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放たれるコトバ  (2)

―――――――

  ―――――――――


頭が痛い・・・


頭痛で目が覚めた。発作を起こした後はいつもこうだ・・・


時計を見ると5時・・・ゆっくりと体を起こすと少し頭痛が和らいで、

シャワーを浴びて水を飲むとさっきよりも落ち着いたような気がした。


朝食を食べる気になれなかったからママの分だけ食事の支度をして家を出た。

今日は風紀のお姉さんとやりあう余裕はないから早く行こう。




バスに揺られて学校につく頃には乗り物酔いでフラフラだった。


保健室で寝かせてもらおうと思って下駄箱から保健室に直行してきたが、保健室が空いていなかった。

学校に来るのが早すぎたらしい。



入口の扉に寄りかかり廊下に座った。

気持ちが悪くて、もう、立っていられない。




「うわっ・・・誰だ?」


立てた膝に額をつけて蹲っていると驚いた声が響いた。

私は顔を上げて先生を見上げた。


「センセ・・・気持ち悪い」


先生は私と視線を合わせるために屈んだ。


「・・松本か?随分と顔色が悪いな・・・ちょっと待ってろ」


先生は保健室の鍵をあけて


「少し我慢しろ」


そう言うと私を抱えた。

抱き抱えられて歩くその振動にも、頭がグラグラと揺れて気分が悪かった。


先生は私をベッドの上に下ろすとブレザーを脱がせてくれた。


「リボンも外して横になれ」


リボンを解いて横になると先生は頭を撫でてくれた。


「なぁ松本、保健室は生徒の為にあるんだぞ?それに・・・個人の事情もある程度は把握しているつもりだ。しんどい時はいつでも来い」


額に乗せられた少し冷たい手が気持ち良かった。


「朝食は?」


首を横に振った。


「昨日の夕飯は?」


横に振った。

食事を作るどころじゃなかったんだよ。


「父兄に連絡した方がいいんだが・・・下の兄貴は?」


「ダメ」


心配かけるよ。


「上の兄貴は?」


「・・・ダメ」


もっと心配かける。


「お母さんは・・・?」


反射的に叫んでしまった。


「ダメ!イヤ!」


ぎゅっと胸が苦しくなった。


「困ったな・・・」


「ハァッ・・・ッ・・・」


「松本?」


まただ・・・


「ママは・・・ダメ」


「・・・過呼吸か・・・松本、ゆっくり呼吸しろよ。」


先生は口元に袋をあててくれた。


「大丈夫だ、ゆっくり・・・そうだ」




――――――

   ―――――――――


「落ち着いたか?・・・水だ。飲めるか」


グラスを受け取り水を一口飲んだ。


「センセ・・・ありがと」


また、頭を撫でた。


「今日は授業を受けるのは無理そうだな。保健室にいるか?」


首を横に振った。


「授業に出ないのが分かったら兄様が心配する」


「・・・生理痛とか言っちゃえば?男にはわからないからさ・・」


先生の顔をまじまじと見ると、先生はニヤっと笑った。

男の人の口からその言葉が出るとは思わなかった。


「・・・この状態で家には帰したくないしなぁ・・・松本の親父さんなら、誰にも知られないで休める場所位なんとかなるだろ」


先生、軽い・・・

保健医ってこんなに軽くていいの?


「都合いいことに今日は理事会だ。さっき呼んだからもうすぐ来ると思うよ」


いつの間に連絡したのだろう?と不思議だったけど、忙しいパパの手を煩わせるのが申し訳なかった。


「でも・・・」


言いよどむ私に先生は顔を覗き込んだ。


「親父さんに、親の仕事をさせてあげれば?バカな子ほど可愛いって言うし・・」


もう少し言い様があってもいいのではないのでしょうか?センセイ・・・


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