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放たれるコトバ  (1)

部屋に帰ってシャワーを浴びた。


少し熱めのシャワーを浴びたらキス魔に対する腹立ちも少し治まり、祐介と雅樹に何も言わないで帰ってきてしまったことを思い出した。


祐介達心配してるだろうな・・・連絡しなくちゃ・・



バスルームから出てリビングで水を飲んでいると玄関の鍵がカチャリと開いた


「利奈~?いるんでしょ」


部屋に響いたその声に驚いた。


「ママ!?」


玄関に走ると、気怠げな雰囲気の母親が目の前に立っていた。


「おかえり。くらい言いなさいよ」


「・・・おかえり、ママ。久しぶりね」


ママはソファーにどさりと座ってタバコに火をつけた。


「彼の仕事の都合で帰国したのよ」


煙を吐き出しながら私を横目で見た。


「夕飯は?」


「いらな~い。ねぇ利奈、外にいるSP何とかしてよ。目障りだわ」


「わかった」


部屋着に着替えて携帯と家の鍵を持って外に出た。


車に向かって手をあげると片山さんが出てきた


「お嬢様?」


「ママが帰ってきたわ・・・ここの警護はしばらく控えて欲しいの。兄様達とも会わないから・・・」


「ですがお嬢様」


「お願い、言うとおりにして。じゃあね」




部屋に戻るとママがワインを飲んでいた。


「利奈、あんた桃陵に通っているんでしょ?」


久しぶりに見たママは変わっていなくて、

見た目からは大学生の息子を筆頭に3人の子供がいるとは思えない。


「うん」


自分が最優先のママ。恋愛に生きるママ・・

娘が登校拒否をしているときに男の後を追って外国に行ったもんね・・・別に恨んでいるとか、そういうことは思わないけれど


ママの中での私ってどういう位置づけなのだろう?と時々思う。



煙草の煙を燻らせながら私を冷めた目で見る。


「まさか・・・あの子達と連絡とってないわよね?」


自分の息子たちを“あの子”としか呼ばないママに

私は普通の顔をして嘘をつく。


「とってないよ。史兄様の通う大学部は離れているし、漣兄様も学年が違うから学校でも会わない・・・パパにも会ってない」


ママは冷たく言い捨てた。


「会うんじゃないわよ」


息苦しい・・


「わかってるよ。ママ、私宿題あるから」


「じゃあね」


苦しい・・・


「おやすみ、ママ」


自分の部屋でベッドにうずくまった。


「ハァッ・・・」


苦しい・・・

机の引き出しから袋をとって口に当てた。


「ハ・・・ッ・・・」


苦しくて涙が出る。



---

  ---


意図してゆっくりと呼吸をすると少し楽になった。


「・・・っ」


胸が、心が苦しい―――――


ゆっくりと目を閉じると涙が頬を伝ってシーツに染みた――


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