
『大切な人達』
と答えた。
漣の指からリングが消えた時期とリサに会った時期を考えるとパズルのピースがカチリと嵌ったような気がする。
リサと名乗っていた利奈がクラブに来なくなった理由を“兄に見つかったから”と言っていた。
利奈の胸元に揺れていた2つのリング。1つは漣のものでもう1つは史明さんのものなのか?
そうであって欲しいと思う。他の男からもらったリングを身に着けて欲しくない。
「センセ」
「ん?」
「過呼吸の発作が起きたときの対処法教えて」
「・・・皆川?」
「だって、あんなに苦しそうなのは可哀想だろ?」