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動き出す・・・ (4)

「やっ」


腕を突っぱねてみたが、力が強くかなわなかった。


黎人の胸に引き寄せられ、頤に指をかけられて上を向かされる。


私を掴む手から逃れようともがいたけれど、やっぱり男の力にはかなわなくて・・・でも、このまま言いなりになるのは悔しいから、キッと黎人を睨みつけると、彼は口角を上げて笑みを作った。


「気の強い女・・」


そう言うと、切れ長の目が伏せられて形の良い唇が降りてきた。


下唇を軽く唇で食まれ、イヤと口にしようとすると唇を塞がれた。


もがいても離してはくれず、私の腰に手をかけて強く引き上げ自分の膝に私を乗せた。




「っ」


息苦しさから身をよじると、やっとキスから解放されて私は肩で息をした。


「勝手に何するのよ!」


黎人を睨みつけると不敵な笑みを浮かべて、私の頬を撫でた。


「利奈、もしかして初めて?」


最低だ!最悪の再会。

カッとなり、手を上げたら簡単に手を取られて逆に抱き込められてしまった


「離してっ」


壁の向こうで足音がして、声を上げて助けを呼ぼうとしたら黎人はまた唇を塞いだ。


私を動けないように抱きすくめた時足音は扉の前で止まり、扉を開けようとしているらしいのか、ガタガタと音がして


「黎人、いないのか?」


扉の向こうで漣兄様が呼んだ


「黎人?」


私は一層強く抱きしめられた。



――キスに酔わされる――




頭が痺れてどれくらいそうしていたかわからなくなったとき、


兄様はここに黎人はいないと判断したのか立ち去ってしまった・・・


私の制服のポケットの中で携帯が震えた。



漸く解放されて息を整えていると、


「利奈・・・」


優しい声で名前を呼ばれた。


「送る」



「おかえりなさいませ。黎人様」


手を引かれて昇降口を出ると車が横付けされていて、運転手が扉を開くと黎人が私を後部座席に座らせて、自分も乗り込むと腕を私の腰に回して引き寄せられた。


「お前の家どこ?」


住所を運転手に伝えて私はため息をついた。


一体なんだっていうんだ。

興味の対象を見つけたのならさっさと解放してくれればいいものを・・




「背中は痛むか?」


「痛くない・・・です」


なんでこんなヤツが先輩なんだ!敬語を使うのがもったいない!!


「無理に敬語を使わなくてもいい」


考えが読めたのか、からかうように言われた。


「むやみに触るな」


つい本音が口を出た。


黎人は、くっと笑い腰を抱く腕に力をこめた。


「面白い女・・・」


「私は面白くない・・・ここでいいです」


マンションの手前で車を止めてもらった。


「またな、利奈」


腰に回した腕を解くとき、唇にチュッとキスを落とした。


「またはないです!」


力任せに車のドアを閉めた。


もう、やだ!

何なのこの男!

なんて横暴なんだ!キス魔!!



怒りにまかせて、足音も荒く歩いているとマンションの前にはSPの車が止まっているのを見つけた。


私は車に歩みより、ガラスをコンコンと叩くと


「お嬢様」


SPは車を降りた。いつも漣兄様についている片山さんだ。


「お帰りが遅いので心配いたしました」


「バスケットの試合で転んで背中を打ったの・・・保健室で手当てをしてもらって帰ってきたから遅くなりました」


「左様でございましたか。念の為に病院に行かれた方がよろしいのではないですか?史明様に連絡をして――――」


史兄様に連絡しようとする彼の話を遮った。


「打ち身だから大丈夫」


「ですが・・」


自分には報告する義務があります。と続けそうな彼の言葉を再びさえぎり、


直立不動の彼にひらひらと手を振った。


「痛くなったら連絡するわ。兄様達によろしく。じゃあね、おやすみなさい」


これ以上言っても無駄だと諦めたらしい彼は頭を下げた。


史兄様に連絡されたら、漣兄様にも話は伝わる。

今はまだ漣兄様にこの事を知られたくないと思った。


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